Otology Japan
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最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
第30回日本耳科学会総会特別企画
耳科学会賞受賞研究
  • 大石 直樹
    2021 年 31 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    孤発性聴神経腫瘍(VS)の初期症状の多くは難聴,耳鳴などの聴覚症状であることから,耳科専門医の立場でいかにVS患者の予後改善に貢献できるか,を主要な研究テーマとして取り組んできた.より小腫瘍の段階で早期発見される腫瘍が増加する中,VS患者における将来にわたっての聴覚機能・QOL維持が目的である.具体的には,まず高精度の術中持続神経モニタリングを併用した経側頭骨手術を推進し,術前OAE,ABRの結果に応じて聴力温存手術の適応を明確化し,聴力温存率を向上させてきた.また多施設共同後向き観察研究により,VSにおける急性感音難聴像の特徴として,1年ごとに25%の患者に再発がみられることを明らかにした.さらにVSに疾患特異的なQOL質問紙日本語版を標準化し,経過観察中のVS患者のQOL低下には耳鳴の重症度の影響が大きいことを明らかにし,VS術後の耳鳴への対処法を確立させた.今後,更なる予後改善に向けた研究に取り組んでいきたい.

テーマセッション1
  • 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 115
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー
  • 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 116-124
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    次世代シークエンサーの臨床応用により既知難聴原因遺伝子の網羅的解析が可能となってきた.その一方,非常に多くのバリアントが同定されるため,見出されたバリアントの病原性の判断が新たな課題となっている.本稿では,難聴の次世代シークエンス解析の実際の流れと,見出されたバリアントのフィルタリング,病原性判断手法に関して概説する.信州大学では遺伝性難聴患者の臨床情報と遺伝情報の統合データベースの開発を進めており,すでに12,000例を越える症例の詳細な臨床情報と遺伝子解析データが集積されている.All Japan の体制で収集されたビックデータを用いることで,病原性を効率的に判断することが可能となっている.また,信州大学で開発した保険診療で用いられている次世代シークエンサーと同一プラットフォームのデータを用いたCopy Number Variation解析法に関しても紹介する.

  • 野口 佳裕, 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    現在までに,120以上の遺伝性難聴の原因遺伝子が発見されてきた.DNAシークエンス技術の著明な進歩が,この発見に貢献してきた.次世代シークエンサー(NGS)を用いた超並列DNAシークエンスは,遺伝子診断の標準的なものとして台頭し,重要な役割を果たし,迅速な遺伝子診断と診断率の向上に寄与している.しかし,NGSは膨大な数のバリアントを同定し,適切な知識がバリアントの病原性の評価に必要となる.バリアントの病原性は,American College of Medical Genetics and Genomicsガイドラインにより,pathogenic,likely pathogenic,uncertain significant,likely benignとbenignに分類される.uncertain significantのバリアントは10%から90%の幅広い病原性を有する.そのため,そのバリアントに対しては,病原性に関する注意深い遺伝カウンセリングが要求される.さらに,遺伝学的検査で明らかな原因と考えられるバリアントが同定されないときは,遺伝学的要因は難聴に関与しないとする説明は回避すべきである.

  • 荒井 康裕, 西尾 信哉, 折舘 伸彦, 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    先天性難聴の遺伝学的検査は2012年に保険収載されて以来,難聴の原因を明らかにし最適な医療を提供するために必要なツールとして全国の施設で実施されている.難聴遺伝学的検査のメリットには,1)難聴の正確な診断ができる,2)難聴の重症度や予後の予測ができ,めまいや糖尿病などの随伴症状の予想ができる,3)人工内耳を行うかどうか等の治療法選択の参考になる,などが挙げられる.2012年10月から2020年5月までの期間に当院において遺伝学的検査を施行した先天性難聴患者は119家系132名であり遺伝子変異検出率は41.7%(47家系56例)であった.難聴遺伝学的検査は,より早期の両側同時人工内耳手術の決定の際に非常に有用なツールと考えられた.また,進行性難聴における人工内耳植込の時期決定にも,難聴遺伝学的検査が有用であった.遺伝子診断後に注意すべき点として,遺伝子変異による難聴と診断した後も,慎重に難聴の経過を追うことが大切である症例が認められた.

