応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
77 巻, 1 号
『応用物理』 第77巻 第1号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
企画の意図
  • 『応用物理』編集委員会
    2008 年 77 巻 1 号 p. 8
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    超伝導フィーバーをもたらした高温超伝導材料も,発見されてから20年以上の年月がたちました.その間に,酸化物系超伝導材料として,液体窒素温度を超える超伝導材料が続々と発見されました.さらに7年ほど前には,非酸化物系超伝導材料として最も高い臨界温度を有するMgB2も日本で発見されました.

    このように華やかなスタートで多くの研究グループの興味を引いた高温超伝導材料ではありますが,これまでの金属系材料ではなくセラミックス材料であるため,技術的応用に関してはセラミックスの脆さなどの課題が予想されていました.しかし,超伝導研究開発に携わる研究者の20年間における技術蓄積に伴い,高温超伝導材料製造技術が飛躍的に向上し,実用化に向けて進展しています.例えば,超伝導線材の分野では,1.6 km 以上の高性能Bi系高温超伝導線材の作製技術が構築され,磁場中応用が期待されるY 系テープ状線材においても500 m 長の高特性が得られるようになり,さらなる技術革新が行われています.これらの技術の進歩により,高性能超伝導線材を大量に用いた超伝導パワー応用や磁場応用の分野への道が急速に拓けています.

    そこで,材料,線材,デバイスの各面から,「実用化に向けた高温超伝導材料技術の構築」というテーマで小特集を組むことにいたしました.また,実用化に大きな貢献を与えている産官学の連携についても紹介します.

    高温超伝導材料が実用化されれば,エネルギー輸送や情報通信などの分野で省エネや高速化といったインパクトが期待され,グローバルネットワークが可能となります.会員の皆様には,「高温超伝導材料の実用化への道」における材料科学研究のだいご味とその背後にある物理の世界を味わっていただくとともに,応用面での重要性あるいは将来性に関する理解を深めていただけたら幸いです.

「世界物理年」記念記事
  • −その開拓と実現−
    岩崎 俊一
    2008 年 77 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    磁気記録はこれまで,磁気テープやディスクを平面(水平)方向に磁化する記録方式をとってきた.これに対し,本稿では,磁性面を垂直に磁化する垂直磁気記録方式について,その発明,開発,実用化に至る経過について述べる.高密度の記録性能が優れているために水平方式から垂直方式への転換が急速に行われており,ハードディスク装置(HDD)の本年出荷量の75%が垂直型になり,2008年にはすべてが垂直型(世界で5億台以上)に変わる予定である.

解説
  • −人工ピンの導入−
    松本 要
    2008 年 77 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    高温超伝導の発見後20年が経過し,現在,高温超伝導体を用いた実用線材が製造され,電力応用や産業応用に向けた実証試験が次々と行われるようになってきた.高温超伝導体が長い研究開発の時を経て,夢の材料として再び表舞台に姿を現してきたといえる.そこで重要となるのが,量子化磁束のピン止めだ.超伝導体の臨界電流密度Jc は,ピン止めの強さによって支配される.現在,ナノテクを使って,高温超伝導体に人工的なピン止め点を導入し,高温超伝導が有する高いJcを引き出す新しい技術が生み出されつつあり,注目されている.

  • 北口 仁
    2008 年 77 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    MgB2 は,その超伝導の発見からすでに6年以上が経過し,材料科学的研究に基づいて,臨界電流をはじめとする諸特性は向上しつつある.1kmを超える長尺線材や種々の応用システム試作も進められ,MgB2 線材マグネットを使用した冷凍機冷却型のMRI試作機で頭部断層写真が撮像されるまでになっている.本稿では,応用超伝導機器への適用を念頭に置きつつ,材料科学面の研究成果や線材開発の最近の動向を交えながら,MgB2 超伝導材料開発に関して俯瞰的に報告する.

最近の展望
  • 藤巻 朗
    2008 年 77 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2008/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    酸化物高温超伝導ジョセフソン接合を用いて単一磁束量子回路を構成すると,テラヘルツ領域でも動作する超高速低消費電力デジタル集積回路の実現が期待できる.従来は構造の単純さから,高温超伝導薄膜をエッチングした薄膜側壁にジョセフソン接合のトンネル障壁層を形成するランプエッジ構造が主流であったが,最近では,より集積化に適した積層構造のジョセフソン接合も高い性能を発揮できるようになってきた.本稿では,高温超伝導ジョセフソン接合の最近の動向に関して,筆者らのグループの研究を中心に紹介する.

研究紹介
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