Otology Japan
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30 巻 , 4 号
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原著論文
  • ―CI2004単音節リストと57S語表の比較―
    松田 悠佑, 奥田 匠, 上江 愛, 平原 信哉, 高木 実, 我那覇 章, 花牟禮 豊, 東野 哲也
    2020 年 30 巻 4 号 p. 227-231
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    人工内耳装用例50例に対しCI2004と57Sを用いた語音聴取検査を実施し,両検査の特性が成績に与える影響を検討した.結果はCI2004が平均54.5%,57Sが平均66.9%であり57Sの方が有意に良好であった.その差は20%程度であった.共通の単音節を抜粋し比較した結果,CI2004は平均60.7%,57Sは平均66.0%であり有意差はみられなかった.非共通の単音節を比較した結果,CI2004は平均37.6%,57Sは平均70.4%で有意差が認められた.つまり,各語表より得られた結果を比較際には差を考慮した上で行うべきである.また,共通単音節のなかには相関に欠く単音節がいくつか存在し,音声データの歪みが示唆された.本邦でのCI例への評価法が統一されていない現状を鑑みると,指針の作成が望まれる.

  • 泰地 秀信, 岡本 康秀, 神崎 仁
    2020 年 30 巻 4 号 p. 232-238
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    第二世代のacoustic reflectometry(AR)であるEarCheck®を用い,滲出性中耳炎(OME)および急性中耳炎(AOM)診断における有用性を第一世代のAR(Acoustic Otoscope)と比較して検討した.10歳以下の児で,OME40例42耳,AOM75例79耳,正常52例57耳を対象としてEarCheck®とAcoustic Otoscopeの測定を行った.EarCheck®では結果は5段階で表示され(SG-AR level),1=正常,2=異常の可能性,3~5=異常,である.SG-AR levelは正常1.14 ± 0.35,OME 2.88 ± 1.15,AOM 2.33 ± 1.15であり,OMEと正常,AOMと正常を比較するといずれも有意差(p < 0.001)がみられた.EarCheck®ではlevel 2以上を異常としてOME診断の感度93%,特異度86%,AOM診断の感度75%,特異度86%であった.EarCheck®は簡便かつ短時間に行えるのでAOM,OMEの見逃しを防ぐ検査として有用と考えられた.

  • 新川 智佳子, 伊藤 吏, 窪田 俊憲, 古川 孝俊, 松井 祐興, 後藤 崇成, 鈴木 豊, 欠畑 誠治
    2020 年 30 巻 4 号 p. 239-246
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    狭義の浅在化鼓膜は,手術治療自体がその誘因となるために再発も多く,治療に難渋する.当科では,耳小骨連鎖が残存している症例では前方の鼓膜輪とツチ骨柄に対しunderlayで鼓膜を正常な位置に再建する鼓室形成I型を,耳小骨連鎖がない症例には,浅在化した鼓膜の位置は変えずにアブミ骨から鼓膜までの距離に合わせた長い軟骨接合型アパセラム®用いて伝音再建を行っている.2014年以降に狭義の浅在化鼓膜6耳と混合型浅在化鼓膜5耳に対して行った手術成績を検討したところ,I型症例(3耳)はJOS基準で全例成功,再発も認めていない.浅在化鼓膜の位置を変えずに長尺コルメラで伝音再建した症例(7耳)でも全例成功であったが,鼓膜の位置を正常の位置に戻しIIIc型再建を施行した初期の症例(1耳)では術後に再浅在化を生じ,難聴も残存した.以上より浅在化鼓膜に対する長尺コルメラの有用性が示唆された.

