わが国の科学技術の将来を担う青少年の理科離れが問題となっている.この問題に取り組む応用物理学会教育事業の一つであるリフレッシュ理科教室事業に関して,10年間の歩みと現状・問題点について述べる.応用物理学会として果たすべき理科啓発活動とリフレッシュ理科教室との関係,新しい展開,今後の進め方などについて,具体的な例を含めて記述する.
JABEE審査とABET審査との関連を紹介した.物理・応用物理学関連分野のJABEE審査の方法などを紹介しながら,この分野の教育が抱える問題点を考えた.その際,覧具博義教授(東京農工大学)らの行った調査結果を参考にした.各教育機関における本分野の学部教育を改善するために,JABEE審査はよい契機を与えるものと考えられる.
超伝導単一磁束量子回路(Single flux quantum circuit)は,磁束量子を情報担体とし,ジョセフソン接合を用いて信号処理を行う回路である.高速,低消費電力特性を同時に併せ持つ新しい回路技術である.本稿では,動作原理,回路技術研究開発の現状,そして応用展開について述べる.
科学技術人材育成にとっても,すべての人々の基本的な素養にとっても,基礎科学・基礎物理教育の重要性が強まっている.筆者らが行った日本の物理・応用物理学関連学科の卒業生に対するアンケート調査から,これらの分野の学部教育が産業界に進出する人材にとっても重要なキャリアの入り口(キャリアパス)になっていることが裏づけられた.しかし日本だけでなく,欧米でも若者の理科離れ・物理離れの進行が憂慮されている.物理離れ克服の手がかりを得るために,英国や米国で進められている理科教育・物理教育の活性化の努力や,教育改善に理論的な裏づけを与える「物理教育研究」の動向をあわせてご紹介する.
ハーフホイスラー化合物は一般に高い出力因子を示し,環境負荷の小さい発電用新規熱電材料として期待される.n型材料としてはMNiSn (M=Ti,Zr,Hf)系化合物が当初から注目され,ZT>1を超える値が報告されている.ここでは,その有効質量と元素置換が熱伝導率に与える影響,および高温で見られる両極性拡散効果による熱伝導率の増加について述べる.一方,p型ハーフホイスラー材料の報告は少ない.ここでは,同様に総価電子数が18となるZrNiSn系,ZrCoSb系およびLnPdSbに着目し,その熱電特性について述べる.n型と同様に高い出力因子が得られており,今後の性能向上が期待できる系である.
プラスチックブロックを用いた光科学教育の教材を開発することを目指すフォトンブロック・プロジェクトについて紹介する.ブロック玩具として普及しているレゴブロックを利用した,安価で軽く持ち運びに便利な光学マウントシステムについて述べる.また,筆者らが独自に開発している希土類錯体を透明プラスチックにドープした新しい発光ブロックについて述べ,理科教育における教材開発の重要性について議論する.
国立天文台では,高感度受信機用ミキサー素子への応用を目指して,ニオブ(Nb)薄膜をベースとした超伝導トンネル接合,いわゆるSIS接合の開発を続けてきた.その結果,面積1μm2で電流密度10kA/cm2をもつ高品質のSIS接合を製作することが可能になっている.これらの高品質SIS接合をミキサー素子に利用して,フォトンの等価雑音温度(hν/kB)の3倍程度というきわめて低い受信機雑音温度をもつ,超高感度のミリ波,サブミリ波帯の受信機の開発に成功している.現在,これまでに蓄積したSISミキサーに関する技術をもとに,2011年完成予定の世界最大のミリ波,サブミリ波帯干渉計型電波望遠鏡ALMAへの搭載を目指して,1THz帯の低雑音,高感度SISミキサーおよび受信機の開発を行っている.
最近研究開発が進み,注目を集めている金属系の超伝導線材として,MgB2とNb3Al線材がある.MgB2線材は金属系としては超伝導転移温度が高く,冷媒不要の冷凍機冷却型の超伝導機器に有望と考えられる.一方のNb3Al線材は,Nb3Sn実用線材よりも耐応力・ひずみ特性がはるかに優れ,また高磁界特性も優れているので,高磁界を必要とする大型機器への利用が考えられる.どちらもすでに1kmを超える線材が作製され,小型コイルの試作も進められている.今後のさらなる臨界電流特性の改善によって,実用化への道筋がつけられると期待される.
近年,シングル接合太陽電池のエネルギー変換効率を上回る次世代太陽電池の研究開発が進んでいる.本稿では,半導体量子ドットや超格子を導入して,50%以上の超高効率化を目指す,従来にない新しい太陽電池について,現状と課題を解説する.高効率太陽電池の実現に向けて,高密度で三次元的に全体配列した量子ドット超格子の実現が必要である.現在,サイズ均一性に優れ高密度に自己組織化成長するInAs系量子ドット群に着目し,ひずみ補償成長法による三次元量子ドット超格子の作製技術,および量子ドット太陽電池の基礎評価に関して研究を進めている.
従来,光学多層膜は無機誘電体を材料として,真空蒸着,スパッタリングなどにより作製され,高反射ミラー,干渉フィルター,反射防止膜など受動的な目的に用いられてきた.本稿では,高分子材料を用い,真空環境不要のスピンコート法により膜厚を制御して多層膜が作製可能であることを示し,光機能性分子の導入による高分子多層膜のさまざまな能動素子化への応用を紹介する.
大学の主たる役割は,教育,研究である.最近,社会連携も重要な役割となってきた.しかしこれらは,それぞれが単独に果たされるのではなく,相互に関連しながら進展するものである.広島大学の産学連携教育および産学連携研究を例として取り上げ,教育,研究と社会連携の関連について概説する.
不確定時代の研究開発戦略は,全社的な経営戦略に基づいたものであると同時に,変化する時代に対応できる柔軟性と,強いリーダーシップにより立案,実行されなければならない.本稿では,当社が実践している研究開発戦略とその中における産学連携,人材育成の考え方と施策の事例を紹介する.
分子シミュレーションの一つの方法であるモンテカルロ法に関して,背景,乱数の使い方,メトロポリス法,そして分子動力学に乱数を組み合わせたブラウニアンダイナミクス法について説明する.具体的な結果も紹介する.