高度なテクノインフラとして期待される計量標準の遠隔校正技術と,その進展が紹介される.全地球測位システム(GPS)を利用した時間・周波数標準や,光ファイバー網を利用した波長・長さ標準の遠隔校正が実現される.また,正確な仲介器を利用した遠隔校正が実現され,今後の情報化社会に適用される.
便利で安心な社会を築くためには,そこに存在する機器が誤動作せずに動作することが絶対的な条件である.EMCとは,ほかの機器に影響を及ぼすような妨害波を発生せずに,かつ,ほかの機器からの妨害波に対して影響されないような機器の能力と定義されている.そのようなEMCのある機器のみを社会に出すことにより,便利で安心な社会を築くことができる.そのために,国際的なEMC規格を作成するとともに,各国では,その規格を引用してEMC規制をしている.本報告では,情報通信機器のEMC問題とそれに関連するEMC規格の状況を紹介している.
沸騰水型原子力発電所の計測制御システムについて,デジタルシステムの進展について概観し,ABWRにおけるデジタル安全保護系の機能と特徴,および信頼性を確保するための検証と健全性確認手法について述べる.また,FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いた次世代のデジタルシステムの開発事例を紹介する.
現在,太陽電池産業が社会のエネルギー・環境問題への関心の高まりから急速に成長している.その主力はウエハーを基調とした結晶系シリコン系太陽電池であるが,急速すぎる市場の拡大は高純度結晶シリコン原料の供給不足を招き,生産量拡大の障壁となりつつある.一方,アモルファスシリコンや微結晶シリコンを用いた薄膜シリコン系太陽電池は原料問題の制約はないものの結晶系と比べると効率が低いという問題点がある.これらシリコン系太陽電池の現状の課題と,今後の展望について解説する.
BCS理論による超伝導転移温度(Tc)の限界値「BCSの壁」が約30K程度と一般に信じられ,金属間化合物ではこれ以上高いTc は望めないだろうと考えられていたため,研究者たちの興味は銅酸化物超伝導体へと移り,金属間化合物超伝導体のTc はほぼ頭打ちの状態であった.しかし,2001年にわれわれのグループがTc=39Kという金属間化合物では最高のTc をもつMgB2 を発見し,金属間化合物,特に軽元素を含有する化合物(ホウ化物,炭化物など)における新超伝導体の開発に可能性が見いだされつつある.
時刻の基準となる日本標準時は,情報通信研究機構で作られている.日本標準時発生システムは2006年2月に更新された.従来のシステムに比べ,信号源から計測機器,監視部に至るまで大幅な改良が盛り込まれ,品質・信頼性ともに向上している.システムの概要を紹介し,定常運用開始後の状況を報告する.
われわれは微細加工技術を用いた新しいガス増幅型画像検出器(Micro Pixel Gas Chamber : μ-PIC)を開発した.微細な電極構造により多線式比例計数管では不可能な高位置分解能および高計数率を実現し,物質構造解析用X線画像装置や核ガンマ線画像装置への応用を進めている.今回はμ-PICの基本特性を紹介し,さらにコンプトン散乱の反跳電子を三次元測定することで,入射ガンマ線の方向決定と雑音除去を同時に可能にした電子飛跡検出型コンプトン型ガンマ線カメラの開発,特に核医学分野への応用について述べる.
有機低分子材料について,特に電気伝導性およびそれに基づく機能性に着目し,構造と物性との相関について述べる.単一成分材料や電荷移動錯体を紹介し,集合体の構成成分分子自身の特徴とそこから派生する構造や物性への影響について概観する.バルクとして機能性を示す例として,スイッチ・メモリー機能性に焦点を置き,研究例を紹介する.