  • 染川 幸裕, 長島 勉, 久保 志保子, 宮田 遼, 高野 賢一
    2020 年 30 巻 4 号 p. 247-256
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    緊張部型真珠腫一期的手術選択117耳を対象に,生存分析の手法を用い,再手術や修正手術などの計画にない二次手術(S2r)を施行することなく伝音再建成功例として推奨される術後気骨導差20 dB以内を保つ症例を経過良好例と定義し,その累積頻度により治療成績を評価した.経過良好例の累積頻度は,術後5年:I型91.0%,III型79.2%,IV型58.8%,術後10年:III型65.0%,IV型50.8%であった.III型とIV型の成績に有意差を認めたが(P = 0.042, logrank test),この差は伝音再建不成功例の頻度差であった.

    対象117耳中S2r例は17耳で,内訳は①健全な中耳形態の喪失12耳,②遺残性再発3耳,③伝音聴力修正2耳であった.次に③の病態に影響する因子検索目的で,術前所見や手術操作から独立変数項目を抜粋して生存曲線を基に多変量解析を行った.鼓膜全面の癒着病変(AO)が促進的に,鼓膜張筋腱切断による前・後換気路開大操作が抑制的に有意な因子となった.AO合併例では徹底した換気路開大操作が必要と思われた.

  • 川北 憲人, 清水 猛史
    2020 年 30 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    2010年1月から2019年1月までに当科を受診した先天性真珠腫16例(16耳)のうち,1歳7ヶ月,2歳0ヶ月,2歳8ヶ月の3症例において,経時的に真珠種の縮小・自然消退を認めた.自然消退例3例の特徴として,いずれも初診時に低年齢(1–2歳)で,耳小骨連鎖に異常が認められなかった.

    先天性真珠腫の治療は,早期に発見し病状が進行しないうちに手術を行うことが重要である.しかしながら,低年齢で耳小骨連鎖に明らかな異常がない先天性真珠腫には,増大傾向に注意しながら経過観察することで,自然消退する例が認められる.また,今回の症例はいずれも無症状で偶然に発見されていたことから,発見前に自然消退している先天性真珠腫例の存在も考えられた.

  • 草野 純子, 平塚 康之, 村井 紀彦
    2020 年 30 巻 4 号 p. 263-270
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    Bezold膿瘍は,Bezoldが乳様突起炎の合併症として1881年に初めて報告した頸部膿瘍である.抗生剤が普及した現代では細菌性急性中耳炎から生じる古典的なものは激減し,慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎の稀な合併症として報告されるようになった.今回我々は,Bezold膿瘍を契機に中耳真珠腫併発がわかった左外耳道狭窄症の稀な症例を経験したので報告する.患者は62歳男性で,元来,慢性外耳道炎により両側外耳道がほぼ閉鎖しており,発熱,食思不振を主訴に来院した.左耳介後部から後頸部にかけての著明な腫脹と,側頭骨・頸部CT検査結果より,Bezold膿瘍と診断した.入院後,直ちに頸部切開排膿,抗生剤点滴全身投与を行った.入院40日目に左鼓室形成術,外耳道形成術を施行し,外耳道の骨性閉鎖と外耳道内側から鼓室,乳突洞,乳様突起に進展する真珠腫を認めた.術後約7年の経過で真珠腫再発は認めていない.

  • 吉田 沙絵子, 関根 康寛, 菊地 さおり, 飯野 ゆき子
    2020 年 30 巻 4 号 p. 271-280
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    Cogan症候群は非梅毒性角膜実質炎に前庭機能障害と感音難聴を伴う稀な疾患である.血管炎症候群の一つとして自己免疫性の機序を持つとされ,1〜2割程度に高安動脈炎を合併すると報告されている.今回我々は,好酸球性中耳炎として治療中に,Cogan症候群が判明した1例を経験したので報告する.

    症例は64歳女性.20歳代で気管支喘息と診断され,プレドニゾロン(PSL)依存性であり,62歳よりメポリズマブの投与を受けている.50歳で好酸球性中耳炎と診断され,62歳時当科紹介となった.経過中耳漏がないにも関わらず,骨導閾値上昇を繰り返し,PSLを投与するが難聴は進行した.63歳より強膜炎を発症し,他院で治療されるがPSL依存性に症状が変動した.眼症状と内耳障害の発症に時間的乖離があり,非典型的Cogan症候群の診断となった.

