応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
75 巻, 9 号
『応用物理』 第75巻 第9号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
企画の意図
総合報告
  • 三宅 秀治
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1080-1090
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    DRAMは1970年から現在まで,ほぼスケーリング則に従う形でセル縮小,大容量化が進んできた.しかしながら,DRAMセルの構成要素である選択トランジスタと蓄積容量はスケーリング則には従わないために,セル縮小を実現するためには三次元セル構造に代表される新構造や高誘電率膜に代表される新材料などのイノベーションが常に必要となる.本稿では,DRAMのセル縮小を決める要因となっている,選択トランジスタと蓄積容量を中心に,DRAM技術の現状と将来動向について述べる.また,これらの制約をもたないメモリーとして研究開発の進んでいるポストDRAM技術について,RAMとしての必要条件を中心に概説する.

解説
  • 鹿野 博司, 細見 政功
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1091-1097
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    磁性体を記憶素子に用いるMRAMは,無限界の書き換え回数,ナノ秒台での高速書き込みが可能という特徴をもち,DRAMやSRAMを置き換える可能性をもつと考えられており,今まさに第一世代のICが量産化されようとしている.MRAMは磁気記録という従来の半導体にない概念を用いるため,素子の微細化を図りつつ,ICに必要な信頼性を確保するために各種の技術開発が進められている.本稿では,TMR素子を用いた通常型MRAMから,トグル書き込み方式,さらにスピン注入書き込み方式を使用した新しいメモリーの解説を通じて,磁性体を使用したメモリー技術の現状とその開発の方向について述べたい.

  • 寺尾 元康
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1098-1102
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    相変化メモリー(PRAM)について解説する.PRAMは,電流によって非晶質-結晶間の相変化を起こさせてメモリーとし,弱い電流で抵抗値の検出によって読み出しを行うものである.少なくとも1けたの抵抗比が得られる.構造が単純であるから工程数が少なくてすむ.抵抗の低い結晶状態から非晶質状態に変化させるリセット動作の電流値を小さくすること,書き換え可能回数と耐熱性を向上させることが主要課題であったが,改善されつつある.

  • 水野 智久
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1103-1108
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    現在,ULSI特に半導体メモリーで問題となっている半導体素子における特性揺らぎの物理的機構について,実験結果および簡単な解析モデルを用いて説明する.半導体素子(主にMOSFET)の特性を制御するチャネル領域の不純物原子数およびその空間分布は,その製法(イオン注入および拡散工程)により統計的に揺らぎ,それが特性揺らぎを引き起こす基本的な物理機構である.特に,しきい値電圧揺らぎは表面電位と空乏層電荷揺らぎに起因し,その分布は基本的にはガウス分布で表される.最後に,特性揺らぎを抑制する素子設計法についても述べる.

最近の展望
  • 澤 彰仁
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1109-1114
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    絶縁体または半導体の遷移金属酸化物を金属電極で挟んだ素子に,100ns程度の電圧パルスを印加すると,抵抗が可逆・不揮発に数けた変化する抵抗スイッチング効果が発現する.近年,この現象を利用したメモリー集積回路(ReRAM)が次世代不揮発性メモリーとして注目され,精力的な研究開発が展開されている.しかし,素子材料や構造と特性の相関が明らかでなく,動作機構が不明で,素子特性の最適化が可能な状況であるとは言い難い.本稿では,これまでの報告を整理して提案されている動作モデルを概観するとともに,筆者らが提案する界面ショットキーモデルに関する実験を紹介する.

  • −縦型MOSトランジスタの高密度メモリーへの可能性−
    遠藤 哲郎
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1115-1119
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ポストDRAMを実現するための革新技術を,縦型MOSデバイス技術の観点から論じる.近年の半導体技術の選択では,比較的保守的なデバイス構造が選択されており,65nm世代のトランジスタとして平面型MOSFETが選択されている.しかし,今後さらに微細化される平面型MOSFETの性能を確保するためには,多くの問題が山積している.その一方で,DRAMなどのようにキャパシター構造を立体化することで,危惧された限界を超えて発展した成功例もある.このことから考えると,32nm世代以降のULSIは,斬新な縦型構造デバイスなどの立体構造デバイスに移行することによって,予想を超えて発展すると考えられる.

