誘電体に加わるひずみの効果について,第一原理計算によって考察した.高誘電体SrTiO
3では基板との格子定数の違いなどから,ひずみが加わることによって内部イオンの受ける力が変化し,格子振動の様子が変わる.特にソフト化にかかわるモードの振動数変化は大きな意味をもち,誘電率の変化へとつながる.高誘電体 (Ba, Sr) TiO
3においては,小さなひずみでも誘電率の変化は非常に大きく,面内圧縮応力などを人為的に制御できれば大きな誘電率の上昇をもたらすことになる.一方,強誘電体BaTiO
3では,ひずみが加わることで内部イオンの変位量が変化する.分極量に変化が生じることで,導入されたひずみによるエネルギー上昇の一部を補償する.SrTiO
3基板上に作成したSrRuO
3/BaTiO
3/SrRuO
3キャパシターでは,計算によると,分極量は45μC/cm
2に達する.この大きな分極量は最新の実験における最大値とよく一致している.
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