Otology Japan
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30 巻 , 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
第29回日本耳科学会総会特別企画
テーマセッション4
  • 平賀 良彦
    2020 年 30 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    側頭骨は三次元的に非常に複雑な構造をしているため,従来のトレーニング方法では十分な学習が難しい.そこで,側頭骨レイヤー解剖教材と側頭骨CT・MRI教材をアプリ教材として作成し,側頭骨解剖理解の助けとなることを目指した.側頭骨レイヤー解剖教材は,モーションコントロールカメラを用いて25層のレイヤー解剖を多方向から3D撮影し,実際の手術のように様々な方向から各レイヤーを観察できる教材を作成した.側頭骨CT・MRI教材は,Cone Beam CTとMR脳槽撮影データを合成することで,CTとMRIを自由な割合で合成でき,実臨床の読影に近い形で3断面すべての画像において各解剖部位の確認ができる教材を作成した.本教材は自己学習と講義の両方に使用することができる.近年は医学界においてもアプリ教材は急速に普及が進んでおり,今後は専門医も積極的に関わっていく必要があると考える.

原著論文
  • ―ランダム化対照試験―
    藤原 崇志, 佐藤 進一
    2020 年 30 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    Bell麻痺に対する局所治療としてステロイド鼓室内投与の有効性が近年報告されている.今回,2016年11月から2018年3月に発症後1週間以内に倉敷中央病院を受診した柳原法12点以下のBell麻痺患者を対象に,ステロイド鼓室内投与の有効性を検討するランダム化比較試験を行った.対象は22名で,男性12名,女性10名,平均年齢55.9歳,ランダム化比較試験組入時の柳原法の平均点数は8.2点であった.5名が全身ステロイド,抗ウイルス薬による治療を行い(コントロール群),17名がコントロール群の治療に上乗せしステロイド鼓室内投与を行った(鼓室内投与群).発症6か月後の治癒率はコントロール群80.0%,鼓室内投与群88.2%で統計学的有意差は認めなかった.ステロイド鼓室内投与がBell麻痺に対する局所療法として有効かどうか今後の検討が必要である.

  • 深美 悟, 中島 隆博, 阿久津 誠, 滝瀬 由吏江, 永島 祐美, 金谷 洋明, 平林 秀樹, 穐吉 亮平, 田中 康広, 春名 眞一
    2020 年 30 巻 2 号 p. 82-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    過去10年で経験した中耳真珠腫による顔面神経麻痺13例について検討した.

    初診時の耳内所見で6例46%は真珠腫と診断できたが,54%では鼓膜膨隆や外耳道腫脹,大きな肉芽のために,真珠腫とは診断できなかった.

    柳原法を用いた麻痺の評価では,高度麻痺4例,中等度麻痺4例,軽度麻痺3例で,全例に鼓室形成術を施行した.

    術後の麻痺の改善度は,高度麻痺群で治癒率50%,中等度麻痺群で25%,軽度麻痺群で67%であった.

    麻痺の改善度での治癒群と非治癒群の比較では,手術時期において有意差は見られなかったが,術前のENoGでは有意差が認められた.また,顔面神経第2膝部の肉芽は非治癒群で75%に見られ,治癒群には認められなかったことからも,初診時のENoG不良例と顔面神経障害の程度が予後に関する重要な因子と考えられた.

  • 岡田 昌浩, 羽藤 直人, 吉田 尚弘, 大島 猛史, 小島 博己
    2020 年 30 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    経鼓膜的鼓室内注入療法は,突発性難聴などの内耳疾患を対象とした治療法として広く認知されているが,国内では保険適用外のため,あまり普及していないとされている.そこで,実態調査のため,日本耳科学会代議員84名を対象にアンケート調査を行った.84名中,76名(90.5%)から回答を得た.突発性難聴に対し,ステロイド鼓室内注入療法(以下,ITSと略)を行ったことがあると回答したのは53名(69.7%)であった.53名中,ITSを積極的にすすめているは19名(35.8%)にとどまった.ITSを特定臨床研究や院内の倫理審査承認を得て行っていると回答したのは10名(18.9%)のみであった.ITSが保険収載されれば積極的に行うと,58名(76.3%)が回答した.ITSは本邦の診療の手引きでグレードBまたはC1に位置する治療法である.今後,保険収載による本治療法の普及が望まれる.

  • 北村 貴裕, 坂田 義治, 宇野 敦彦
    2020 年 30 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    当科で経験したANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)症例9例,16耳について検討した.9例中の7例が両側罹患であり,うち6例は左右の鼓膜所見型も一致していた.全身疾患としての特徴を示すと考えられた.MPO-ANCA陽性が5例,PR3-ANCA陽性が2例,いずれも陽性の例はなかった.副腎皮質ステロイドは全例に用いられ,免疫抑制薬,分子標的治療薬が症例によって併用された.聴力の治癒・著明回復は16耳中5耳に得られた.鼓膜所見正常型では4耳中の3耳に治癒・著明回復がみられ,滲出性中耳炎型,肉芽性中耳炎型に比べ良好であった.難聴発症から治療までの期間と聴力経過には,明らかな関係は見出せなかったが,治療までの期間の長い耳の難聴は不変・悪化であった.顔面神経麻痺,肥厚性硬膜炎を呈した症例が1例ずつあり,これらの患側の難聴は回復しなかった.速やかな診断と遅滞ない治療が望ましいと思われる.

