応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
73 巻, 8 号
『応用物理』 第73巻 第8号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
特集の意図
特集
  • 高辻 正基
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1042-1049
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    文理シナジーについて説明したあと,応用物理学と文理シナジーとの関係について一般的な考察を行った.応用物理学の一つの方向として,広義の生物工学や‘ヒューマンテクノロジー’などの境界・学際領域の方向に守備範囲を拡大し,さらに生産サイドばかりでなく消費サイドにも目を向けることが大切になるだろうと指摘した.応用物理による農業の工業化の実例として,LED利用の植物工場の場合について議論した.

  • 小林 信一
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1050-1056
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    バイオ,ナノテク研究の本格化に伴って,従来とは異なる研究活動の進め方が登場している.とくに欧米の大学では,「戦略的融合研究」ともいうべき研究活動,すなわち大学の総力をあげて多分野の協力で研究を進めるスタイルが登場している.この背後には,国際化時代における大学のプレゼンスの確保,ファンディングの変化への対応,研究活動そのものの変化などの要因がある.日本においても,そのような変化の兆しがみられる.

  • 鳥海 光弘
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1057-1059
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    平成16年度から始まった国立大学の法人化は研究と教育にとって大きな影響を及ぼすことは必至である.法人化と前後して大学の再編が押し進められ,東京大学でも全研究科および研究所の支援により,新領域創成科学研究科が平成10年に発足した.現在柏キャンパスに教育・研究活動を展開中である.新領域研究科は東京大学が10年がかりで構想し,学際的でかつ先端的新分野の創始をそのミッションとしてつくった新研究科で,第一のキーワードを学融合としている.新研究科をつくった基本的な動機は,過去における日本の人文社会系を含めたサイエンス全般の弱点が活動的な新分野の創出にあるとして,その展開のために先端的な東京大学のさまざまな分野の教員を一同に集めて,あらたに教育・研究組織をつくり,みずから融合分野をつくるとともに,優秀な人材を育成することにある.これは過去20年間にわたる日本におけるサイエンスに対する一つの解答であり,今後の展開の指標となるものであろう.

  • −私のナイトライド研究−
    赤崎 勇
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1060-1067
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ナイトライド半導体の結晶成長や電気伝導制御を中心とする1960年代からの筆者らの信念を貫いた地道な研究が1980年代に入って重要なブレークスルーを次々に生み,世界中の研究者を刺激するとともに,高性能青色発光デバイスの実現に導き,さらに今日のナイトライド研究開発とその関連産業の隆盛をもたらすこととなった.

  • 山中 正宣, 西田 嘉夫
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1068-1075
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    1994年に,レーザーを用いた植物工場として,「レーザー植物工場」が提案されて以降,主に10年間の「レーザー植物工場」実現に向けた技術開発を紹介する.その基礎技術として,発光ダイオード(LED)と半導体レーザー(レーザーダイオードともいわれ,LDと略する)を用いた植物栽培技術の進展について述べる.植物の成長には,光合成反応と光形態形成がかかわっている.特に,発光波長とその構成比,光強度,パルス照射時間が及ぼす植物の高速生育と栄養学的解明もなされつつある.さらに,光触媒を利用した植物工場内での抗菌防黴(かび)効果が付加技術として今後有用と考えられる.

  • −電気二重層の直接観察を通して−
    最上 明矩
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1076-1080
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    電気二重層キャパシターEDLCは,電気エネルギーの保存とバッファー用途の本命素子として期待され,特に蓄電エネルギー密度の向上は焦眉の研究課題である.核磁気共鳴法による電気二重層の直接観察を手段にEDLCの正体に迫り,新たな「非多孔性炭」電極材料および電解質を総合的に解析した.多孔質活性炭に比べ6倍のエネルギー密度のEDLC,ナノゲート・キャパシターを開発した.そこでの蓄電メカニズムは,電解質イオンの非ファラディックな共溶媒挿入であることが確認された.

  • 小原 賢信, 坂井 友幸, 野田 英之, 神原 秀記
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1081-1086
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    1990年に開始された“ヒトゲノム解析計画”はキャピラリーDNAシーケンサの実現により予想を上回る速度で進展し,2003年にはヒトゲノムDNAの塩基配列の完全解読が発表された.高速なキャピラリーDNAシーケンサの実現には,ゲル電気泳動を高速化し解読塩基長を長塩基化することと,多数のキャピラリーに対する高感度な同時多色蛍光検出光学系を開発することが大きな課題であった.本稿では,DNA塩基配列決定法の原理から始め,特にこの電気泳動および蛍光計測に関する研究経緯について解説を行う.あわせて現在研究されている新しい原理に基づいたDNA塩基配列決定法についても述べる.

  • 幾原 雄一, 中村 篤智, 松永 克志, 山本 剛久
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1087-1094
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    転位の分布・形状・組成を制御することによって,結晶中に高密度あるいは周期的に配列した直線状ナノ細線を作製できる新しい量子構造設計について概説した.対象として,絶縁性の高いサファイアおよびイオン伝導体のYSZ単結晶を用い,高温圧縮試験による高密度転位の導入,およびバイクリスタル作製による粒界転位の周期性の制御を行った.また,作製された各試料の電気伝導性およびイオン伝導性を測定し,本手法によって種々の結晶に新しい機能が付与できることを示した.

  • 八木 透
    2004 年 73 巻 8 号 p. 1095-1100
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ハイブリッド型人工網膜は失明者の視覚を再建する人工臓器である.体内に埋植されるMEMS(Micro-Electro-Mechanical System)と体外装置から構成され,MEMSの電極上に神経細胞を付着させて体内に埋植する.そして末しょう神経線維を用いて,電極上に付着させた神経細胞の軸索を高次中枢へ誘導してシナプスを再形成させ,MEMSと高次中枢との機能的接続を実現する.接続が完了すれば,電極から送られる電気信号に応じて神経細胞は中枢へ信号を伝達することができ,より多くの失明疾患に対して適用できることが特徴である.

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