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―Butterfly法,Underlay法,Over-underlay法との比較検討―
川島 慶之, 渡邊 浩基, 本田 圭司, 西尾 綾子, 丸山 絢子, 竹田 貴策, 伊藤 卓, 堤 剛
2025 年35 巻3 号 p.
145-153
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
ジャーナル
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耳珠軟骨前方に位置する脂肪を豊富に含む結合組織であるpretragal superficial musculoaponeurotic systemを移植片とした内視鏡下fat-plug myringoplastyを11耳に適用し,手術成績をbutterfly法,underlay法,over-underlay法と比較した.手術時間の中央値は31分であり,butterfly法と同等で,underlay法およびover-underlay法に比較し有意に短かった.12カ月以上経過観察を行った結果,全例で鼓膜穿孔の閉鎖が得られ,術後気骨導差の中央値は7.5 dBであった.穿孔閉鎖率や術後気骨導差はbutterfly法,underlay法,over-underlay法と同等であった.本法は,経外耳道的に移植片の採取が可能で,片手でも手術操作が容易なことから,経外耳道的内視鏡下手術との親和性も高い有用な術式である.
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~鼓膜炎との関連について~
水田 邦博, 荒井 真木, 遠藤 志織
2025 年35 巻3 号 p.
154-159
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
ジャーナル
フリー
鼓膜に穿孔を来たす疾患は多様で,それを閉鎖する方法もまた多岐にわたる.本研究では,閉鎖時に使用された足場の種類によって分類を行い,術前に認められた鼓膜炎,および術後に出現した鼓膜炎に注目した.
リティンパ®を用いた群は足場FGF群,鼓膜形成術または鼓室形成術において皮下結合織または側頭筋膜を使用した例は足場組織群とした.
56耳中6耳が鼓膜炎に対する処置のみで穿孔が閉鎖した.足場FGF群は24耳で,2回までの施行で穿孔閉鎖が18耳,小穿孔残存が4耳,穿孔の残存が2耳であった.術前後に鼓膜炎を呈した症例が確認された.足場組織群は26耳で,穿孔閉鎖は全例26耳であったが,同じく術前後に鼓膜炎を認めた症例があった.
術前の鼓膜炎に対して処置が有効であった例も存在し,また足場を用いた術後にも鼓膜炎が発生し得ることが明らかとなった.術前・術後を通して鼓膜炎への注意が必要である.
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須納瀬 知輝, 本藏 陽平, 香取 幸夫
2025 年35 巻3 号 p.
160-164
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
ジャーナル
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後天性外耳道狭窄症において,狭窄が高度で鼓膜が見えない症例や伝音障害を伴う症例では手術治療を要するが,耳掃除などの物理刺激で再狭窄をきたしやすい.今回,綿棒による慢性外耳道炎に続発した後天性外耳道狭窄症に対し,外来で局所麻酔下に外耳道拡大処置を行ったので報告する.本症例では外耳道狭窄により鼓膜後上象限しか確認できず,外耳道の拡大を要した.外耳道の拡大は手術治療で行われることが多いが,本症例では,外来で局所麻酔下に截除鉗子で皮膚と皮下組織を切除し,2週間パッキングすることで外耳道を拡大した.また,綿棒で耳掃除をする習慣があり,耳掃除をしないよう外来受診の度に厳しく指導を行い,掻痒感に対する薬物治療も行った.処置後約半年で再狭窄はなく,経過は良好である.拡大処置を外来で行うことで,全身麻酔や皮膚切開による侵襲を回避でき,手術や入院に伴う時間的・経済的なコストを抑えることが可能であると考える.
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川本 聡, 立山 香織, 吉永 和弘, 川野 利明, 平野 隆
2025 年35 巻3 号 p.
