1985年から始まったデジタルカメラは,2002年にフィルムカメラの生産台数を追い越し,今日ではカメラというとデジタルカメラを指すようになった.このデジタルカメラの要点を紹介し,それに使われる独特の技術を解説した.各項目で,応用物理学との関連が密接であることがうかがわれる.
超LSIの基盤材料としてシリコンウエハーは新しい結晶技術を開発し,それを量産化することで,超LSIのさまざまな要求に対応しながらシリコン半導体産業の進展に貢献してきた.本稿では,CZ単結晶成長技術,エピタキシャル成長技術およびウエハー処理技術について,シリコン結晶技術が大きくかかわる超LSIの課題を整理したのち,シリコン結晶技術の展開の様子と現状を紹介し,さらに将来を展望する.
前兆現象の把握と解明を中心課題としていた日本の地震予知研究は1995年の兵庫県南部地震をきっかけに見直され,地震発生のしくみの理解をもとにした定量的予測シミュレーションを目指した研究に衣替えをした.その後の10年は,日本列島に高密度に展開された観測網のデータもあり,特にプレート境界の地震の予知に関する研究は急速に進歩した.ここでは最近の進歩と,それがどのように地震予知につながりうるかを述べたい.
応用物理学会では2001年に男女共同参画委員会を発足させ,男女を問わず多様な技術者・研究者の要望にこたえられる学会活動を目標に活動を続けてきました.理工系の男女共同参画学協会連絡会の発足・運営にも積極的に取り組み,2003年度の文部科学省委託のアンケート調査では中心となって実施し,分析結果を提言としてとりまとめました.2006年4月からは,従来の男女共同参画に新たに学生・若手およびシニアの2部門を発足させ,全3部構成で「人材育成・男女共同参画委員会」として,以前に増して幅広い活動を行っています.本稿では,委員会のこれまでの活動を紹介し,応用物理分野の振興を担う人材育成を主題とする委員会のこれからについて述べます.
半導体デバイスは,物理学が半導体産業によって社会経済構造を変革した最良の例である.そのデバイスはシリコン結晶を土台にしている.本稿では,どのような経緯でシリコンが選ばれ,原料が精製されて単結晶になり,大規模集積回路への道を歩んできたかを年代順に単結晶とウエハー製造の立場から概観した.シリコンの結晶成長の初期におけるわが国の状況と,物づくりの強みを発揮した今日を対比して理解することにより,今後のわが国の産業力の強化に役立つことを期待する.これからの100年もシリコンといわれているが,完全結晶には道半ばであり,基本にかえって点欠陥の制御を含めた結晶成長の正しい理解が求められる.