超伝導体表面の性質が重要な問題となるジョセフソン素子のトンネルバリアの作成過程をとり上げ,その評価に光電子分光がいかなる役割を果たすことができるかを述べる.光電子分光,特にXPSは,バリアの厚さに相当する程度の深さ領域の組成,膜厚および膜質を非破壊的に測定することが可能で,バリア層の評価には最適な手段の一つであることを示す.ここではPb合金, Nb, Nb
3Sn, およびNb
3Ge表面の酸化過程を中心にとり上げ,表面酸化膜の組成,膜厚,膜質などを明らかにするとともに, Nb
3Geの表面酸化で明らかになった,接触ポテンシャルとイオン化ポテンシャルを用いた酸化モデルは,そのほかの超伝導体表面の酸化機構も統一的に説明できることを示す.
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