165-171
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
ジャーナル
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Anti-neutrophil cytoplasmic antibody(ANCA)関連血管炎性中耳炎(OMAAV)は,自己免疫性の難治性中耳炎である.従来のOMAAV治療では,高用量グルココルチコイドを用いて疾患コントロールを行うことが一般的であったが,長期にわたるステロイド投与による副作用が問題となる症例も多くみられた.このような状況の中,2022年に本邦で選択的C5a受容体阻害薬(Avacopan)が多発血管炎性肉芽腫症と顕微鏡的多発血管炎に対して使用可能となった.今回我々は,従来の寛解導入治療に反応不良であったOMAAV患者に対し,従来の治療に加えてAvacopanを用い,鼓膜所見および聴力の改善が得られた一例を示す.Avacopanの使用拡大により,ステロイド使用量の減少が可能となり,治療に伴う副作用の軽減が期待される.本稿では,文献的考察を踏まえ,OMAAVに対するAvacopanの有用性について検討する.
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水田 邦博, 遠藤 志織, 荒井 真木
2025 年35 巻3 号 p.
172-179
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
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弛緩部型真珠腫の進展度stage Ib 6症例に対して,外来で弛緩部膨隆部を切開してデブリを排出させた.低侵襲という見地から手術を回避できる条件を検討した.
6症例のうち5例に鼻すすり癖が認められた.5例とも鼻すすり癖中止指導を理解し実行した結果,中鼓室の陰圧は解除された.4年8か月と6年2か月,デブリの再貯留がなかった例を認めた.鼓室陰圧が解除された状態は真珠腫の進展を抑える可能性があり,長期安定すれば侵襲の少ない治療として選択しうる方法と考えられた.1例はデブリ除去では炎症がコントロールできず手術となったが,手術例でも鼻すすり癖の停止は再陥凹を予防した.
弛緩部型真珠腫症例では進展する以前に鼓膜弛緩部の陥凹が存在していた,あるいは滲出性中耳炎に罹患していた可能性がある.真珠腫予防のためには鼓膜陥凹や滲出性中耳炎の診療時,鼻すすり癖を念頭に置き,もし認めれば癖の停止を丁寧に指導することが重要となる.
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阿部 花奈子, 森田 由香, 清水 蓉子, 八木 千裕, 北澤 明子, 山岸 達矢, 大島 伸介, 泉 修司, 堀井 新
2025 年35 巻3 号 p.
180-187
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
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緊張部型真珠腫Stage II症例において,再発に関係する因子を後方視的に検討した.2009年から2020年の間に初回手術を実施した中耳真珠腫544耳中,緊張部型Stage IIは24耳であった.術後12か月以上経過観察が可能であった23耳について,年齢・性別,日本耳科学会中耳真珠腫進展度分類による真珠腫進展亜部位数,副分類(アブミ骨病変,乳突蜂巣の発育),術式と再発率の関連についてカプラン・マイヤー法を用いて検討した.再発は23耳中6耳(26%)にみられた.再発に関連した因子は年齢と術式のみで,亜部位数や副分類は再発と関連しなかった.15歳以下では16歳以上に比べ再発率が有意に高かった.術式に関して,外耳道後壁削除・乳突非開放型鼓室形成術に乳突腔充填を併用した15耳では再発はなく,緊張部型Stage IIに適した術式であると考えられた.一方,後壁を削除する本術式は小児には適応しにくいため,小児例では計画的段階手術を考慮すべきと考えられた.
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北野 雅子, 乙田 愛美, 出口 峻大, 久保 寿美, 雨皿 和輝, 鈴村 美聡, 坂井田 寛, 竹内 万彦
2025 年35 巻3 号 p.
188-193
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
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先天性真珠腫は,後天性疾患である弛緩部型,緊張部型,二次性真珠腫とは成因が異なるため,疾患としての特徴も術後経過も異なる.当科での先天性真珠腫手術症例49耳について,再発,聴力成績に影響する因子について検討した.
進展度基本分類では再発率・聴力成績ともにStage IとStage IIの間に有意差はなかったが,P進展例・M進展例は再発が多く,聴力改善の成功率も低かった.今回4耳の再形成性再発が認められた.伝音再建IV型は聴力成績が不良である報告が多いが,本検討では伝音再建I型・III型・IV型の聴力成績に有意差はなかった.
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遠藤 志織, 水田 邦博, 荒井 真木
2025 年35 巻3 号 p.
