応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
75 巻, 1 号
『応用物理』 第75巻 第1号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
世界物理年秋のイベント
世界物理年記念特集記事
企画の意図
総合報告
解説
  • 飯島 康裕
    2006 年 75 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    Y-123(YBa2Cu3O7-x(YBCO))系超伝導線材は,既存の超伝導材料の中で最も高い臨界電流密度(Jc)を広い温度領域で期待できるといわれ,従来にない小型で高性能な超伝導機器が実現される可能性がある.イオンビームアシスト蒸着(Ion-Beam-Assisted-Deposition:IBAD)法は,高い性能を引き出せる有望な製法として開発が進められてきたが,近年の真空技術の進歩により,100m級の線材が複数の研究機関で作製されるに至った.すでに実用長とされる500m級線材の開発が始まっており,簡単なコイル試験などによって実用線材としての検証が開始されている.

  • 田辺 圭一
    2006 年 75 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    酸化物系高温超伝導体を用いた主要なエレクトロニクスデバイスである,高周波受動デバイス,超伝導量子干渉デバイス(SQUID),単一磁束量子(SFQ)デバイスについて,基盤技術である薄膜技術やジョセフソン接合技術に注目しながら,この20年間の進展を振り返る.マイクロ波フィルターについては製品開発が進み,SQUIDを利用したさまざまな検査機器が実用化を迎えようとしている.SFQデバイスについては,その集積化に必要な薄膜積層技術や接合技術はほぼ確立し,高速サンプラーやアナログ・デジタル変換器の開発が進行している.

  • 山本 直紀
    2006 年 75 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    透過型電子顕微鏡カソードルミネッセンス(TEM-CL)法は,試料内部の構造と発光との関係を高い空間分解能で直接検証できる手法である.サイズ分布をもつ量子細線および量子ドットの集団の中から,単一のナノ構造を個々に調べることができる.この手法は,発光を伴う現象すべてに適用できる.最近の応用として,金属表面に局在する表面プラズモンポラリトン(SPP)がナノ構造を介して光を放出することを利用した,SPPを実空間で直接観察する研究を紹介し,プラズモニクス分野における,表面プラズモンの局所評価法としての可能性を探る.

最近の展望
  • −ジョセフソン磁束を中心に−
    平田 和人
    2006 年 75 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    高温超伝導体の発見から,はや20年が経過しようとしている.この間に,高温超伝導体特有の現象が見いだされてきた.特に,磁場中の超伝導特性は,磁束線の温度揺らぎと超伝導の強い異方性から,磁場が超伝導面と垂直な場合には,磁束線格子融解の一次転移現象などが実験的に検証され,理論的にも確立されてきた.しかしながら,高温超伝導体の応用が,主に磁場を超伝導面に平行にかけることによって得られる面ピニングを利用しているにもかかわらず,平行磁場の磁束線(ジョセフソン磁束線)状態の研究は,理論的解明のみが進んでおり,実験的には最近になってようやく解明されてきた.本稿では,平行磁場の磁束線状態の理論的まとめと実験の現状を紹介する.

  • 田中 三郎
    2006 年 75 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    高温超伝導体の発見から今年は20年目となり,当初,ノイズが高く,実用化が危ぶまれていた超伝導量子干渉素子(SQUID)磁気センサーも実用化が進んできた.特に新しい応用分野として,食品や医薬品内の異物検査装置への適用が注目されている.食品内異物検査装置は昨年度,商品化されて販売が始められており,消費者の食の安全に対する意識の高まりと相まって,国内外から多くの引き合いがある.今回商品化に結びついた食品内異物検査システムを中心に,現状および展望を述べる.

研究紹介
  • 松崎 弘久, 三木 基寛, 木村 洋介, 井田 徹哉, 杉本 英彦, 北野 雅裕, 和泉 充
    2006 年 75 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    地球環境保全の目的や船内電力需要の変化から,船舶の推進はディーゼル機関にプロペラを直結して推進力を得る方式に代わり,巨大な主機関ディーゼルを廃して,中小型ディーゼル機関を,定回転で発電した電力でモーターを回して推進力を得る電気推進が注目を浴びている.推進動力用の低速高トルクのモーターを超伝導磁石を用いて小型化する超伝導回転機の開発が内外各所で実施されているが,筆者らはガドリニウム系高温超伝導バルク体に注目し,これを用いた船舶推進用のモーターの開発を行ってきた.今回は船舶推進用モーターの背景から始まり,筆者らの製作したモーターとかかわる技術を紹介する.

討論の広場
  • −われわれはどこへ行くのか−
    玉井 克哉
    2006 年 75 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    1990年代半ばから,日本の大学には大量の公的研究資金が投下されている.同時期に産学連携活動が奨励されるようになったことにも影響されて,一部には,産学連携を資金源として期待したり,私企業同様に大学が市場で行動するのを是としたりする風潮がある.しかし,自由な学問研究と教育の場としての伝統を堅持するのも選択肢の一つである.その場合,産学連携は,実用的側面から研究や教育に刺激を与えるための活動と位置づけられる.

  • 吉川 誠一
    2006 年 75 巻 1 号 p. 69-71
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    わが国のIT産業の国際競争力を強化するためには,大学における最先端の科学技術の知恵に支えられた垂直統合型のテクノロジーバリューチェーンを構築することが重要となっている.富士通研究所の産学連携の共同研究の事例を紹介し,今後の産学連携のあり方として,産業界と大学が明確な出口イメージを共有する形の,デマンドプル型イノベーションシステムの構築を提案したい.

  • 伊藤 学司
    2006 年 75 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    近年,わが国でも大学と企業との共同研究をはじめとする産学連携活動が活発に展開されており,国立大学の法人化により,その動きはいっそう加速している.一方,連携の進展に伴い,今後の課題も明らかになってきている.組織的な連携を推進することにより,イノベーション創出につながるような本格的な共同研究を活発に展開させていくとともに,大学と企業が相互の立場の違いを十分理解し,Win -Winの関係を構築していくことが必要である.新たな局面に入った産学連携活動の推進に向け,相互作用で生まれる効果によって,産学がそれぞれの立場をよりいっそう高めていくことが必要である.

  • 古川 勝彦, 山内 恒
    2006 年 75 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    九州大学の推進する種々ある産学連携事業の中から,組織対応型(包括的)連携についてスポットを当て,その連携について考察した.この連携は持続的な社会貢献へつながることを目的とし,従来からの産学連携の問題点を抽出して,それらの改善を図った連携システムである.積極展開から2年,成果の兆しをとらえつつ,さらなる可能性について検討しているところである.

  • 石原 誠一郎
    2006 年 75 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 2006/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    現在,国内で数百万人いるフリーター問題の陰に隠れているが,博士課程修了者の就職難は深刻な状態である.さまざまな調査データから民間企業の新卒採用意欲は回復基調にあり,大学院修了者を積極的に採用しようとする企業も多い.ただし,修士課程修了者が中心で,博士課程修了者の採用枠は修士の1/4にしかすぎない.しかし,企業は博士課程修了者だから採用しないわけではなく,博士課程修了者の専門性の高さを評価しつつ,ヒューマンスキル(コミュニケーション能力,プロジェクト管理能力,問題解決能力など)についても高いレベルを要求している.そのため,採用基準に達せずに不採用になるケースが多い.逆にいえば,この部分をきちんと対策できるならば,十分内定を獲得できる可能性は高い.

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