MEMS(微小電気機械システム)は,集積回路製造技術を発展させたマイクロマシニングと呼ばれる微細加工技術を基本にして,シリコンチップ上などに高付加価値のシステムデバイスを作る技術である.シリコンのリング回転子が静電力で浮上する回転ジャイロなどの慣性センサー,マルチプローブのデータ記録装置やマルチ鏡筒電子線描画装置のような配列構造のアレイMEMS,ワイヤレス機器用のオンチップフィルターやリレーのようなRFMEMS,極端に高感度なセンサーとしてのマイクロ・ナノプローブなどを開発してきた.MEMS実用化のカギを握る新プロセス技術,効率のよい研究開発や試作環境が課題である.
不揮発性半導体メモリーについて,今後どのような不揮発性メモリーを開発すれば日本の半導体産業の将来が明るくなるかのヒントを示すことを目指して解説した.そのために,メモリーの開発に最も重要なことは性能でなく,必要十分な性能を満足したコストであることを,筆者が開発したフラッシュメモリーを実例としてあげた.そのうえで,今後最も有望な不揮発性半導体メモリーは,従来から発表されている各種メモリーを検討した結果,SGT構造をもつフラッシュメモリーであることを述べた.
携帯電話をはじめとする800MHz〜5GHz帯でのRF信号処理にSi CMOS集積回路が用いられているが,コンデンサーやインダクターなどの受動素子特性が回路性能に大きく影響する.Si基板上の受動素子技術の最近の研究を紹介し,RF回路の性能向上のためには,可変受動素子技術が今後重要になっていくことを述べる.
広範囲な個別認識応用に向けて,0.4mm角の超小型無線認識(RFID)ミューチップを開発した.このチップの厚さは0.06mmであり,有価証券や各種金券などの紙媒体に適用することを考慮している.適用した半導体プロセスは0.18µm CMOS技術であり,配線総数は3層である.チップ内の128bitのメモリーデータを2.45GHzのマイクロ波で読み取ることができる.最小チップ動作電圧は0.5Vである.このチップは薄型の外付けアンテナに異方導電性接着剤(ACF)にて接続される.今回はさらに,0.4mm角の超小型アンテナを内蔵したミューチップについても述べる.
コンピューターは,さらにダウンサイジングして小さな端末となり,あらゆるものに埋め込まれる.これらを無線で相互に接続してネットワークを作れば,どこにいても,コンピューターを快適に使うことができる.このようなユビキタス社会を支える基盤技術の一つは,低電力な集積回路チップである.しかし,デバイスを微細化して高集積化すると,集積回路の電力は増大する.高性能なチップは,電力の限界に近づいている.一方で,現在のCMOS技術に代わる新しい低電力デバイスは,いまだ実用化のめどが立っていない.本稿では集積回路の低電力設計技術について,最近の研究成果を紹介して将来を展望する.
300mmウエハー量産規模が拡大しつつある現在,デバイスの高集積化および高速・低消費電力化に対応して,ウエハーの高品質化と高機能基板の開発がますます重要である.本稿では,高品質化として,まず結晶の完全性とゲッタリング能力向上を取り上げる.特に,結晶引き上げ工程の精緻な制御によってCOPの密度とサイズの制御が量産技術として確立されたこと,IG能力の最適化が進められていることに触れる.次に,ウエハー表面品質改善の例として,極微細な粗さ低減を可能にする洗浄技術を紹介する.また,高機能基板として,薄膜SOI基板とひずみSi基板の製造方法を概説し,欠陥などの品質の現状と今後の問題点について述べる.
地球温暖化問題の解決は世界的な課題である.世界の半導体業界でも,協力して温暖化ガス排出量削減の努力をしている.日本では1997年以降削減対策を進めており,除害装置の設置,エッチング工程の最適化などの対策により,温暖化ガスの排出削減効果には目覚ましいものがある.しかし,京都議定書に盛り込まれた2010年の目標値を達成するためには,さらなる努力が必要であり,将来的にはより本質的な対策が必要となる.本稿では,技術研究組合超先端電子技術開発機構で実施したプロジェクトの成果を中心に,半導体製造プロセスのドライエッチング工程で使用するエッチングガス排出量削減のための技術動向を紹介する.
Si LSIの微細化限界を打破するために,移動度の高い新材料の導入が活発化してきている.低電圧でも高速に動作する集積回路実現を目指して,新材料であるSiGeをチャネル領域に導入したヘテロDTMOSを提案し,その優位性を従来のSiと比較しながら実証した.ヘテロDTMOSのコンセプト,電気特性,低周波雑音特性,CMOSプロセス,およびリング発振器の遅延時間評価結果などについて概説した.
本稿では,ユビキタス時代の低消費電力CMOSデバイス実現に必要不可欠である高誘電率ゲート絶縁膜技術について紹介する.まず,ゲート絶縁膜として求められる要求から,高誘電率ゲート絶縁膜材料がHfSiON膜に絞られた経緯について述べる.次に,最も実用化に近い材料であるHfSiON膜の開発の現状に関して,われわれの実験結果を例に紹介する.
携帯電話用撮像素子,デジタル一眼レフカメラ用撮像素子として普及しているCMOSイメージセンサーの歴史と現状を概説する.かつてイメージセンサーといえばCCDを指していたが,低消費電力,多チャネル読み出しを特徴とするCMOSイメージセンサーの画質が向上してきた.画素回路,駆動方法の工夫などにより,最先端のCCDを凌駕する画素の微細化の可能性も提示されている.高画質なイメージセンサーには,単なる微細化技術だけではない高度なデバイスプロセス技術が要求される.新しいシリコン技術の枠組みを切り開く端緒となることが期待される.
カーボンナノチューブは,高電流密度耐性(Cuの1000倍)やバリスティック伝導,高熱伝導率(ダイヤモンド以上)などの優れた特長から,数々の電子デバイス応用が考えられている.ここでは,将来の半導体集積回路が抱える配線や放熱の問題解決を目指した,配線ビア応用のためのナノチューブの合成技術,プロセス技術に関する研究を紹介する.また,他の電子デバイス応用についても簡単に紹介する.