この1年間,インパクトの大きな新超伝導物質の発見はなかった.新物質開発は非Cu系酸化物へと方向転換する兆しが見え始めている.一方,高温超伝導機構解明を目指した物性研究,理論研究は,飛躍こそないものの,その理解に向けて着実な歩みを続けている.多様なスペクトロスコピーを駆使した研究により,高温超伝導体の電子構造は,ほぼその輪郭を明らかにした.さらに,その内部にメスを入れるべく,中性子散乱や核磁気共鳴の実験が超伝導相におけるスピンあるいは磁気的揺らぎの役割の解明に迫りっっある.理論も,機構解明までには距離があるものの,常伝導相の物性に関して,実験による検証が可能なモデルが出されるに至った.
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