金属蒸着膜とカルコゲン蒸着膜との常温固相反応によるカルコゲン化物の成長と転移の機構を,高分解能透過電子顕微鏡観察および格子像の計算機シミュレーションと光回折によって明らかにした.金属原子の拡散によって,その金属のカルコゲン化物がカルコゲン膜中に成長し,それは次々とより低次のカルコゲン化物にと転移していく.その際これらの結晶格子の間には決まった方位関係と原子面の接合関係が存在する.カルコゲン化物の中には,金属原子が格子間に面状に析出するのが見られ,それらの面はしばしば,一定の間隔で配列している.転移はカルコゲン副格子の伸張,層間すべりなどによって起こる.これらの概要をCu-Se, Ag-Te系を例にして紹介する.
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