Otology Japan
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29 巻 , 3 号
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第28回日本耳科学会総会特別企画
シンポジウム4
  • ―小・中型腫瘍に対する聴力温存手術の役割
    大石 直樹, 細谷 誠, 野口 勝, 西山 崇経, 鈴木 成尚, 粕谷 健人, 鈴木 法臣, 宮崎 日出海, 小川 郁
    2019 年 29 巻 3 号 p. 211-214
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    MRIの普及に伴い,より小・中型の聴神経腫瘍が診断される機会が増えてきている.「早期発見」によって,聴神経腫瘍における疾患予後である「腫瘍の大きさが制御され,より良好な機能が温存される」症例の増加が期待される.疾患の自然経過を踏まえたうえで,「早期治療」をすべき症例を選別することが重要である.当科では,聴力温存・経側頭骨手術である後迷路法に近年取り組み,精度の高い術中持続神経モニタリングを併用し約4年間で施行した聴神経腫瘍手術は68例であり,その6割で後迷路法を施行した.後向きの検討から,術前ABR/DPOAEの結果により,より高い確率で聴力温存を果たし得る症例を選別できることが判明した.現在当科では,将来的に聴力を喪失するあるいは腫瘍が増大する可能性が高いと判断される症例に対し,小腫瘍あるいは聴力が比較的良好な段階で聴力温存手術を施行する治療プロトコールを採用し,聴力温存率の向上に取り組んでいる.

原著論文
  • 増田 佐和子, 臼井 智子
    2019 年 29 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    新生児聴覚スクリーニング(NHS)でリファーとなり精密聴力検査を行った182例で,滲出性中耳炎(OME)の有無と経過を検討した.初回精査時に37例(20.3%)57耳(15.7%)にOMEを認め,鼓膜所見でOMEの有無が評価できたのは84.6%,ティンパノメトリーでは46.4%であった.口蓋裂のある例,何らかの合併症のある例では,これらがない例に比べて有意にOMEの有症率が高かった.OME例では初回精査時に37例中3例,再精査時に12例中5例に鼓膜切開を行ってから聴性脳幹反応検査(ABR)などを実施した.経過を検討できた34例中19例が治癒し,このうち16例は自然治癒例であった.持続した15例中4例は合併症のために治療介入が困難であった.聴力の確定診断により一側難聴3例,両側難聴11例が判明し,初回精査時にOMEのあった57耳中少なくとも17耳29.8%に他の原因による先天性難聴を認めた.OME合併児では遅滞なく精査を行い,2回目の精査時に貯留液があれば鼓膜切開を行って正確な聴力評価を行うことが望ましいと考える.

  • 菅 太一, 内田 育恵, 土屋 吉正, 岸本 真由子, 植田 広海
    2019 年 29 巻 3 号 p. 222-227
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    就学前後で行われる健診(就学時健診,1年次学校健診を含む.以下就学健診)を契機に発見された小児真珠腫の特徴を見出すため非就学健診群と対比して検討した.2009年7月から2017年5月までに就学健診で見つかった症例は12耳全てで自覚症状の訴えがなかった.中耳真珠腫進展度分類2015改訂案によると12例全例が先天性であり,うちIa症例は12耳中0耳(0%)であった.初診時の滲出性中耳炎(Otitis Media with Effusion; OME)の合併に関しては12耳中6耳(50%)に認め,非就学健診群では87耳中15耳(17%)と有意差を認めた.聴力レベルの分布では就学健診群でOME合併のない症例群では30 dBから40 dBに,OME合併のある症例群では40 dBから50 dB以降にピークを認めていた.真珠腫とOMEが合併した小児の伝音難聴はより高度の難聴を示す可能性があり,就学健診で発見された伝音難聴患児の中にはOMEの背後に真珠腫を合併している可能性があるためOME単独では説明しきれない難聴例では,真珠腫の合併も念頭に置く必要がある.就学健診で発見される小児真珠腫の特徴として先天性真珠腫が多いこと,Ia症例は少ないこと,OME合併症例が多いことが認められた.就学健診における耳鼻咽喉科医参加の意義が再認識された.

  • ~高齢者の聴力と認知機能~
    中澤 宏, 岸保 鉄也, 佐藤 むつみ, 小路 剛, 斉藤 美和子, 山縣 然太朗
    2019 年 29 巻 3 号 p. 228-233
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    西東京市医師会は公益事業として,「認知症予防のための聴覚検診」を立ち上げ,同意の得られた65歳以上の高齢者1156名(男性:435名,女性:721名)を対象として,市民の健康診査に合わせて認知症スクリーニング検査であるMMSEと純音気導聴力検査を行なった.また,片耳でも40 dB以上の難聴があり,同意が得られれば語音聴力検査も併せて施行した.その結果,平均年齢:75.2 ± 6.0歳,平均聴力:29.8 ± 14.7 dB,MMSEの平均は28 ± 2.6点,認知症疑いの23点以下は6.2%であった.加齢と伴に純音聴力は有意に低下し,純音及び語音聴力検査に関して,認知症群と認知機能正常群及び認知症群とMCI群の2群間に統計学的有意差を認めた.一方,MCI群と認知機能正常群の2群間には有意差は認められなかった.この研究結果は,認知症の発症リスクのある日本人の高齢者に対する聴覚の検討であるため,日本における認知症とその予防を考えるうえで極めて重要である.