194-199
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
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難治性耳管開放症に対する耳管ピン挿入術において挿入困難例をときに経験する.耳管ピン挿入困難の原因には骨部外耳道の前壁突出,鼓膜の状態,耳管鼓室口の形状などの問題が挙げられる.耳管鼓室口は耳管周囲蜂巣の発育に伴って骨板および偽腔が形成されると狭くなることが多く,耳管ピン挿入が特に困難となる.これまで当科で経験した耳管周囲蜂巣の発育を原因とする耳管ピン挿入困難例を報告し,その対応方法について述べる.術前CT画像,術中の内視鏡による鼓室内観察が耳管鼓室口の形状評価に有効であった.また,骨板および偽腔が存在するような症例ではその偽腔に1本の耳管ピンもしくはシリコン板を形成したものを留置したうえで,その上を沿わすように実際に挿入する耳管ピンを進めることにより,適正に耳管鼓室口への挿入が可能となるものと思われた.
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文入 悠, 西山 崇経, 戎野 ちひろ, 辺土名 貢, 高原 美希, 細谷 誠, 島貫 茉莉江, 上野 真史, 北間 翼, 小澤 宏之, 大 ...
2025 年35 巻3 号 p.
200-206
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
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外耳道閉鎖症に伴う伝音難聴に対しては,日本発の軟骨伝導補聴器(CCHA)が有用である.一側性伝音難聴では,音源定位能力の低下や,騒音環境での聞き取り(雑音下聴取)能力の低下により聴覚関連の生活の質の低下が生じることがわかっている.また,音源定位能力については補聴器や人工内耳装用により改善が得られる症例も確認されているだけでなく,長期装用することで音源定位能力に経時的な改善も見込める可能性が示唆されている.今回我々は,2019年~2023年に当院を受診し軟骨伝導補聴器の調整を行っている一側性外耳道閉鎖症5例について,約3年間における音源定位能力の経時変化を後方視的に検討した.全症例で,CCHA装用下ではある程度良好な音源定位能力が得られたことから,音源定位におけるCCHAの有用性が示唆された.さらに,特に装用頻度の多い症例では,CCHAの長期装用によって装用下での音源定位能力が経時的に改善しており,長期装用に伴う学習効果も示唆された.
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野村 有理, 小林 俊光, 大島 英敏, 髙井 俊輔, 香取 幸夫
2025 年35 巻3 号 p.
207-213
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
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拍動性耳鳴は全耳鳴の10%以下であり,海外の文献ではS状静脈洞の骨壁異常に由来するものが最多と報告されているが,本邦での報告はまだ少ない.今回,S状静脈洞骨壁欠損(sigmoid sinus dehiscence: SSD)による拍動性耳鳴の4例が手術で根治しえたので報告する.内訳は,男性1例,女性3例,全例が片側の拍動性耳鳴を主訴に当科を受診し,側頭骨CTにて患側S状静脈洞の一部に骨壁欠損が疑われた.全例が患側の頸部圧迫で拍動性耳鳴が減弱または消失した.外耳道内注水試験を施行した1例では,注水後に速やかに拍動性耳鳴が消失し,水を排除すると復活した.手術は全身麻酔下に耳後切開で乳突削開術を行い,S状静脈洞の骨壁欠損部位を確認し,同部位を骨パテで被覆した.全例,術直後より拍動性耳鳴は消失し,その後も経過良好である.SSDは手術にて根治が期待できる疾患であり,日常診療における拍動性耳鳴の鑑別として重要である.
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坂井田 寛, 北野 雅子, 乙田 愛美, 出口 峻大, 久保 寿美, 雨皿 和輝, 鈴村 美聡, 竹内 万彦
2025 年35 巻3 号 p.
214-221
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
ジャーナル
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聴器癌は希少癌であることもあり,施設によって治療方針が異なる.本研究の目的は,2004年から2022年までの19年間における当科での聴器癌の臨床像および治療成績を検証することである.対象は,聴器癌に対して根治治療を行った27例29耳(男性10例,女性17例,年齢44~86歳,中央値64歳,両耳例2例)である.全例が外耳道原発で,扁平上皮癌が90%を占め,腺様嚢胞癌,基底細胞癌と続いた.扁平上皮癌T1およびT2に対しては側頭骨外側切除術を基本とし,T3およびT4に対しては化学放射線療法を行った.外耳道扁平上皮癌26耳の5年疾患特異的生存率は81%であり,内訳は,T1およびT2の23耳が78.8%,T3およびT4の3耳が100%であった.側頭骨外側切除を施行した症例の40%で中鼓室あるいは乳突蜂巣において断端陽性となり,断端陽性例の5年生存率は42.9%であった.術前画像評価で乳突蜂巣伸展を過小評価していたと考えられ,術前の手術適応の評価が重要と考えられた.
