光を用いた単一分子計測は新しい研究分野である.80年代後半から90年代前半にかけて種々の方法が開発されて現在に至っている.その勃興期から成長期を経て,現在に至るまでの流れを筆者らの専門の視点から解説した.特に,集団平均の測定では得ることができない情報が得られるという単一分子計測の一般的な特長に加え,スペクトル計測を通じて化学分析の手段として実用化を目指す筆者らの立場を明示した.
最近の放射光技術の進歩により,100psオーダーの時間分解能でX線結晶構造解析を行うことが可能となってきた.この方法とフェムト秒レーザーと組み合わせたポンプ・プローブX線回折実験は,強相関系物質の光誘起相転移現象や光反応性たんぱく質の機構解明など幅広い分野での有力な測定手段となると期待される.本稿では,これまでのポンプ・プローブX線回折実験用装置開発の現状と,それを用いた動的構造物性解析の最前線について解説する.
音響パルスを用いた画像化技術は,超音波検査やソナーなどへの応用においてよく知られているところである.われわれはこの分野の新展開として,超短レーザーパルスを用いて固体表面に高周波数音響パルス(表面弾性波パルス)を発生させ,その伝播過程を実時間でイメージングする技術を開発した.別のレーザーパルスをプローブとして用いて試料表面を走査することにより,原子の直径よりも小さな振幅の格子振動を固体表面において観測する.発生される表面弾性波パルスの波長はミクロンオーダーで,その周波数は GHz にまで達する.この技術を用いることにより,結晶表面やマイクロ構造をもつ物質表面を伝播するコヒーレントフォノン波束のダイナミクスを時間および二次元空間領域で追跡する.
非蛍光性分子を超高感度に検出するという課題は,分析化学のみならず計測技術という観点からもきわめて重要である.現在では,蛍光性分子であれば単一分子検出が可能であるが,非蛍光性分子を単一分子レベルで検出するのはきわめて難しい.本稿では,非蛍光性分子を単一分子レベルで検出できる能力をもつ熱レンズ顕微鏡の原理と性能,応用例などを解説し,デスクトップ熱レンズ顕微鏡とパームトップ熱レンズ検出デバイスについて紹介する.
次世代の高密度光ディスクとしてNA=0.85のレンズを用いるシステムが登場している.このような高NAシステムでは高次収差の発生が避けられない.ピックアップ組立時の収差補正を前提として,低次の収差発生を許容し高次収差を抑制した,高NAシステム用の非球面単レンズの設計を紹介する.また,樹脂レンズの使用可能性についても概説する.
蛍光X線イメージングは,元素の空間分布を画像として得る技術である.シンクロトロン放射光微小ビームを用いた高空間分解能の走査型イメージングはすでに先端的な科学ツールとして,物質・材料科学,環境科学,ライフサイエンスなど,広範な分野で活用されている.最近,走査を必要とせず,ワンショットで撮像できる投影型(非走査型)の技法が注目を集めるようになった.この技術には,高画素数の画像を高速に取得できる利点がある.長らく静止画が当たり前のように考えられていた元素マッピングにおいて,いまや動画が実現されているほか,さまざまな高付加価値の高速イメージングが登場している.本稿では,最近の進歩について述べる.
蛍光X線イメージングは,元素の空間分布を画像として得る技術である.シンクロトロン放射光微小ビームを用いた高空間分解能の走査型イメージングはすでに先端的な科学ツールとして,物質・材料科学,環境科学,ライフサイエンスなど,広範な分野で活用されている.最近,走査を必要とせず,ワンショットで撮像できる投影型(非走査型)の技法が注目を集めるようになった.この技術には,高画素数の画像を高速に取得できる利点がある.長らく静止画が当たり前のように考えられていた元素マッピングにおいて,いまや動画が実現されているほか,さまざまな高付加価値の高速イメージングが登場している.本稿では,最近の進歩について述べる.
内部電場の空間変動を考慮しない長波長近似(LWA)は,ナノ系光学応答を解析するうえでの標準的手法であるが,電子的励起状態が高いコヒーレンスを保つ高品質な試料では,ナノスケールであってもこの手法の枠内で捉えきれない光学応答が現れる.そこでは内部電場のナノ空間構造が顕在化しており,これと物質波動関数の空間構造とのインタープレイが非線形応答や輻射緩和過程に複雑な試料構造依存性をもたらす.本稿では,このことから現れる光学応答の非LWA的側面と,それを積極的に利用した光機能デザインの可能性を論じる.
金属微粒子の可視光領域における共鳴散乱を記述する簡便な経験式を導いた.これは球について導かれたMie散乱公式の球以外の形状への一般化にあたると考えられる.金属ナノ粒子の光学的性質は,応用上多方面から興味が寄せられているが,精密な数値計算を行う前の予備的な考察に,このような経験式は大いに有用である.
十分発達したレーザースペックル場の波面はまったくランダムとなり,位相の統計が物体表面の構造や用いる光学系のパラメーターによらずきわめて安定した統計的特性をもつ.統計干渉法はスペックル位相の確率密度関数が一様になることを位相決定の基準として利用する原理的にまったく新しい干渉計測法である.本方法の利点は従来の確定的な干渉法と異なり,その精度は用いるデータ点数のみに依存して容易に高精度を実現可能なことである.本研究では,環境汚染が植物に与える影響の観測手段の開発を目指して,本干渉法を植物の生長計測へ応用した.また,実験によりその有効性を示した.
光ネットワークを支える光計測技術として,保守用途に用いられるOTDR技術や光デバイス特性の分析に使われる分光技術に関する基礎と現状について概説するとともに,100Gbpsを超える将来の超高速信号の評価技術を紹介する.