  • 福井 英人, 馬場 奨, 井原 遥, 小西 将矢, 朝子 幹也, 岩井 大
    2019 年 29 巻 3 号 p. 234-238
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    頭部外傷後の開頭術後に難治性耳漏が生じた症例を経験した.初診時の左外耳道内は肉芽および耳垢で充満しており膿性耳漏を認めた.側頭骨CTでは左上鼓室後方から天蓋にかけて骨欠損を認め,頭蓋内へ軟部陰影が連続しており,手術加療を行なった.術中,乳突蜂巣内に大量の骨蝋を認め,CTで骨欠損を認めた部位には粘膜が形成されていた.骨蝋が感染源と考え,十分に除去し,手術を終了した.術後,耳漏は停止し,天蓋の骨欠損部位も新生骨が形成された.脳外科的な頭蓋底手術において鼻腔および乳突蜂巣への開放が認められた場合,骨蝋などを洞内に詰めることが通常とされている.これまでの報告においても前頭洞へ充填した骨蝋が原因でpyoceleを形成した例などもあり,開頭術後の耳漏に対して,術中に骨蝋を使用したかの確認が必要である.

  • 高橋 優宏, 岩崎 聡, 古舘 佐起子, 岡野 光博, 野口 佳裕
    2019 年 29 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    高齢化社会により高齢者の人工内耳手術は増加傾向である.そのため加齢・合併症に伴う全身麻酔の危険性により手術を断念せざるを得ない症例がある.当院において,呼吸機能障害のある高齢両側高度難聴患者に対し,局所麻酔と鎮静の併用による人工内耳手術を施行した.局所麻酔鎮静に頸神経叢ブロックを付加して手術は短時間かつ安全に施行し得た.患者・麻酔科医との緊密なコミュニケーションを行うことで,良好な周術期経過を辿ることが可能であると示唆され,本邦において今後,症例の経験・蓄積,手技の確立が期待される.

  • 今泉 光雅, 松井 隆道, 大槻 好史, 菊地 大介, 佐久間 潤, 室野 重之
    2019 年 29 巻 3 号 p. 245-251
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    聴性脳幹インプラント(auditory brainstem implant: ABI)は,蝸牛神経に障害を受けた際に,中枢側である脳幹の蝸牛神経核に電気刺激を加え,聴覚を獲得させることを目的とする人工聴覚器である.今回我々は,両側の聴神経腫瘍術後,高度難聴に至りABI埋め込み術を施行した症例を経験し,術後1年間の経過観察する機会を得たので報告する.症例は44歳,女性.両側の聴神経腫瘍術後,高度難聴に至ったためABI手術を脳神経外科と共同で行った.ABI術後1年を経過し語音明瞭度検査は,術前が単語0%,文章0%,読唇併用の際は単語32%,文章46%であったものが,単語4%,文章0%,読唇併用の際は,単語68%,文章43%と改善を認めた.ABI単独での会話は困難な状態であるものの環境音の聴取は可能となった.両側聴神経腫瘍術後症例に対するABI埋め込み術は,聴覚獲得の一手段になり得ると考えられた.

  • 青木 光広, 林 寿光, 西堀 丈純, 久世 文也, 伊藤 八次
    2019 年 29 巻 3 号 p. 252-257
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    上半規管裂隙症候群(Superior canal dehiscence syndrome; SCDS)は上半規管を覆う頭蓋骨が欠損するために圧変化や強大音により誘発されるめまい,自声強調,耳閉塞感などの臨床症状を呈する病態である.聴力検査での低周波域の気骨導差や前庭誘発筋電位での振幅増大や閾値低下が特徴的な検査所見である.CTでの裂隙の確認が重要であるが,裂隙が存在しても症状がない場合もあり,その病態は必ずしも明確ではない.今回,手術治療を行ったSCDS 4症例における術後の聴力推移を検討した.中頭蓋窩法による裂隙閉鎖術により,術前みられた前庭誘発筋電位の左右差は術後1か月で軽快したが,術後1年以上経過後の聴力検査においても低周波域の気骨導差は4例中2例で残存していた.一方,自声強聴や圧負荷による誘発性めまいは4例とも術直後から消失したが,耳閉塞感や耳鳴が一部残存した.SCDSの症状発現には第3の窓仮説だけでは説明できない病態として,軽度の内耳障害などが存在している可能性があると思われた.

内視鏡下耳科手術ワーキンググループ報告
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