超短パルス発生技術の進展について,発振器も含めた比較的小出力の領域の短パルス化,TW級高出力レーザーにおける短パルス化および高調波を用いたアト秒パルスの発生について報告する.可視域ではチャープ鏡や適応型位相制御などの技術革新によりモノサイクルに近づきつつある.高出力増幅器では主にチタンサファイアレーザーが用いられてきたが,より広い帯域が得られるパラメトリック増幅に変わりつつある.高次高調波ではアト秒パルスの発生と計測が達成され,100アト秒(attosecond,10-18秒,以降asを使用)を切るパルスが目標となっている.
遠共鳴三準位系におけるラマンコヒーレンスの断熱生成と,その非線形光学過程への応用について述べる.断熱励起を用いることで最大に近いラマンコヒーレンスが生成され,位相整合に制約されない非線形光学過程が可能になることを示す.例として,赤外から真空紫外近傍の広帯域にわたるラマンサイドバンド光の高効率同軸発生や,それらのフーリエ合成によるユニークな超短パルス光の形成に関する研究を紹介する.
高強度のフェムト秒レーザーを希ガスに集光することによって発生する高次高調波の時間構造は,1fs秒未満のパルス幅のパルスが規則正しい列をなすものと考えられてきた.これをアト秒パルス列と呼ぶ. 超高速の分光実験にこれを用いるためには, 時間領域で直接パルスを測定することが重要な課題であったが,実現は困難であった. 高次高調波の短波長性と強度不足がその主な原因であったが,近年の高強度の高調波発生技術の発展により,これが可能になった.本稿では,筆者らが最近行ったアト秒パルス列の測定実験を紹介する.
インターネット社会を支えるネットワークとコンピューターに迫る性能限界を打破すると期待されている,電子・光集積回路とその技術基盤となるシリコンフォトニクスについて解説した.近い将来,実現すると考えられる光インターコネクションを例として,シリコン上での光素子の研究開発の現状を紹介し,シリコンフォトニクスの将来展望について述べた.
われわれはフーリエ合成による任意光電場波形生成を目指し,複数のフェムト秒パルスのタイミングおよび光位相同期を行っている.受動タイミング同期2波長レーザーと,フェムト秒パラメトリック発振器を用いた光位相同期について述べる.
最近可視域で,パルス幅が光電場搬送波の1周期にほぼ等しい究極の光パルス,モノサイクル域光が発生された.本稿では,従来の光パルス圧縮法の原理・問題点について言及した後,問題点を解決してこのことを可能にした新しい手法を紹介する.すなわち,準実時間光パルス波形計測と結合した自律型フィードバックチャープ補償法を概説する.ついで,これを用いた1.5サイクル,2.8fsのフーリエ変換限界光パルス発生システムについて述べる.最後に極限時間域の光技術の今後の展開について要約する.
近年,光デバイスの微細化の要求は日に日に強くなっており,その寸法は光の回折限界以下になろうとしている.回折限界以下の領域では,従来デバイスを単に微細化するだけでは動作させることは不可能となる.さらには,電子デバイスに関しても同様に微細化が不可欠となっているが,配線などでの熱の発生が問題となり,さらなる微細化が限界に達しようとしている.以上の問題を解決するために,近年半導体微結晶によって構成され近接場光で動作するナノフォトニックデバイスが提唱され,その基本動作検証が報告されている.本稿では,このデバイスの室温動作実現を目指して取り組んでいる酸化亜鉛(ZnO)量子構造を用いた成果について紹介する.
レーザーを水素分子に集光すると,ラマン現象により等周波数間隔で,多数の発振線が得られる.これらの発振線は,位相が自動的に同期し,超短パルス光が発生する.連続発振レーザーを高フィネス共振器中の水素に集光すると,等周波数間隔の連続発振レーザーが得られる.これらの発振線の重ね合わせにより,高繰り返し光パルス列が発生する.このレーザーは,将来,周波数標準や超高速光通信のための光源へ応用が期待されている.
超短光パルスのスペクトルは,周波数軸上に等間隔にモードが並び,光周波数の“ものさし”として利用できる.近年,この事実を利用することで光の周波数を非常に簡潔な原理で測定できるようになり,計量標準の分野をはじめ,基礎物理学や情報通信の分野などに大きな成果をもたらしてきた.産総研で行われている関連した研究開発を紹介する.
愛・地球博レーザードリームシアター向けにMEMS技術を用いた一次元光変調素子であるGxL用語)モジュールの開発を行い,リボンのブレーズ化ならびにその形状最適化により回折効率70%,平均コントラスト10000:1以上の性能を実現し,さらに十分な信頼性確保も行った.本稿では,これらを実現した技術について報告する.
経済産業省およびNEDOのプロジェクト「高機能材料設計プラットフォームの研究開発」の成果物として,2002年4月に公開されたOCTA (Open Computational Tool for Advanced material technology)は,公開後も開発者と多くのユーザーとの間で持続的に発展を続けている.ここでは,OCTAの概要と最近の適用事例,現在のOCTAの普及,開発状況に関して解説する.