    本症例の臨床経過を報告するとともにCogan症候群と血管炎との関係性についても検討を加える.

  • 滝瀬 由吏江, 深美 悟, 栃木 康佑, 永島 祐美, 阿久津 誠, 穐吉 亮平, 金谷 洋明, 平林 秀樹, 田中 康広, 春名 眞一
    2020 年 30 巻 4 号 p. 281-287
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    ムコーズス中耳炎に細菌性髄膜炎を合併した妊婦の1例を経験した.

    既往歴のない30歳の女性で,妊娠経過は概ね良好であったが,左耳痛,耳漏があり,約1か月前より急性中耳炎として近医耳鼻科でセフェム系抗菌薬の継続投与を受けていた.一時改善するも,左耳漏の再燃を認め,妊娠36週4日時点で頭痛,嘔吐,意識障害を来たしたため,当院へ救急搬送された.左急性中耳炎から波及した細菌性髄膜炎と診断し,入院同日に緊急帝王切開術ならびに左乳様突起削開術を施行した.術後は細菌性髄膜炎に準じて抗菌薬静注加療を施行し,耳漏,髄液よりムコイド型肺炎球菌が検出された後は,ペニシリン系抗菌薬に薬剤変更した.母児ともに後遺症を残すことなく治癒し,第17病日に退院に至った.

    成人の遷延性中耳炎においては,ムコーズス中耳炎を鑑別に挙げることが非常に重要であり,ムコーズス中耳炎の周知徹底が望まれる.

  • 西村 理宇, 池畑 美樹, 美内 慎也, 阪上 雅史
    2020 年 30 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    鼓索神経は鼓室という空間を走行する神経であるため,中耳手術を行う際に接触する機会が多く,術後の味覚障害が問題となることがある.手術中に鼓索神経を切断した後に神経の断端同士を吻合することで,術後に味覚機能の回復を認めた2症例を経験した.症例1は左鼓室硬化症,右真珠腫性中耳炎に対して鼓室形成術を行い,両側とも手術中に鼓索神経を一旦切断したが,断端を吻合し,術後に自覚症状,電気味覚検査所見ともに改善を認めた.症例2は,右耳硬化症に対するアブミ骨手術後にピストン脱落を反復し,9年間で3回手術を行った.初回手術時に右鼓索神経を切断し,断端吻合を行った.2回目と,3回目の手術において,肉眼的に右鼓索神経の再生が確認でき,電気味覚検査,自覚所見ともに改善を認めた.術中にやむを得ず鼓索神経を切断した場合においても,神経の断端を吻合することで,鼓索神経が再生し,味覚が回復する可能性があると考えられた.

  • 山本 光, 濵田 昌史
    2020 年 30 巻 4 号 p. 294-300
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    顔面神経麻痺の原因の1つに腫瘍性麻痺がある.根治には,腫瘍全摘のうえ神経移植が望ましいが,術後の機能回復には限界もある.今回,われわれは急性期治療終了後に診断に至った側頭骨内顔面神経線維腫に対し,まず経乳突的減荷術のみ施行し,良好な経過を得た1例を経験した.症例は47歳の女性.突然の左顔面麻痺で来院した.めまいや難聴を認めず,麻痺スコアは6/40点だった.初期治療として抗ウイルス薬を併用したステロイド治療を行い,比較的良好なENoG結果だったにもかかわらず,2ヶ月経過後も麻痺は改善しなかった.CTで顔面神経乳突部の拡大を認め,MRIでの造影効果も認めた.顔面神経鞘腫が疑われたが,まず減荷術および生検のみ行った.病理結果は神経線維腫だった.術後約1年半で麻痺スコアは34/40点まで回復した.顔面神経の腫瘍性病変に対して,高度麻痺例においても,腫瘍全摘および神経移植の前に減荷術が第一選択になりうると考えられた.

