2010年度の稼働を目指し,ペタフロップス級の次世代スーパーコンピューターの開発が進められている.本スーパーコンピューターの実現には,CPUの性能向上とともに,これに見合ったLSI間の信号伝送性能,すなわちインターコネクションの性能向上が求められる.本稿では,次世代スーパーコンピューターに求められるインターコネクションの必要要件,従来のインターコネクション技術の問題点,および光インターコネクション技術の必要性について述べる.さらに,現在開発が進められている光インターコネクション技術について,その開発状況を述べる.
消費電力や信号遅延の観点から限界に近づきつつある長距離金属配線に代わって,光配線をLSI内に導入する研究が活発化している.光配線LSI実現のためには,光素子と付加回路の面積・消費電力,作製温度などの厳しい条件を満たさなければならない.本稿では,これらの問題点を,ほかのLSI配線方式(RC線路,伝送線路,無線インターコネクト)と比較して議論する.また,Si発光素子,変調素子,受光素子などのLSI内光配線に関するSiフォトニクスの研究状況を,筆者の研究成果を含めて紹介する.
情報通信機器内の電気(金属)配線が,膨大になった情報量を円滑に処理するための高性能化への障害になってきた.これを解消する手段として,電気配線の代わりに光配線の導入が脚光を浴びている.まず,光配線の導入効果およびその課題について述べた後,国内外の光実装プロジェクトの研究開発動向について記述する.次に,ボードレベルの光配線化を実現するため提案された光表面実装技術について紹介し,最後に,解決のためのキーテクノロジーとなる「光ピン」と「自己形成導波路」による接続技術について概説する.
有機エレクトロニクス素子として,高分子青色EL材料であるpoly(9,9-dioctylfluorene)(F8)を用いたEL素子のインピーダンス分光について述べる.ITO/F8/LiF/Ca/Al構造の素子で,等価回路の決定を行った.その結果,得られた等価回路は,発光しきい値以下では捕獲準位が存在しないとした単一キャリア注入モデルで,発光しきい値以上では複注入モデルで説明できることを示した.さらに,ITO,F8間に陽極バッファ層を挿入するとF8内に捕獲準位が形成されることを示した.また,単一キャリア注入モデルに基づき,EL素子のインピーダンス分光による移動度測定についても述べた.
金型を用いてポリマー材料をパターニングするインプリント法による光導波路複製技術の確立により,いよいよ光集積回路のキーデバイスの安定量産が可能となった.本稿では,インプリント法による光導波路複製技術を紹介するとともに,機器内光配線用途への展開性について述べる.
本稿では,まず初めにプラズマを用いた機能性薄膜形成プロセス全般の現状について概観し,基礎研究,プロセス研究,プラズマ源開発およびプロセス制御に分けて,その課題と対策について述べる.特に,プラズマ生成の基礎物理を理解し,高速プロセスを可能にする高密度プラズマを生成するための条件について考察する.
ナノホールアレイを有する金属ミラーを用いた850nm波長帯面発光レーザー(VCSEL)について,最近の研究成果を紹介する.筆者らは,表面プラズモン共鳴による光透過増強現象を利用することで,しきい値電流が小さく,高光出力動作も可能なVCSELを実現した.金属ナノホールアレイを反射鏡に用いることで,動作電流の温度依存性がきわめて小さいVCSELを得た.さらに,直交方向に周期の異なるホールアレイにより,1チップに集積化したVCSELの偏光を任意の方向に制御できることを実証した.これらの表面プラズモンVCSELにより,高速光通信・インターコネクト分野の進展とともに,偏波多重MIMOという光通信方式の新展開が期待できる.
有機デバイス作製法の中でも溶液を用いた湿式法は,低コスト大面積製造が期待でき,注目を集めている.従来の湿式法がもつ三つの弱点,①積層が困難,②塗り分けが困難,③溶液濃度の制約を解決すべく,筆者らが開発した,希薄溶液からのスプレイ法を紹介する.この方法では,同じ溶媒に可溶なものでも複数の高分子半導体を積層し,積層型有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子とすることができる.この積層型素子ではヘテロ界面でのキャリア閉じ込めによって素子特性が向上し,ELスペクトルが印加電圧によって変化してしまうことを抑制できた.また,シャドーマスクを用いたピクセルレベルの高精細塗り分け,難溶性材料での素子作製がこれまでに実現している.
九州産業大学21世紀COE「柿右衛門様式陶芸研究センタープログラム」は,日本が伝統的な文化財として世界に誇る柿右衛門様式磁器について,意匠,技法,歴史の3部門から総合的に研究し,その成果を大学院の陶芸専攻のカリキュラムに生かすものである.研究活動として,オランダ東インド会社による肥前磁器輸出の解明の研究,国内と欧州所在の柿右衛門様式磁器の調査とコレクション内容の比較研究,古陶磁器の科学的分析と再現研究,肥前磁器文様のデータベース構築と土型の計測などの事業を現在推進しつつある.本稿では,これらの事業内容を紹介するとともに,技術と芸術の関係について言及する.
有機電子素子および単一分子電子素子において,キャリアの注入を担う電極と分子の接続界面は,素子の特性を決めるうえで重要な役割を果たす.金属表面上の分子の電子状態について,光電子分光法や走査型トンネル顕微鏡法を用いた研究例について紹介する.