  • 高橋 優宏, 岩崎 聡, 古舘 佐起子, 岡 晋一郎, 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    特発性両側性感音難聴のうち,加齢性難聴とは明らかに異なる40歳未満の遅発性難聴を発症する7つの原因遺伝子が同定され,若年発症型両側性感音難聴と定義された.診断基準は①遅発性,若年発症,②両側性,③原因遺伝子が同定されており,既知の外的要因が除かれているものである.現在,ACTG1CDH23COCHKCNQ4TECTATEMPRSS3WFS1遺伝子が原因遺伝子として診断基準に示されており,70 dB以上の高度難聴であれば指定難病の申請ができる.ACTG1症例,TEMPRSS3症例のように,次世代シークエンサーによる遺伝学的検査および遺伝カウンセリングにより補聴器から人工聴覚器手術への自律的選択が可能となり,大きな福音となっている.

  • 石川 浩太郎, 吉村 豪兼, 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    アッシャー症候群は聴覚・視覚の重複障害のため,コミュニケーション障害を生じる疾患である.アッシャー症候群について,これまで厚生労働科学研究補助金(難治性疾患研究事業)において研究が進められており,現在は難治性聴覚障害に関する調査研究班が担当して研究が行われている.アッシャー症候群は感音難聴と網膜色素変性症のそれぞれの症状の程度とその発症時期によって3つのタイプに分類されている.しかし臨床的な診断には限界があり,遺伝学的検査が確定診断の手助けとなっている.2020年3月31日現在で,204例が全国から登録され,先天性難聴を有し,網膜色素変性症の発症年齢は,10歳未満および10歳代の発症が多く見られた.原因遺伝子はタイプ1ではMYO7A遺伝子とCDH23遺伝子が,タイプ2ではUSH2A遺伝子が多数を占めた.同じ原因遺伝子でも,聴力型にバリエーションが見られることが確認され,原因遺伝子検索の重要性が示唆された.

  • 大上 麻由里, 大上 研二, 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    次世代シーケンサー時代になり,稀な症候群性難聴の正確な診断ができるようになった.今回我々は,信州大学との共同研究にて行われた難聴の遺伝子解析研究により,症候群性難聴の原因遺伝子変異が同定された症例から,特に症候群性難聴の早期診断意義について考察した.

    遺伝学的検査により症候群性難聴を早期に診断することは,随伴症候の早期治療開始を可能にするだけではなく,手術など難聴治療にも必要な情報を提供することが可能になるなど早期介入に有用であった.また,随伴症状による問題を発症前に理解することで,サポート体制や療育の見直しにつながる場合もあった.次世代シーケンサーを用いた網羅的解析により症候群性難聴が随伴症候発現前など,より早期に遺伝学的に診断可能となってきたが,予測される随伴症状への早期からの対応も可能となり,部分的にしか症候を有さない非典型例の確定診断,随伴症状への早期からの対応や,将来を見据えた治療法の選択など様々なメリットがあることが明らかとなった.

ネクストジェネレーションセッション4
  • 水足 邦雄
    2021 年 31 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    真珠腫の手術では確実な母膜摘出とともに術後の中耳換気能を確保する必要がある.TEESでは外耳道を中耳へのアクセスルートとして直接利用し,より近接できるため耳後部アプローチによる顕微鏡の視野では最深部となる耳管上陥凹を含む鼓室前方の換気ルートを,正面から観察し処置することが可能な術式である.そのため上鼓室,特に耳管上陥凹から前上鼓室にかけての,上鼓室前骨板(cog)や鼓膜張筋ヒダの解剖は,TEESが導入されてから改めて「見直された」解剖構造であると言える.

    そこで我々は上鼓室真珠腫に対してTEESを施行した74症例を見返し,cogおよびtensor foldの位置関係を3つに分類して,それぞれのタイプ毎の術後前方換気ルートの開存率,術後再発率,術後聴力についてそれぞれ検討した.その結果,鼓膜張筋ヒダが垂直に位置するType A(vertical type)が14例(18.9%),斜めに位置するType B(oblique type)が29例(39.2%),水平に位置するType C(horizontal type)が29例(39.2%)であった.

