本稿では,光ファイバー型デバイスについて,受動型,能動型,非線形型に分類して現状を紹介する.受動型光ファイバーデバイスとしては,光ファイバーカップラー,偏光素子,フィルター,およびグレーティングを紹介する.能動型光ファイバーデバイスについては,希土類ドープ光ファイバー増幅器・レーザーの現状を報告し,非線形型光ファイバーデバイスとしては,光ファイバーラマン増幅器,スイッチ,波長変換器,パラメトリック増幅器およびスーパーコンティニウム光源についての最近の研究を紹介する.最後に,光ファイバー型デバイスの今後の展望を述べる.
石英ガラス中に高強度の光を入射すると,入射光の電場の2乗すなわち強度に比例して,その屈折率が変化する.これは,3次の非線形現象で光カー効果と呼ばれる.石英系単一モード光ファイバーはコア直径が数 μmから10 μmと小さいため,コア内に閉じ込められるレーザー光のパワー密度が非常に高く,容易に3次の非線形現象を起こすことができ,その屈折率変化はフェムト秒オーダーの高速応答性をもつ.光ファイバー,特にファイバーブラッグ回折格子(FBG)中に生じる高速な非線形効果を積極的に利用することによって実現できる,ファイバーブラッグ回折格子応用光機能デバイスについて解説する.
光通信システムの高速化・大容量化に伴い,そこに用いられる光デバイスには非常に高い性能が要求されるようになってきている.これを実現するためには,デバイスが要求する性能に合わせて,使用する光ファイバーの最適設計を行う必要がある.本稿では主として,光通信分野で用いられている光ファイバー型デバイスに焦点を当て,そこに用いられている光通信デバイス用光ファイバーの開発の現状について概説する.
本稿では,フォトニック結晶ファイバー(PCF)およびフォトニックバンドギャップファイバー(PBF)と呼ばれる新たなファイバーの伝搬原理とその特徴ならびに応用について述べる.PCFはクラッドに数 μmの空孔を設けることにより等価的に屈折率を下げ,光を導波する.このファイバーは横モードが波長に依存せず単一であったり,ゼロ分散波長が可視光にまで及んだり,あるいはモード径を著しく変えることができる.一方,PBFはクラッドばかりでなくコアにも空孔を設け,二次元のブラッグ反射により導波する.空孔の精密な制御が必要であるが,コアが空気であるため,光学非線形が抑制されたり,低分散になったり,高強度の光を伝搬できる可能性がある.
機能集積・小型化を目的として,SiO2系光導波路デバイスを試作した.回折格子チャネル導波路,凹面ミラーを約5×9mmのスラブ導波路基板内に埋め込んだ分波デバイスを作製し,20nm間隔,4チャネルの分波動作を確認した.さらに,回折格子の入出射端面を傾斜させることにより,従来の平行平板の回折格子に対して,約4.5倍の角度分散を得た.また,光誘起ブラッグ格子の形成やアサーマル化に適した導波路用新材料を探索した.
検知対象ガスに選択的に膨潤するポリマーなどを用いて,プラスチック光ファイバー(POF)のクラッド層をセンシング機能化し,かつ,その構造を漏えい・導波変換型にすると,速い応答と高い感度をもった光センサー素子として動作する.このPOF型センサー素子を用いると,センシングシステム全体が簡単かつ安価に構成でき,蒸気状態アミンや種々のアルコール濃度,身近な環境の燃料ガス漏れ,実時間湿度測定などが可能となる.
リング共振器型波長フィルターは,小型平面光回路として単純な構成,縦続接続による集積化,波長可変性などの特長をもつが,一定共振波長間隔(FSR)のくし型の透過スペクトルとなるため,波長多重信号の合分波には広いFSRが必要となる.FSR拡大のためリング径を小さくすると曲げ損失が増加する.筆者らが提案した多数の伝搬経路を有する二重リング共振器(MPRR)構造は,異なる周長の二つのリング共振器を二つの結合器で結合するもので,リング径を小さくすることなく,実効的なFSRを拡大できる.透過特性解析の結果,単リング共振器や他のリング共振器と比較して,MPRRは低い帯域外漏えい量(クロストーク),広帯域,より箱型の伝達関数という良好な特性を示した.
光ファイバーセンサーは広範囲に分布する量の測定が可能であるという特徴を有している.本稿では,光ファイバーセンサーの手法を用いて音場を測定する方法について解説する.まず,測定すべき音場の周波数範囲,音圧範囲などを述べたうえで,光強度変調型,干渉型,光波長変調型などの代表的な測定原理とそのアレイ化手法を説明する.低周波用の空気中,水中アレイ,MHz超音波用の微小センサーを紹介する.
情報のデジタル化とともに,紙にプリントされたハードコピーは情報表示媒体の一つとして重要性が高まっている.しかし,その大部分は一時的な使用であるため,書き換えて何度も使用できるプリントシステムの必要性が指摘されている.われわれは,ロイコ色素の可逆発色を利用し,コントラストの高い高品質な画像が形成でき,500回以上書き換え可能な“リライタブルペーパー”を実用化した.これは,ロイコ色素を発色させる酸性化合物(顕色剤)に長鎖構造をもたせることにより,分子集合構造に規則性を付与し,発色消色を熱的に制御するものである.この可逆発色分子システムでは,長鎖構造の強い分子間凝集力が,安定な発色と高速な消色の両立を可能にしている.
有機非線形材料は,大きな非線形性と高速応答性への期待から多くの研究がなされてきた.また,非線形光デバイスがスピンコーティング,フォトブリーチング,エンボスなどの低コスト・低温プロセスで作製されうることからも注目を集めている.われわれは,非線形高分子を用いた進行波型光変調器を研究してきた.本変調器は簡単な伝送線路を用いて速度整合が可能で,広帯域性が得られる.入出力光ファイバーを正確に低コストで接続するためのファイバー保持機構が,変調器端部に一体化して設けられている.この広帯域変調器について報告する.
半導体レーザーによる光パルス発生は,その簡便さ,融通性からさまざまな高精度計測用途が期待されてきたが,タイムジッターなどパルス品質が不十分なため利用が広がっていなかった.本稿では,繰り返し周波数などの動作の柔軟性を維持しつつ,タイムジッターを低減した光パルス列を得る手法について紹介する.出力されたパルスのごく一部を特定の条件でレーザー自身に帰還することで,利得スイッチングによる光パルス発振のタイムジッターをピコ秒以下に簡単に抑圧できる.さまざまな繰り返し周波数で安定な帰還条件を得られる光パルス帰還可変回路を付属したコンパクトな半導体レーザーモジュールも試作されているので,あわせて紹介する.