  • 岩本 光正, 臼井 博明, 小野田 光宣, 杉村 明彦
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1120-1125
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    有機デバイスに関連した研究が活発である.学会での関連分野の研究発表件数の増大は,このことを物語っている.しかし,研究対象とするFET,ELなどのデバイスの中で,有機材料本来の機能が活かしきれていないのが実状である.柔軟さなど有機材料独特の機能を使い切るためには,有機分子の幾何学的形状,界面のトポロジー,分子集合体のパターン,分子・分子集合体の動的な挙動など,有機材料の特徴を総合的にとらえ,その扱いを可能にするデバイス物理・工学手法が必要である.「界面幾何工学」という視点からの研究はその糸口となる.そこで本稿では,「界面幾何工学」という視点から,最近の有機エレクトロニクス関連の研究を概観し,その将来展望について述べる.

研究紹介
  • 阪本 利司, 帰山 隼一, 長谷川 剛, 寺部 一弥
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1126-1130
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    固体電解質は固体でありながら高いイオン伝導性を示す興味深い材料で,電気化学反応により,金属がその内部に析出あるいは消滅することが知られている.ここでは,固体電解質中の金属の析出現象を用いた不揮発性スイッチ(固体電解質スイッチ)の電気的特性と,そのメモリー応用およびプログラマブルロジック応用について紹介する.固体電解質スイッチは素子構造が簡便で,オンオフ比が高く(4けた以上),オン抵抗が低い(100Ω以下)といった特徴を備えている.

  • 大澤 隆
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1131-1135
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    SOI上に形成したFETのフローティングボディーに多数キャリアを蓄積してデータを記憶する新しい単一トランジスタからなるDRAMセルは,セルサイズが従来のDRAMセルの約1/2になることと標準CMOSプロセスで作製できることから,将来のDRAMメモリーセル,特に混載用メモリーセルとして期待されている.フローティングボディーセル(FBC)と呼ばれているこのセルには従来のDRAMに必要なキャパシターがないため,微細化にも適している.SOIウエハーの価格がバルクシリコンの数倍程度であれば,メモリー容量の増大に伴ってチップコストはバルクシリコン上のDRAM混載LSIよりも下がることが示せるので,大容量メモリー混載LSIを誰でも手軽にかつ安価に利用できる環境を提供することが可能となる.

  • 松畑 洋文, 沈 旭強, 奥村 元
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1136-1139
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    窒化物系電子デバイスの性能や信頼性の向上を目的とし,窒化物系半導体薄膜中に存在する高密度の格子欠陥を低下させることを試みている.筆者らは,(0001)面に対して2度程度傾いたサファイア基板上で薄膜成長を行い,転位密度が大幅に減少することを見いだした.電子顕微鏡による観察結果とメカニズムについての議論を報告する.

  • 中村 大輔, 山口 聡
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1140-1143
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    SiCはワイドバンドギャップ半導体の代表格として魅力的な物性をもつことから,従来のSiデバイスでは達成できないような大電力・超低損失デバイスへの応用が期待されている.高性能かつ高信頼性のSiCデバイスを作製するためには,高品質のSiC単結晶基板が要求される.本稿では,結晶成長の方位と結晶性との関係を利用した高品質SiC単結晶成長手法と,作製された結晶の結晶品質について紹介する.本手法によって作製された単結晶は,これまで問題とされてきたマイクロパイプ欠陥を含まず,より微細な欠陥である転位欠陥も従来に比べて2〜3けた少ない密度にまで低減された.また,低転位密度結晶のX線トポグラフィーによる解析から,SiC結晶中の転位ネットワークの基本構造が明らかとなった.

基礎講座
  • −材料設計への応用−
    玉井 良則
    2006 年 75 巻 9 号 p. 1145-1148
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    分子動力学法により,原子レベルのミクロな情報をもとに,分子集合体のマクロな物性値を直接得ることができる.また,分子の構造のみならず,その動的性質を実時間で観測できる.ナノテクノロジーの進展に伴って,分子レベルの構造を直接観察する手段として,あるいは材料を分子レベルから設計する手法として期待が高まっている.本稿ではまず,各種物理量の算出方法について解説した後,材料設計への応用の例として気体分離膜の設計を取り上げ,実例を示す.最後に,材料設計に応用する場合の課題について述べ,生体分子などへの応用の広がりについても展望する.

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