    手術では全例で明視下にcogおよび鼓膜張筋ヒダを開放したが,手術の1年以上経過した後にも60耳(81.1%)で鼓室前方換気ルートの開存がCTにて観察された.真珠腫再発率は3例(4.9%)で,聴力改善率は気骨導差20 dB以内の症例が75.6%であった.これらの結果は,鼓膜張筋ヒダの解剖バリエーションによる差は認められなかった.

    これはTEESを通し前上鼓室の解剖に習熟したことにより,どのようなバリエーションであっても確実に明視化で前方喚起ルートが開放できるようになった結果であると考えられた.「よく見える」TEESの特性を活かしながら詳細な中耳解剖を「自ら見に行く」ことで真珠腫に対する安全で機能的な手術が可能となることを強調したい.

原著論文
  • 木村 優介, 加我 君孝
    2021 年 31 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    目的:電気刺激(Galvanic stimulation)を用いたVestibular-evoked myogenic potential(VEMP)をおこない前庭神経の機能を評価し,Auditory Neuropathy(AN)に前庭神経の障害を伴うことがあるか否かを明らかにする.

    対象:東京医療センター幼小児難聴・言語障害クリニックを受診し,DP-OAE正常,ABR無反応を呈するAN 8名(男性2名,女性6名)の年齢は6歳3カ月-77歳8カ月(mean ± SD,45.3 ± 29.5歳)を対象とした.

    方法:耳後部の弱い電気刺激により前庭神経を刺激し,胸鎖乳突筋に弛緩反応を引き起こすGalvanic VEMPを行うことで,AN患者の前庭神経の機能評価をおこなった.外側半規管と上前庭神経の機能評価として温度刺激検査,球形嚢と下前庭神経の機能評価としてCervical VEMPをおこなった.

    結論:AN患者8名にGalvanic VEMPをおこない,4名(50%)に両側の反応低下を認め,ANには前庭神経の機能低下を伴う例があることが明らかとなり,ANに伴う前庭機能低下の病態の一つに前庭神経の機能低下が関与している場合があることがわかった.

  • 波多野 都, 杉本 寿史, 伊藤 真人, 吉崎 智一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    鼓膜穿孔閉鎖の目標は穿孔閉鎖とともに聴力の改善や耳漏停止であるが,小児の場合は術式や年齢,穿孔の原因,耳管機能などの様々な要因が関わると考えられる.本研究では,これらのうち術式,年齢,穿孔の大きさ,鼓膜穿孔閉鎖と術前後聴力との関連について検討をおこない報告する.75症例92耳を対象とし,術式(鼓室形成術と鼓膜形成術),年齢(12歳未満と12歳以上),穿孔の大きさ,耳管機能,穿孔閉鎖率および周波数別聴力との関連について統計学的に検討をおこなった.穿孔が大きくなると鼓室形成術が選択され,穿孔閉鎖率と聴力改善といった手術の成功と術式間に関連はみとめられなかった.穿孔閉鎖は12歳以上で良好,術後聴力は12歳未満でよい傾向を認めた.耳管機能と穿孔閉鎖に有意な関連は認めなかった.小児中耳手術については発達期である故に様々な要因が絡んでくる.このため,手術の成功のために個々に応じて手術時期や術式を見極めなければならない.耳管機能を含め中耳発育といった他の要素との関連も今後検討する必要がある.

