応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
74 巻, 2 号
『応用物理』 第74巻 第2号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
世界物理年
企画の意図
総合報告
  • 野田 進
    2005 年 74 巻 2 号 p. 147-159
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    フォトニック結晶は,光を自在に制御可能な光ナノ構造として,現在,大きな注目を集めている.周期的な屈折率分布により発現するフォトニックバンド構造のギャップ,バンド端,透過バンドのそれぞれに着目して,各種のエンジニアリングを施すことにより,さまざまな光の制御が可能となる.これらに加え,最近,導入されたフォトニック・ヘテロ構造の概念により,フォトニック結晶工学はさらなる広がりをみせている.本報告では,最近の著しいフォトニック結晶研究の進展について紹介するとともに,今後の展望について述べる.

解説
  • 大高 一雄
    2005 年 74 巻 2 号 p. 160-166
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    フォトニック結晶の表面からの光の漏れについて,その研究の発展,理論的扱い方,光応答への影響について概要を解説した.ラマン散乱,平面波光の透過,近接場の強度,自由電子からの発光スペクトル,多光子の非線形カップリングなど,漏れの大小が共鳴の大きさを通して光応答の強弱を支配することを強調した.

  • 馬場 俊彦
    2005 年 74 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    最近のフォトニック結晶の基礎特性の改善はめざましく,多くの光機能デバイスが提案,実証されている.しかし既存デバイスに対する優位性についてはまだまだ議論が乏しい.本稿では,半導体材料に形成された微細構造から成る二次元フォトニック結晶について,いくつかのデバイス応用を取り上げ,最近の実験的または理論的な研究成果を紹介しながら,この点について議論する.

  • - 特異な分散が導くもの -
    納富 雅也
    2005 年 74 巻 2 号 p. 173-179
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    近年,負の屈折という現象がいろいろな分野で興味をもたれている.本稿では,フォトニック結晶を中心にどのような機構,条件で負の屈折が実現し,どのような現象が実現されるのか解説する.また左手系メタマテリアルにおける負の屈折,鋭い共鳴線付近の負群速度領域とフォトニック結晶の負の屈折との比較を行う.いずれの場合においても負の屈折は,フォーカシング効果,真空中の光速 c より速い光などこれまでの常識を裏切る風変わりな光伝搬現象を導く.しかし,そのいずれもこれまでの物理法則を破るものではなく,従来直接調べることが困難であった強い分散をもつ媒質中の伝搬の物理の面白さが顔を出してきているのだと思われる.

  • 川上 彰二郎, 佐藤 尚, 川嶋 貴之, 井上 喜彦
    2005 年 74 巻 2 号 p. 180-185
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    フォトニック結晶の再現性,生産性に優れた作製法である自己クローニング法について,プロセスの概要・特徴,多方面の産業応用について見取り図を提供する.基板の上に凹凸パターンを作り,その上にA,B二種類の材料をスパッタデポジション・バイアスエッチングを組み合わせて交互製膜するというシンプルなプロセスによって,希望する種類の人工誘電体を設計どおりの位置に作製・異種集積することが可能であることを例証する.そのような部品の産業展開の動向を,ノンテレコム,テレコム両方にわたってレビューする.

最近の展望
  • - 極微小・超高速全光スイッチの実現 -
    浅川 潔, 杉本 喜正, 中村 均, 金本 恭三, 池田 直樹, 田中 有, 渡辺 慶規, 中村 有水, 大河内 俊介, 井上 久遠
    2005 年 74 巻 2 号 p. 186-191
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    二次元フォトニック結晶(2DPC)による極微小・超高速SMZ(対称マッハ・ツェンダー)型全光スイッチ(PC -SMZ)の研究成果を通じて,実用化に向けた2DPC導波路素子の構造制御技術を,ナノ加工および機能設計の両面から論ずる.ナノ加工面ではサイズ揺らぎと優れた透過特性の関係を述べる.機能設計面では分波/合波器を取り上げ,方向性結合器の重要性を述べる.最後に能動光素子への応用例として量子ドットを非線形媒質としたPC-SMZの超高速光スイッチ動作の実験例を紹介し,今後の展望を述べる.

  • 榎 敏明
    2005 年 74 巻 2 号 p. 192-195
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    π電子系ナノ炭素物質には,フラーレンや炭素ナノチューブのほか,ナノグラフェン(単層ナノグラファイト)が存在する.フラーレンやナノチューブが閉じたπ電子系をもつのに対し,ナノグラフェンは端の存在する開いたπ電子系を有する.任意形状のナノグラフェンの端はアームチェア型の端とジグザグ型の端から構成され,ジグザグ型の端は特異な非結合π電子状態をもち,その状態の電子は強磁性を含めた特有な磁気状態を形成する.本稿では,ナノグラフェンの作成,その構造評価とともに,特異なナノ磁性について,最近の理論,実験の結果について紹介する.

  • 上村 想太郎, 石渡 信一
    2005 年 74 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    光学顕微鏡技術の進歩によって,生体分子1個の挙動を生きたまま実時間で観察し,nmオーダーの動きやpNオーダーの力を計測できるようになった.特にこの手法は,生体運動を担う分子モーターのメカニズム解明に応用されて大きな成果をあげている.ここでは,光ピンセットを用いたミオシン(アクチン),キネシン(微小管)分子モーター研究の一断面を紹介する.

研究紹介
  • 宮嵜 博司
    2005 年 74 巻 2 号 p. 202-207
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    平行な誘電体円柱をアモルファス的にランダムに配置した系は,円柱分布が一様であれば高密度・高誘電率比の条件下で,等方的なフォトニックギャップをもつ.この系は,アモルファス電子系と異なり短距離秩序構造も必要とせず,構造的にも非常に柔軟性に富む新しい光学構造体である.本稿では,この光学構造体と周期側壁を組み合わせて任意の形状の光学素子を作製する一般的手法を提唱する.また,その具体例として,90度曲がりや絞り込みのある光導波路,波長サイズの放物面鏡や円形共振器の計算結果を示す.

  • 藤田 大介, 鷺坂 恵介
    2005 年 74 巻 2 号 p. 208-212
    発行日: 2005/02/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    Si(001)表面の超高真空・極低温環境における基底状態は,2003年に至るまで確定していなかった.2000年に静止した対称ダイマーもしくはフリップフロップ運動をした非対称ダイマーから構成される2x1構造がその基底状態として提案されて以来,多くの表面物性研究者の議論が引き起こされ,現在まで継続している.われわれは極低温走査トンネル顕微鏡を用いて,Si(001)表面の基底状態を解明する過程において,2種類の非対称ダイマー相であるc(4x2)相とp(2x2)相を可逆的に構造変換できることを発見した.その結果として,極低温環境における基底状態がc(4x2)相である可能性が高いことを報告した.本稿では,先達の歴史的な研究成果を十分に踏まえて,現時点での研究の状況を紹介する.

基礎講座
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