Otology Japan
Online ISSN : 1884-1457
Print ISSN : 0917-2025
ISSN-L : 0917-2025
30 巻 , 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
第29回日本耳科学会総会特別企画
特別講演
  • 野村 恭也
    2020 年 30 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    ジャーナル フリー

    1968年に我が国で開発されたセルフォックレンズは通常のレンズと異なりガラス内部のリチウムイオン濃度差で光はガラス内で屈折して焦点を結ぶ性質を有している.これにより径2 mm以下の内視鏡の製作が容易となった.関節鏡を長年にわたり製作してきた整形外科医の渡辺正毅はセルフォックガラスを使用して径1.7 mmのセルフォック関節鏡を製作した.

    1979年に筆者らは鼓膜に穿孔のある患者の中耳腔をセルフォック内視鏡である中耳針状鏡needle otoscopeで観察した.患者は診察台に座ったままで麻酔は不要であった.電池内蔵の耳鏡で穿孔部を観察しつつ針状鏡を鼓室内に誘導し観察を行った.また接眼部に接続したティーチングスコープを高感度テレビカメラ(サチコン)に接続して画像をモニターに映した.上鼓室の後方が観察しやすくキヌタ骨短突起がIncus Buttressの上に載っている様子が観察された.後鼓室,下鼓室,前鼓室も観察可能であった.病的所見としては耳小骨連鎖離断,キヌタ骨長脚の欠損,アブミ骨の前庭陥没等が観察された.

耳科学会賞受賞研究
  • 藤岡 正人
    2020 年 30 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    ジャーナル フリー

    難聴は65歳以上の3割が罹患する高齢社会の国民病である.私たちは治療法のない慢性感音難聴に対する開発研究を進めてきた.慢性感音難聴は,再生能を持たない内耳感覚上皮や神経細胞の脱落,あるいは組織構築の破綻が原因とされるが,そのプロセスを死後標本で捉える機会は極めて稀で,また解剖学的制約から生検もできないため,細胞レベルでの病態や分子メカニズムは不明な点が多い.原因療法の提唱が長い間不在である中では,どのような臨床的効果が実際の難聴患者にとってどれくらいの福音になるか,どれくらいの効果量が規制医学的観点から見て承認に適切と考えられるか手探りの状況にある.したがって,臨床に即した論理的・科学的なモデルの構築と並行して,臨床現場で観察し得る現象やニーズを淡々と観察した記載と,その観察結果を反映したclinically-orientedの基礎・臨床一体型のトランスレーショナルリサーチが,この領域の治療法開発の第一歩に求められる最も重要な要素となる.本稿ではこの視点の下に私たちが進めてきた,疾患モデル研究と,幹細胞生物学と霊長類モデルを用いた内耳性難聴の治療法開発を概観する.

第28回日本耳科学会総会特別企画
シンポジウム3
  • 浦田 真次, Lin Shiou-Yuh, 水嶋 優, 藤本 千里, 松本 有, 岡部 繁男, 山岨 達也
    2020 年 30 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    ジャーナル フリー

    内耳機能の解明には正確な有毛細胞情報が必要不可欠である.我々は蝸牛内全有毛細胞を観察する手法(Modified Sca/eS)を開発した.Modified Sca/eSはソルビトールをベースに作成された屈折率調整試薬である.EDTAによる脱灰後に免疫染色,脱脂,屈折率調整を行い2光子顕微鏡による観察を行うことで全有毛細胞を観察することに成功した.Modified Sca/eSは多くの抗体で使用可能であり,Helicotorema付近や蝸牛側壁内など従来法では観察が困難であった領域における三次元立体構造を観察することができる.本手法は蝸牛における生理機能,病態変化の解明において有効な手法である.

原著論文
  • 菊地 さおり, 関根 康寛, 吉田 沙絵子, 飯野 ゆき子
    2020 年 30 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    ジャーナル フリー

    好酸球性中耳炎は全身の好酸球性の炎症が上気道に出現したと考えられる難治性の中耳炎である.当院では長期管理療法としてトリアムシノロンの鼓室内投与を基本に治療を行っている.しかし中には治療に抵抗性で,入院加療や外科的処置を含む集約的治療を要した症例がみられた.当院で1年以上経過を観察し得た好酸球性中耳炎症例は19症例で,うち12例は長期管理療法のみで治療し得たが,7例は集約的治療を要した.前者を対照群,後者を集約的治療群とし,両群における臨床的背景,治療後の経過,聴力推移などについて比較検討した.その結果,細菌感染を伴った肉芽型の重症例が集約的治療を要した.集約的治療後は重症度スコアの有意な低下が認められた.しかしなおも重症度が高い治療抵抗性の症例も存在した.その治療抵抗因子は今後の検討課題である.

  • 高橋 優宏, 岩崎 聡, 古舘 佐起子, 久保田 江里, 岡野 光博, 野口 佳裕, 宇佐美 真一
    2020 年 30 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    ジャーナル フリー

    耳掻き外傷による一側混合性難聴症例に対し人工中耳(Vibrant Soundbridge®: VSB)埋込み術を施行した.

    本邦における人工中耳臨床試験(両側難聴)と同様に自覚的・他覚的評価はいずれも良好な成績であった.裸耳骨導閾値はいずれの周波数においても保存され変化がみられず,装用後12ヶ月での長期安全性が確認できた.また人工中耳装用閾値,語音弁別検査(静寂下および騒音下)いずれも改善がみられ,さらに方向定位検査においても術前と比較して方向定位能力の改善がみられ有効性が示された.両側難聴と異なる点として,いずれの検査も装用3ヶ月以降も継時的に改善傾向がみられていた.そのため,一側性伝音・混合性難聴に対する人工中耳評価には一定の装用期間が必要であると示唆された.

  • ―症状スコアを用いた検討―
    辻 富彦
    2020 年 30 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    ジャーナル フリー

    急性低音障害型感音難聴(=ALHL)の150例の自覚症状について,問診表に基づく症状スコアを用いて検討した.スコアは聞こえにくさ(=“難聴”),耳鳴,耳閉塞感,自声強聴などの7つに分け評価した.症例の症状スコアは0.5点~7点(平均3.5点)であった.個別の症状スコアでは “難聴”73.3%,耳鳴50.0%,耳閉塞感90.7%,自声強聴55.3%,聴覚過敏43.3%,呼吸音聴取31.3%,耳痛11.3%がそれぞれ陽性であった.低音部3周波数の聴力レベル(=LT3)の合計は70~235 dB(平均121.5 dB)で,LT3と症状スコアの間には相関はみられなかった.治癒例・改善例では症状スコアは治療前3.7,治療後1.0で治療に伴って有意に低下する傾向があった.しかし聴力が正常化しても症状が残存する症例が50%に認められた.ALHLでは聴力レベルと自覚症状は相関しないケースがあり,また聴力改善に伴う自覚症状の変化も個人差が著しい.その原因は明らかではないが,内耳や中枢の反応の差などが考えられた.

feedback
Top