  • 下郡 博明, 菅原 一真, 山下 裕司
    2021 年 31 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    1999年4月から2013年12月までに山口大学耳鼻咽喉科で手術を行った耳小骨奇形成人例17耳に対して,自覚的聴力経過,奇形の病態について検討した.17耳中,以前から難聴を認めていたものが13耳,最近になって難聴を自覚しものが4耳あった.以前から難聴の自覚があった群で,難聴の進行を自覚したものが4耳,難聴の程度が変わらないものが9耳だった.難聴の進行を自覚した群(難聴進行群:8耳),難聴の程度は変化していない群(難聴固定群:9耳)に分けて奇形の病態を検討した.難聴進行群は,全例キヌタ骨-アブミ骨上部構造-アブミ骨底板のいずれかに連続性の障害を伴っていた.一方,難聴固定群ではツチ骨,キヌタ骨,アブミ骨底板のいずれかの部位の固着を合併したものが多かった.最近になって難聴を自覚した4耳は,後天的にキヌタ骨-アブミ骨上部構造-アブミ骨底板のいずれかの連続性の障害の増悪をきたした可能性を考えた.

  • 金井 理絵, 金丸 眞一, 山口 智也, 北 真一郎, 大坂 和士
    2021 年 31 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    急性乳様突起炎は耳後部膿瘍や頭蓋内感染症などの致命的な合併症をきたしうる重症感染症であるが,手術治療の必要性や手術手技については様々な意見がある.我々が経験した5症例6耳の経過と文献的考察をもとに,本疾患の対処法について検討した.

    まず,全例に抗菌薬の経静脈投与を施行した.入院時からの合併症は髄膜炎2例,耳後部膿瘍または蜂窩織炎2例であった.1例は合併症がなかったが,抗菌薬への反応が不良であった.全例,入院初日~7日目に感染源制御目的で手術治療を施行した.術式は後壁温存型鼓室形成乳突削開術4耳,乳突削開術2耳であった.全例,鼓室,乳突洞口,乳突洞に充満していた肉芽を除去し,換気ルートを確保した.術後は感染の再燃なく良好な経過をえられた.

    合併症をともなう場合や,合併症がなくとも抗菌薬への反応が不良な症例は,早期に感染源である中耳病変に対する手術を施行し,さらなる悪化を予防することが重要である.

  • 金沢 弘美, 吉田 尚弘
    2021 年 31 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    粘膜悪性黒色腫は皮膚原発と同様に局所再発と遠隔転移をしやすい傾向があり,5年生存率は20–25%程度と頭頸部腫瘍の中で最も予後不良である.今回黒色中耳貯留液による難聴を主訴とした症例の中耳貯留液の細胞診から,耳管咽頭口原発粘膜悪性黒色腫の診断を行なうことができた.体液を用いた粘膜悪性黒色腫の診断は,髄液・腹水・胸水で既に報告がある.

    2018年4月に頭頸部悪性腫瘍に対する重粒子線・陽子線治療は保険適応になり,2019年7月にはニボルマブ(商品名オプジーボ)などの免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法もガイドラインに掲載された.粘膜悪性黒色腫の発生部位としては頭頸部領域が最も頻度が高く,内視鏡の精度の向上により,早期(N0)の状態で粘膜の黒色沈着病変から粘膜悪性黒色腫を診断する機会が増えることが予想される.中耳貯留液による細胞診は,早期診断のための安全な方法の一つである.

  • 症例報告と文献レビュー
    荒井 康裕, 和田 昂, 森下 大樹, 高田 顕太郎, 折舘 伸彦
    2021 年 31 巻 2 号 p. 194-202
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    非結核性抗酸菌は,結核菌以外の抗酸菌の総称で土壌,水,埃などの自然環境で増殖する環境寄生菌であるが,非結核性抗酸菌の一つであるMycobacterium abscessusによる非結核性抗酸菌性中耳炎の症例報告および文献レビューを報告した.症例は25歳女性で,Clarithromycinを中心とした抗菌薬治療を行い,抗菌薬の中止判断および聴力改善目的に手術を施行し,細菌学的な菌の消失を確認後,抗菌薬投与を中止した.聴力の気骨導差の改善を得ることができ,感染の再燃も認めていない.非結核性抗酸菌性中耳炎は稀な疾患であり,PubMedによる検索では,2018年までの期間に34の著者より119例の報告を認めた.非結核性抗酸菌性中耳炎の感染経路,デブリードメント手術の必要性,抗菌薬の選択および投与期間,聴力予後について,過去の文献のレビューおよび本報告との比較考察について報告した.

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