慢性期病棟に入院する高齢患者における食事動作自立に関連する因子とカットオフ値を横断的に調査した。当院慢性期病棟に新規入棟した166人を分析対象とし、年齢、性別、要介護度、診断名、チャールソン併存疾患指数、体格指数、右足下腿周径、機能的自立度評価法、Cognitive Test for Severe Dementia(以下、CTSD)、改訂長谷川式簡易知能スケール、認知症行動障害尺度、障害高齢者の日常生活自立度を調査した。結果、食事自立の可否に関連する因子としてCTSDが選択された。食事自立には認知機能が関連する可能性が示唆され、CTSDのカットオフ値(26/27点)をもとに作業療法介入の方針を検討することに役立てられることが示唆された。
本研究では慢性期病棟に入院した高齢患者における食事自立に関連するN式老年者用精神状態尺度の下位項目とそのカットオフ値を明らかにするため横断的調査を実施した。対象者166名を食事自立群と非自立群に分類し、食事自立の可否に関連する因子およびカットオフ値を算出した。ロジスティック回帰分析の結果、「家事・身辺整理」と「記銘・記憶」が有意な因子として選択された。Receiver Operating Characteristic Curve(以下、ROC)曲線では、「家事・身辺整理」のカットオフ値は3.0点(Area Under the Curve(以下、AUC):0.81)、「記銘・記憶」はカットオフ値が7.0点(AUC:0.82)であった。さらに、多変量ROC曲線の結果、AUCは0.86であった。以上の結果から、「家事・身辺整理」と「記銘・記憶」は、食事動作自立の可否を判断する有効な指標であることが示唆された。
本報告では、麻痺手に対して悲観的な認識をもつ慢性期脳血管障害(Cerebral Vascular Disorders;以下、CVD)患者に対し、人間作業モデル(Model of Human Occupation;以下、MOHO)を基盤とした作業療法を実施し、その臨床有用性を検討した。対象は80歳代女性の慢性期CVD患者。MOHOに基づく評価を実施し、課題指向型アプローチを含む作業療法を3ヶ月間実施した。結果、対象者の麻痺手に対する認識が改善し、食事・整容・洗濯といった日常生活場面での麻痺手の使用が促進された。MOHOに基づくアプローチは、麻痺手に対する主観的経験や価値観を理解し、作業を通じた肯定的な意味づけの再構築を促す上で有益であることが示唆された。