応用物理
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72 巻, 9 号
『応用物理』 第72巻 第9号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
総合報告
  • 杉井 寿博
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1121-1129
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    MOSトランジスタの動向や課題をまとめ,現状の性能や今後に向けて検討中の結果を紹介する.90nmノードでは従来の材料で細心の注意を払ってスケーリングを行うことで,期待される高性能化を実現できる.しかし,65nmノード以降では高誘電率ゲート絶縁膜やひずみSiなどの新しい材料,効果による性能向上が必要になる.このことはスケーリングによる世代交代というムーアの法則が成り立ちにくくなり,アプリケーションにドライブされた新技術の導入となる.したがって,市場に出る時期はアプリケーションによって決まり,従来使われてきた半導体技術ロードマップの意味合いが薄れていく.

解説
  • 水野 智久
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1130-1135
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    現在,数十ナノ領域での超高速CMOS素子として注目されている,ひずみSiチャネル構造を有するSOI-CMOS素子技術について解説する.この構造はSOIおよびひずみSiの両構造の高速性の利点を兼ね備えているものである.その電子および正孔の移動度が,従来素子と比較してそれぞれ1.85倍および1.53倍もの高性能性を達成することにより,CMOS回路の高速化を実証できた.また,ひずみSOI-CMOS素子固有の設計法,新たなひずみSOI技術についても述べる.

  • 久本 大
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1136-1142
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    プレーナ技術によるシリコンの微細加工に支えられてきたCMOSデバイスの高性能化は,数々の物理限界要因を迎えるようになってきた.こうした状況にあって,最近,MOSFETのチャネルにフィン(Fin)型構造を用いたFinFETが注目されてきている.これは,チャネルに立体構造を用いることで,チャネルの制御性を高め,また,大きな電流駆動力が得られるためである.このフィン型チャネル構造は,現在のLSIで用いられているプレーナ技術により形成できるため,今後のCMOS性能向上を図るうえで,重要な素子となることが考えられる.ここでは,デバイス構造や特性について,この構造が選択されてきた背景とともに紹介する.

  • 丹羽 正昭
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1143-1150
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    次世代MOSFETのゲート絶縁膜として期待されている高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜について,そのニーズ,開発状況と課題について解説する.はじめにMOSFETの特性向上に必要な項目を整理したうえで,high-k ゲート絶縁膜開発の現状と課題について,形成方法の選択,酸化膜換算膜厚(EOT)の低減,耐熱性向上について概観する.特に,現在注目されているHfシリケート膜を用いたトランジスタ特性について,移動度劣化,しきい値の経時変化,信頼性といった現在直面する本質的な課題を取り上げて検討し整理するとともに,今後どういう方針で取り組むべきかについて議論する.

  • 工藤 一浩
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1151-1156
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    有機薄膜トランジスタは,その軽量,柔軟性,低コストといった特長から,情報タグ,スマートカード,シートディスプレイといった携帯用電子機器への応用が期待されている.また,最近ではアモルファスシリコンに匹敵するキャリア移動度をもつ有機材料の報告,さらには有機トランジスタを用いた集積回路やディスプレイ素子の試作例が発表され,広い範囲での応用研究が注目されている.本稿では,有機材料を能動層として用いたトランジスタにおける最近の研究動向と課題,および今後期待される応用分野について述べる.

研究紹介
  • 外園 明
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1157-1161
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    低温スパイクアニール,イオン注入,およびオフセットスペーサーの各条件を最適化することにより,低抵抗,かつ極浅の拡散層を形成し,微細化とともに問題となる短チャネル効果を改善した.また,多結晶シリコンゲルマニウム(poly-SiGe)ゲート電極と,ニッケル(Ni)サリサイドプロセスを用いることで,低温スパイクアニールの条件下においてもゲート電極中のドーパントの高活性化を実現し,ゲート電極の空乏化を抑制することで,高性能14nmゲート長CMOSを実現した.

  • 大崎 明彦
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1162-1166
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ULSIの配線において,低抵抗化,低容量化が要求される背景をロードマップに基づいて検討し,Cu/low-k 導入の効果を示した.しかし,今後の微細化(スケーリング)を進めていくうえで,Cu配線では,高精度化と信頼性上の課題に対処する必要がある.一方,low-k 膜に関しても,配線への適合性の点で種々の課題があり,一例として機械的強度の劣化に伴うはく離の問題を示した.これらの問題を解決するには,Cu/low-k 材料に対する構造的,微視的な理解と,それに基づいた配線の構造設計が不可欠である.

  • 平本 俊郎
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1167-1170
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    シリコンMOSFETをナノスケールまで微細化すると,電子の波動性に起因した量子効果が室温でも発現する.この量子効果を積極的に利用してデバイス特性を制御する試みについて述べる.チャネル幅が10nm以下の極狭チャネルMOSFETにおいて,pチャネルおよびnチャネルの両方で量子閉じ込め効果によるしきい値電圧の上昇を観測した.これは,量子効果によりしきい値電圧が制御可能であることを示している.また,極狭チャネルMOSFETでは,チャネル方向に移動度が大きく依存し,〈100〉方向チャネルにおいて移動度が大きくなることを計算により示した.量子効果の積極利用は,各種微細化障壁を打破する可能性を秘めている.

  • 高田 昌樹, 坂田 誠
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1171-1175
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    放射光粉末回折実験によるデータをマキシマムエントロピー法により解析し,新規ナノ物質の電子密度レベルでの精密な構造を明らかにしてきた.金属内包フラーレンでは,金属原子がフラーレンケージに実際に内包されていることだけでなく,金属原子からの電荷移動の様子や,金属原子のケージ内での動的振る舞いについても明らかにすることができた.また,集積型金属錯体のナノチャネル構造に吸着した酸素分子が,チャネル構造内で一次元の配列構造をとることを明らかにした.マキシマムエントロピー法についても,簡単に紹介する.

技術ノート
基礎講座
  • 宮原 一紀
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1180-1182
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    SFQとは超伝導体の中で量子化された磁束のことである.この磁束量子を情報担体とした論理回路がSFQ回路である.SFQ回路は半導体回路とはまったく異なる原理で動作する.そのため,半導体回路の性能限界を超える可能性がある.SFQ回路の基本構造は,2個のジョセフソン接合を含む超伝導ループである.このループに磁束量子が入った状態を論理の「1」,磁束量子が入っていない状態を「0」とする.この基本構造を多数個接続すると,超伝導体とジョセフソン接合で構成されるはしご型線路ができる.これがJTLで,この中を磁束量子を伝搬させることができる.これを組み合わせるとフリップフロップをはじめとする種々のSFQ論理回路を形成することができる.

  • 杉江 利彦
    2003 年 72 巻 9 号 p. 1183-1189
    発行日: 2003/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    今日までの光通信技術とこれからの展望について,光ネットワークの特徴と主要技術を中心に,コア,メトロ,アクセスの各観点から概説する.光ファイバーを用いた通信システムの主な伝送性能規定要因を,システム構成要素の特性と関連づけて説明する.コアネットワークでは,システム容量の拡大のカギとなった主要技術,現在の到達点と今後の展開に必要な技術についてまとめた.アクセス・メトロネットワークでは,最近のIPサービスなどのサービスの多様化に向けたシステムや経済化,WDMの活用など今後の方向性について記述する.

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