  • 石川 元基, 高橋 真理子, 村上 信五
    2020 年 30 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    前医にて診断に苦慮し,当科でANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)と診断した2症例について報告する.症例1は80歳女性で,前医で両側滲出性中耳炎と診断され治療していたが,耳漏が膿性になり難聴が進行したため当科に紹介された.膿性耳漏からは緑膿菌が検出され,糖尿病もあるため悪性外耳道炎が疑われた.ANCA関連抗体は陰性でMEPM投与にて緑膿菌は消失したが,CRPやESRなど炎症反応が増悪傾向を示したため,診断的治療としてのステロイドを投与したところ耳内所見が改善した.ANCA関連抗体を再検したところMPO-ANCAが陽性化していたためOMAAVと診断した.症例2は71歳女性で両側滲出性中耳炎として治療していたが難聴が進行したため前医より紹介となった.当科初診時,鼓膜換気チューブから拍動性に噴出する漿液性耳漏を認めた.CRPが亢進していたため念のためANCA関連抗体を検査したとこころMPO-ANCAが陽性であったためOMAAVと診断し治療を行った.

    OMAAVは抗菌治療や鼓膜チューブ挿入にても改善しない難治性中耳炎であるが,非典型的な場合は治療開始が遅れる可能性がある.難聴が進行して聾になった場合,聴力の予後は不良であることから,難治性で難聴が進行する中耳炎の鑑別には常にOMAAVを念頭において診療する必要がある.

  • 山田 浩之, 大石 直樹, 中山 梨絵, 上野 真史, 小川 郁
    2020 年 30 巻 2 号 p. 112-121
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    穿孔や陥凹が無く鼓膜所見が正常な一側性伝音難聴症例は,診断に苦慮する.一側性耳硬化症,一側性耳小骨奇形などが鑑別に挙がるが,聴覚検査やCTで特徴的な所見を認めないこともある.さら手術適応の有無,手術アプローチ,伝音再建法に迷うこともあり,術前診断と術中所見が合致しないこともある.手術症例12例に対し術前診断と手術法について検討し,難聴・手術に関する独自の質問紙を用いて手術適応について検討した.術前診断と術中診断が一致したのは8例で,特徴的なCT所見が無ければ術前に一側性耳小骨奇形(固着)と一側性耳硬化症を鑑別することは不可能と考えた.手術成績は10例で成功し,鼓室形成術はIIIc型よりもIIIi型で行う方が良い結果となった.質問紙の結果から手術適応を考えると,手術による患者利益は十分にあり,勧めても良いが,難聴による不便の自覚が無い患者や手術に踏み切れない患者に対しては慎重になる必要がある.

  • 藤川 太郎, 川島 慶之, 伊藤 卓, 本田 圭司, 竹田 貴策, 堤 剛
    2020 年 30 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    鼓室形成術の術後聴力成績において中耳病変の程度は重要な予後因子であり,そのグレード分類としてMiddle Ear Risk Index(MERI)とOssiculoplasty Outcome Parameter Staging(OOPS)Indexがある.本研究では,経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)のみで鼓室形成術が施行された39人39耳を対象に,術後聴力の予測手段としての2つのシステムの有用性を検討した.平均のMERIスコアは5.0,OOPS Indexスコアは3.2であった.平均の術後気骨導差は,MERIのグレードでmild:17.5 dB,moderate:18.1 dB,severe:22.3 dB(p = 0.51),OOPS Indexのグレードでmild:16.9 dB,moderate:20.6 dB,severe:36.3 dB(p = 0.06)であった.成功率は,AAO-HNSの基準に従った場合のみ,OOPS Indexのグレードが高いほど低下する傾向がみられた(p = 0.29).またOOPS Indexスコアと術後気骨導差の間に有意な相関がみられた(R = 0.46, p < 0.01).TEES単独による鼓室形成術においても,術後聴力の予測手段としてOOPS Indexは有用である.

  • 本田 圭司, 川島 慶之, 伊藤 卓, 藤川 太郎, 竹田 貴策, 渡邊 浩基, 堤 剛
    2020 年 30 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    症例は32歳女性.耳かき中に子供と接触し受傷.左鼓膜の後上象限に穿孔を認め,穿孔よりキヌタ・アブミ関節が観察された.純音聴力検査にて3分法平均聴力レベル38.3 dBの左伝音難聴を認めた.穿孔は自然閉鎖し聴力は一時改善したがその後再増悪した.経過中にバルサルバ法で聴力が改善すると訴えており,実際にバルサルバ法前後で35.0 dBから23.3 dBに改善を認めた.経外耳道的内視鏡下鼓室形成術を施行し,アブミ骨後脚の完全離断および前脚の不完全離断を確認した.アブミ骨上部構造およびキヌタ骨を摘出して人工耳小骨にてIVc再建を行い,良好な聴力改善を得られた.バルサルバ法で聴力が改善した機序として,アブミ骨上部構造が外側へ偏位し,前脚と底板を連結する軟部組織の張力が増大して伝音効率が改善した可能性が考えられた.バルサルバ法が鼓膜穿孔のない耳小骨連鎖不完全離断の診断に有用となりうることが示唆された.

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