小型LEDチップ(320μm×320μm)を用いた白色LEDの発光効率は,定格20mA駆動で,製品レベルで70 lm/Wに達し,実験室レベルでは蛍光灯の効率を上回る113 lm/Wにまで達した.さらに,大型LEDチップ(1mm×1mm)を用いた白色LEDの定格350mA駆動での全光束は85 lmにまで高出力化された.さらに,LDを用いた新しい白色光源の開発に成功し,白色LEDよりも高輝度な光源が作製できた.GaN系LEDを用いた白色光源が従来のランプを置き換え,固体照明が日常のものになるのもそう遠い将来ではなくなった.
可視短波長LED用材料であるIII族窒化物半導体を用いて,紫外発光素子を作る試みが活発に行われている.本稿では,同材料を用いた発光素子,特にLEDの現状を概説し,可視短波長LEDに匹敵する高輝度化の実現のための基幹技術を論ずる.
可視発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)は近年飛躍的な効率の向上を遂げ,さらには光出力の向上にも開発の重点が置かれている.蛍光体変換白色LEDの発光効率は60 lm/W程度まで向上し,LED 1素子当たりの光束も120 lmを超えるものも開発されている.このような素子実現の背景には,InGaN系LED結晶成長および素子設計技術,白色LED用蛍光体技術,さらに高出力LEDパッケージ技術など,従来のLEDの概念を超えた要素技術の開発がある.本稿では,高出力LED実現に必要なこれらの要素技術と課題について解説する.また,LED出力の向上に伴い,その応用も小出力品から大出力品に拡大しつつあり,その中からLEDを液晶テレビのバックライトに初めて実用した例を紹介する.
有機EL素子は,有機半導体材料を使用する全固体型発光素子である.現在,発光効率は既存の無機半導体LED並みに高く,将来的にはさらなる高効率化も見込まれる.すでに小型ディスプレイが実用化されており,大型化を目指した研究が盛んであるが,一方,照明用ランプとしての白色発光有機EL素子の研究開発が活発になってきた.本稿では,実用化を間近に控えた照明用有機EL素子を,筆者の研究室において開発してきた素子を中心に解説する.
窒化物・酸窒化物ホスト結晶にEu2+ イオンを付活したCa -α サイアロン黄色蛍光体,CaAlSiN3 (CASN)赤色蛍光体,β サイアロン緑色蛍光体の3種類の蛍光体を開発し,それらの蛍光体と青色LEDとを組み合わせて白色LEDを試作した.これらの蛍光体は450nmの青色光で励起できることが特長である.青色LEDとCa -α サイアロン黄色蛍光体を用いて,相関色温度3080K,電力視感効率50.4 lm/Wの高効率電球色を得た.青色LED素子と前記3種類の蛍光体を用いて,相関色温度2800〜6600K,平均演色評価数Raが80以上,電力視感効率25〜32 lm/Wの高演色白色LEDを試作した.いずれも,温度上昇に対する色度安定性に優れていた.これらの白色LEDは,一般照明用途に好適であると考えられる.
GHz台で応答する光電変換素子をSi材料主体のCMOS製造プロセスに適合させるために,筆者らは近接場光を利用したナノフォトダイオードを開発した.これは,素子表面に設けたプラズモン共鳴を生じるための金属製のアンテナとナノスケールの微小な受光部とを組み合わせることで,高速性と高感度特性を両立させた光電変換素子である.これら二つの特性が両立可能な受光素子は,VLSIの配線遅延問題解決に向けたチップ内光配線導入に必要である.ナノフォトダイオードは,高機能なエレクトロニクスと高伝送容量の光配線をつなぐ基本素子として期待される技術である.
最近実現されたAlGaN系深紫外半導体レーザーの光励起による室温レーザー発振についてまとめる.AlGaNはGaNからAlNまでの広いバンドギャップを有し,紫外から深紫外域の波長域で発光可能な半導体である.新しく開発した「交互供給法」により,高Al組成AlGaNの高品質エピタキシャル結晶成長が可能になったことから,AlGaN多重量子井戸型半導体レーザーを製作し,光励起によりレーザー発振が達成された.そのときの最短波長は,室温で241nmであった.
蛍光灯代替などの一般照明用途に向けて,大光量白色発光ダイオード(Light Emitting Diode : LED)の開発が加速されているが,これらのLEDは多くの場合,輝度の不足により,自動車ヘッドランプには使用できない.数十m以上の遠方を照らすヘッドランプの特殊性から,光源に要求される最も重要な光学特性は高い輝度であり,それなくして,LEDヘッドランプは成立しない.十分な性能のLEDヘッドランプを実現するためには,LEDの輝度は少なくともハロゲン電球並みの20cd/mm2以上を実現する必要がある.試作したヘッドランプの明るさは,HIDヘッドランプと同等のレベルを達成した.
高速陽電子は,結晶に対する斥力ポテンシャルのために,結晶表面で全反射を起こさせることができる.この全反射条件における陽電子ビームの進入深さはほとんどの領域で0.1nm以下であり,陽電子は極表面からバルク内部に入り込まない.この性質を利用して,結晶の極表面の構造と物性の測定を,バルクの影響なしに行うことができる.この手法を用いたシリコン表面の構造,吸着構造,熱振動振幅などの最近の研究結果について紹介する.
不全,欠損組織・臓器の新たな治療方法として,近年,再生医療(regenerative medicine)が注目を集めている.そこで,組織工学(tissue engineering)の技術を用いて細胞から三次元的組織を再構築し,治療に応用する研究が始まっている.筆者らは,シート状の細胞を非侵襲的にマニピュレーションするための画期的な手法,すなわち細胞シート工学(cell sheet engineering)を創出し,再生治療への応用を検討している.最近では,微細加工技術を利用した新規組織再構成技術の開発にも取り組んでいる.
赤色半導体レーザーは,短波長化と高出力化を目指して研究が行われた.そのカギとなった特性値は,しきい値電流密度であったが,数百A/cm2 までの低しきい値化が達成された.ヘテロ障壁からの電子の漏れをいかにして抑制するかが課題となったが,傾斜基板効果,ひずみ量子井戸,多重量子障壁,p型クラッド層の高ドーピング化など,特性向上のための技術ポイントの解明が進み,低しきい値化に寄与した.