III-V族化合物半導体の気相成長(分子線成長法,有機金属気相成長法,ハイドライド気相成長法)における構成元素の固相への取り込みについて,熱力学の観点から述べる.二元化合物の成長の駆動力および三元や四元混晶における気相原料組成と固相組成の関係を実験値と比較し,議論する.その結果,成長速度および固相組成が熱力学的に解析できることを示す.熱力学的に予測される二元化合物の固相への取り込まれやすさの序列はすべての気相成長法で同様であり,また,この序列は気相成長の方法によらず,二元化合物に対するギブスの生成自由エネルギーに支配されている.
本稿では,ニオブ酸リチウム,タンタル酸リチウムの不定比欠陥密度とイオン拡散および熱伝導特性への影響に焦点を当てている.どちらの特性も,デバイス作成プロセスあるいは素子の性能に深く関連している.SIMSを用いた拡散実験およびレーザーフラッシュ法による熱伝導率計測から,数%の不定比欠陥密度にこれらの特性が強く依存していることがわかった.特に空位欠陥が,拡散を速くし,熱伝導を遅くしている.従来から市販されている一致溶融組成(コングルエント)結晶では,Liイオンサイトの4%近くが空位欠陥となっているのに対し,近年開発されてきた定比(ストイキオメトリー)結晶では,欠陥密度が1/5から1けた以上低減されている.このため,定比に近い組成のニオブ酸リチウムでは,Ti拡散で急峻な屈折率分布が形成され,優れた導波路ができる.また,定比に近い組成のタンタル酸リチウムの熱伝導率は,従来結晶の2倍以上大きい.この特性改善は,波長変換素子の温度制御や,素子内の温度均一性に非常に有効であることも明らかになってきた.
筆者らは心臓の電気生理学的な画像情報を非侵襲的に得ることを目的として,心磁計を開発してきた.心磁計を用いた電気生理学的な画像情報によって,これまでさまざまな臨床応用が試みられており,多くの画期的な成果が上がってきている.筆者らは,これらの臨床応用研究を支えるさまざまな技術を開発している.本稿では,現在の心磁計の研究開発の現状を報告するとともに,インピーダンス心磁計や臨床研究の新しい知見についても述べる.
光と電波の中間に位置するテラヘルツ帯には未開拓の研究分野が多く残されており,ナノ構造との相互作用もその一つである.ここでは,このような相互作用のうち,共鳴トンネル構造におけるテラヘルツ光支援トンネルについて,筆者らの行った,共鳴トンネルダイオードとテラヘルツ帯平面アンテナを集積した素子による観測,理論とのよい一致,観測した光支援トンネル電流中の誘導放出成分から見積もったテラヘルツ増幅利得について述べる.またデバイス応用として,光支援トンネルと電子波ビートを利用した三端子増幅素子の可能性についても述べる.
GaN単結晶の新しい合成法である「高圧下でその融液を徐冷して単結晶を育成する手法」を紹介する.6GPaを超える超高圧下では,高温におけるGaと窒素への分解が抑制され,GaNが液体として存在できる.この現象に基づいて,大型プレスの高温・高圧装置を用いた融液徐冷法によるGaN単結晶育成が可能になってきた.AlN-GaN混晶やInN結晶など,他のIII族窒化物半導体結晶合成への展開の現状と見通しについても述べる.
回折光学素子の研究はこの10年間の間に急速に進展し,今や,回折光学分野の研究者や技術者には想像もできないような,さまざまな分野にその応用が広がっている.その中でも近年,特に注目されているのが,共鳴領域の回折光学素子と呼ばれる,局所的な構造が光の波長と同程度の大きさの素子である.偏光特性をはじめとするその興味深い光学特性とその応用例の最近の成果について,ここでは一次元の回折格子を例にとって,数値解析をもとに解説する.
ソフトマターの魅力的な物性は,そのメソスコピックな内部構造に起因する.この中間的なスケールのために,ソフトマターでは非線形性と非平衡性が顕著に表出する.ソフトマターの一例として,水,油,界面活性剤からなるマイクロエマルションを取り上げ,その多彩な相挙動について解説する.ソフトマター物理の観点でこのような複雑な現象を理解するためには,現象論的なアプローチが有効である.その具体的な成功例として,膜の理論を説明し,ドロップレット相や双連結マイクロエマルションの物理的起源を探る.
たんぱく質結晶における格子欠陥発生機構を明らかにするには,結晶表面近傍の流れや溶質・不純物たんぱく質濃度の分布を擾乱しない手法で,成長ステップをその場観察する必要がある.筆者らは,系に完全に非接触・非破壊なレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いて,リゾチーム正方晶系結晶{110}表面上の単位成長ステップ(5.6nm高さ)やそのバンチング過程のその場観察に成功した.また,透過型位相差顕微鏡を用いて,結晶内部のインクルージョンを,そしてエッチング法と組み合わせることで,結晶表面に露出した転位,および空孔と不純物に基づくマイクロ欠陥をその場観察することにも成功した.
筆者らが行った宇宙実験,ならびにそれに関する数値解析結果に関して紹介した.宇宙実験においては,固液界面形状がほぼ平行になるのに対し,地上実験では下部ほど溶融が進んだ.数値解析の結果,この原因は濃度差に起因する自然対流によるものであることがわかった.また,実験中,融液は酸化被膜などに覆われており,マランゴニ対流は抑制されていた可能性が示唆された.マランゴニ対流現象の理解を深めるために,フローティング・ゾーン内の三次元マランゴニ対流に関しても解析を行った.濃度差に起因するマランゴニ対流は自身で誘起する流速は小さいものの,温度差マランゴニ対流と複合化することにより,対流構造に重要な影響を及ぼすことがわかった.
完全固体で信頼性の高い平面パネルディスプレイである無機エレクトロルミネッセンス(EL)は,近年の発光材料開発および周辺技術の進展により,実用化に弾みがついた.特に無機EL研究において長年の懸案であった高輝度青色発光はBaAl2S4:Eu蛍光体薄膜の開発により達成され,その後も関連する三元硫化物材料が系統的に報告されている.これらの材料における発光特性制御の指針,薄膜作製法,EL素子への応用などについて紹介する.
化学プロセスを数cm角のマイクロチップ上に集積化するマイクロ化学システム,μ-TASまたはLab-on-a-chipと呼ばれる研究が注目されて久しい.小型化することによる試薬量・廃液量の低減,測定時間の大幅な短縮,省スペース化などの実用的な側面だけでなく,科学的な見地からもその興味深い点は多い.マイクロ化学チップのさまざまな研究の中から,主にバイオ分野への応用例を取り上げ,解説する.
GaNの電子デバイスは,これまで高周波デバイスとしての研究が主体であった.しかし近年,パワーデバイスとしての可能性が注目されるようになり,研究も活発化している.現状のGaNパワーデバイスは高周波デバイスを基本としているが,それとは異なる観点での技術開発が必要となる.本稿では,GaNパワーデバイス実現に必要なプロセスおよびデバイスの現状を説明し,今後の課題について考察する.