  • 石川 浩太郎, 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    2020 年 30 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    MYO15A遺伝子バリアントを同定した小児難聴症例の約6年に渡る聴力経過を観察できた.症例は2020年2月の時点で13歳の女児で,父親に左耳4000 Hzに35 dBのc5-dipを認めた以外は家系内に難聴者はいなかった.新生児聴覚スクリーニングは未受検で,小学校入学後の健診で難聴を指摘され,6歳5か月で高音急墜型の感音難聴と診断された.その後,徐々に難聴は進行し,2019年4月に高度難聴に進行した.原因検索のため実施した難聴遺伝学的検査でMYO15A遺伝子にc.9415_9418del(p.L3139fs)〈Pathogenic〉と,c.10263C>G(p.I3421M)〈Likely Pathogenic〉の2つのバリアントの複合ヘテロ接合が同定された.MYO15A遺伝子は常染色体劣性遺伝形式をとる非症候群性難聴の原因であり,先天性重度ないしは高音障害型の難聴を呈する場合が多い.一部には進行性難聴を呈する家系も認められ,本症例も同様の表現型に含まれると考えられた.本症例は補聴器とデジタル補聴援助システムの使用で装用効果は十分に得られている.

  • 篠森 裕介, 有友 宏
    2020 年 30 巻 4 号 p. 307-315
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    多発性骨髄腫は形質細胞性腫瘍が全身の骨髄内外で増殖する難治性疾患である.多発性骨髄腫に併発する内耳出血,急性感音難聴の報告は稀である.今回我々は右突発性難聴として加療した患者がその2か月後に両急性感音難聴を発症し,鼻,口腔,脳の出血や血液検査値異常から多発性骨髄腫の診断に至った例を経験した.右耳は内科的治療介入後も改善なく失聴したが,左耳は難聴が進行した後に回復に転じ約4ヶ月後に正常閾値となった.頭部単純MRIのT1強調像で両内耳が高信号を呈し,ガドリニウム造影のT1強調像において造影効果がないことから両側内耳出血と推定した.内耳出血の機序は,多発性骨髄腫によって生じる出血傾向や過粘稠度症候群併発による血流鬱滞,血管拡張が局所出血を来したものと推定した.多発性骨髄腫に併発する内耳出血は報告が極めて少ないため聴力予後推定や内耳をターゲットとした治療が困難で,更なる症例の集積が必要である.

  • ―特に薬剤投与を終了する画像上指標について―
    谷内 政崇, 綾仁 悠介, 萩森 伸一, 菊岡 祐介, 尾﨑 昭子, 稲中 優子, 乾 崇樹, 大井 幸昌, 河田 了
    2020 年 30 巻 4 号 p. 316-322
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    頭蓋底骨髄炎は悪性外耳道炎や中耳炎などから炎症が頭蓋底に波及し,骨破壊や脳神経麻痺をきたし,時に致死的となる疾患である.今回我々は抗微生物薬が奏功した頭蓋底骨髄炎の4例を経験した.いずれの症例も側頭骨CTにて頭蓋底部に骨破壊像を認め,頭蓋底骨髄炎と診断し,抗微生物薬を点滴静注および内服投与で長期間加療した.経過中のCTにて全症例で骨破壊像の改善を認めた.その結果を受けて抗微生物薬投与を終了し,いずれの症例も現在まで再発を認めていない.頭蓋底骨髄炎はしばしば再発を認めるため,長期間の抗微生物薬投与が推奨されている.しかし,抗微生物薬を終了する時期について明確な指標はない.今回の症例からの経験として,側頭骨CTによる骨破壊像の改善は抗微生物薬を終了とする指標となるものと考えた.