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木村 優介, 鴫原 俊太郎, 野村 泰之, 大島 猛史
2025 年35 巻3 号 p.
222-228
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
ジャーナル
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電子付録
上半規管裂隙症候群は1998年にMinorらによって報告され,上半規管を覆う頭蓋底の骨が欠損するために圧変化や強大音により誘発されるめまい,自声強聴,耳閉感,耳鳴などの臨床症状を呈する疾患である.われわれは,上半規管裂隙症候群に対して,経中頭蓋窩アプローチで裂隙閉鎖術をおこなった7カ月後に誘因なく症状の再発があり,経乳突アプローチによる再手術では上半規管の膨大部側に裂隙の拡大を認め,再度閉鎖術をおこない症状の改善を認めた症例を経験した.裂隙閉鎖術後の症状再燃を減らすために,アプローチ法によらず,裂隙をPluggingする際は上半規管の頂点の裂隙部のみを閉鎖するのではなく,裂隙の前後を追加で削開して裂隙の膨大部側,総脚側を充填することが重要である.また,Resurfacingの際は吸収されない材料を用いることでより確実に裂隙を閉鎖できる.しかしながらこの操作が聴覚,前庭機能障害を誘発するリスクを考え,水中下での上半規管の削開,裂隙の充填を行うなど内耳障害リスクの軽減を図る手法を取り入れることが望ましいと考える.
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神田 幸彦, 佐藤 智生, 小路永 聡美, 熊井 良彦, 髙橋 晴雄
2025 年35 巻3 号 p.
229-236
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
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一側性感音難聴(SSD)の小児で人工内耳手術(CI)を施行し8年が経過した症例を報告する.9歳時にムンプスに罹患し左耳が完全に聾となった.患者,家族の強い要望によりCIを検討.日本では未承認であるため長崎大学病院で臨床試験に登録し,長崎大学病院倫理委員会に申請.より自然な聴こえを目指し31 mm長の電極「Flex Soft」を選択,2017年手術施行した.音入れから8年経過したがCIで両耳聴効果が得られ雑音下語音明瞭度も改善した.音の方向性も良くなり耳鳴もCIにより消失した.8年の経過中,装用時間が短い時期もあったが,調整と指導により一日12時間以上の装用が可能となった.小児は進級,授業や部活動,騒音環境などで様々に生活環境が変化する.小児のSSDにおけるCIの目標や難しさは,できるだけ正常耳に近い性能を保つことであり,慎重な経過観察,適切な機器調整と丁寧なリハビリテーションが重要である.
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諏訪園 壮, 中村 雄, 髙橋 邦行
2025 年35 巻3 号 p.
237-242
発行日: 2025年
公開日: 2026/04/09
ジャーナル
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人工内耳手術は蝸牛に侵襲的な手術であるが,術後に聴力閾値が温存される症例と上昇する症例が存在する.本検討では,当科にて人工内耳植込術を施行した115例(124耳)のうち,手術前に低周波数(125, 250, 500 Hz)のいずれかで残存聴力を認めた46例(46耳)を対象とし,人工内耳植込術後の各周波数の聴力閾値の変化,低周波数帯域の聴力温存率,低周波数帯域の聴力温存に関与する因子の検討を行った.その結果,術前と術後1年目では125 Hz以外の全周波数にて聴力閾値が有意に上昇していた.また,低周波数帯域の聴力温存率は54.4%であった.低周波数帯域の聴力温存に関与する因子として,単変量解析では低侵襲手術(Round Window Approach)を行った群,straight lateral wall電極の群,手術時にステロイド投与を行った群で有意に良好な聴力温存が認められた.多変量解析では有意差は認められなかった.
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