  • 竹田 貴策, 川島 慶之, 伊藤 卓, 佐藤 尊陽, 藤川 太郎, 本田 圭司, 堤 剛
    2020 年 30 巻 4 号 p. 323-331
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    耳鳴の有病率は約20%であり,その約4%が拍動性耳鳴である.拍動性耳鳴の原因病態の一つに,S状静脈洞,頸静脈球,内頸動脈といった側頭骨内を走行する血管の骨壁異常が挙げられる.高分解能CTでは,拍動性耳鳴を訴える患者の約20%にS状静脈洞の骨壁欠損あるいは憩室が同定される.今回我々は,臨床症状および画像所見からS状静脈洞骨壁欠損による拍動性耳鳴を疑った49歳の女性に対し,経乳突洞アプローチによる骨パテ板と側頭筋膜を用いた骨壁欠損部の閉鎖術を行った.術直後から拍動性耳鳴は自覚的に著明に改善した.他覚的にも,術前に認めた音響性耳小骨筋反射検査における脈波状の波形が術後に消失した.S状静脈洞骨壁欠損に伴う拍動性耳鳴は,本邦では本症例が初の報告となるが,海外では拍動性耳鳴の原因として高頻度であり,骨壁欠損部の閉鎖術により高率に寛解が得られることが報告されている.拍動性耳鳴症例の診療に当たっては,本疾患を念頭に置くことが肝要である.

  • 上野 真史, 山田 浩之, 中山 梨絵, 大石 直樹, 小川 郁
    2020 年 30 巻 4 号 p. 332-338
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    Subtotal Petrosectomyは全中耳腔・乳突蜂巣粘膜の削開,鼓膜の除去,削開腔の充填,外耳道閉鎖ならびに耳管鼓室口の閉鎖を施行する術式であり,術後乳突腔障害などの難治性の感染性中耳疾患や中耳腫瘍で伝音再建が困難である症例が適応となる.今回,外側半規管瘻孔を発症した乳突腔障害例に対し,瘻孔閉鎖術に加えSubtotal Petrosectomyを施行し良好な経過を得た症例を経験した.症例は76歳女性.外耳道後壁削除・乳突開放型鼓室形成術後の乳突腔障害に対し近医で定期清掃中に,外傷性外側半規管瘻孔を生じ救急搬送された.全身麻酔下で瘻孔閉鎖術が必要となったが,乳突腔障害が残存すると瘻孔の再発や内耳炎の併発の可能性があるため同時に乳突腔障害の制御も必要と判断し,瘻孔閉鎖術に加えSubtotal Petrosectomyを施行した.術後,めまい症状は改善し,合併症の出現無く良好な経過を得ている.本術式は乳突腔障害などの難治性の感染性中耳疾患に有効であり,本症例のように外耳道後壁再建型鼓室形成術が困難で有効な残存聴力が無い症例が良い適応と考えられた.

  • 成尾 一彦, 堀中 昭良, 大山 寛毅, 西村 忠己, 北原 糺
    2020 年 30 巻 4 号 p. 339-345
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    極めてまれな側頭骨小細胞癌症例を経験したので報告する.症例は,69歳男性,主訴は右顔面神経麻痺であった.幼少期より右慢性中耳炎の診断で,断続的に耳鼻咽喉科診療所を通院していた.右外耳道狭窄と右顔面神経麻痺が生じ,全身麻酔下に乳突部と外耳道から生検を行い,小細胞癌との診断に至った.肺小細胞癌(限局型)に準じ,化学放射線治療(シスプラチン+エトポシドに放射線治療66 Gyを併用)を施行した.Grade 2の腸炎,Grade 4の好中球減少も生じたが,化学療法を3クール施行した.右外耳道の腫脹は軽減し深部の鼓膜も確認できるようになったが,その後嘔気,頭痛が出現し,癌性髄膜炎,水頭症となり全身状態が悪化,初診より6か月後に不幸な転帰をとった.

    慢性中耳炎の経過中に,顔面神経麻痺や外耳道狭窄など出現すれば,悪性疾患併存の可能性も想定し画像検査ならびに生検など迅速に精査を行うべきである.

日本耳科学会用語委員会報告
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