応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
77 巻, 5 号
『応用物理』 第77巻 第5号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
企画の意図
  • 『応用物理』編集委員会
    2008 年 77 巻 5 号 p. 488
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    結晶工学は,デバイスとして利用できる結晶の成長,評価,物性などをカバーする分野であり,応用物理においてほかの多くの分野へと発展する基盤技術と位置づけることができます.その中でもエピタキシー技術の進展はデバイスの開発に直結し,高電子移動度トランジスタ(HEMT),半導体レーザー,青色発光ダイオードなど身の回りの製品にも欠かすことのできないデバイスを生み出してきました.

    新しいデバイスを作ろうとするとき,新しい構造や結晶が不可欠になります.そして,その結晶成長技術を確立するとともに,結晶成長を制御しなければなりません.エピタキシャル成長において,成長層の結晶性を左右するのは下地となる基板です.しかし,基板として利用できる結晶の種類は限られており,多くの場合は,成長層と異なる基板結晶上へのヘテロエピタキシーを強いられます.

    結晶構造の違い,格子不整合,熱膨張係数の不整合などが問題となるヘテロエピタキシーでは,欠陥の発生を抑制して成長層の特性を十分に引き出すため,ヘテロ界面でさまざまな工夫が必要であるとともに,その成果がデバイス開発のブレークスルーにつながります.窒化物半導体の低温バッファ層はその代表といえるでしょう.一方,ひずみSiや自己形成量子ドットでは基板との格子不整合を巧みに利用しています.

    また,シリコンフォトニクスとして注目されているように,集積回路として高度なプロセス技術の完成したシリコンと化合物半導体の融合では,デバイスの高速化,多機能化,低価格化を求めてヘテロエピタキシーが必要とされます.さらには,金属基板上への半導体単結晶薄膜の成長や,グラファイトやシリコンなどの無機材料上の,あるいは異種有機材料上の有機分子成長も研究が進みつつあり,ヘテロエピタキシーの範疇は拡大しています.

    本号では,ヘテロエピタキシー技術の進展ならびに最近の話題を紹介する小特集を企画しました.結晶工学の中でも世界をリードする分野です.高真空,高純度,精密温度制御などの要素技術の進歩に伴い,成長装置は発展しています.しかし,結晶自体は自然の一部であり,結晶成長は自然の法則に従った状態で進みます.それゆえに,構造を人工的に制御するためには,結晶の特性や成長の背景にある物理を把握した対処対応が要求されます.成長層の結晶性を向上させるための技術,材料系による共通点や相違点などを概観することにより,ヘテロエピタキシーの現状を知るとともに,結晶工学の将来像を考える機会となれば幸いです.

総合報告
  • 朝日 一
    2008 年 77 巻 5 号 p. 489-499
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    半導体技術,特にIII-V族化合物半導体デバイス作製においては,デバイスが要求する微細な構造の形成が可能,異なる物質間のエピタキシャル成長が可能であることから,エピタキシャル成長技術が中心的技術の一つである.半導体へテロエピタキシャル成長技術は,デバイス構造の薄層化,横方向構造の微細化,原子層レベルでの制御性,さらには新材料系への展開の要求に応え,または先取りする形で研究が進んできた.そこでは,分子線エピタキシー(MBE),有機金属気相エピタキシー(MOVPE)が中心技術である.本稿では,1980年代半ばあたり以降の薄膜,特にIII-V族化合物半導体を中心に,エピタキシャル成長技術発展の状況をトピックス的に振り返り,その後,半導体へテロエピタキシーの現状をはやりトピックス的に報告する.

解説
最近の展望
  • 小椋 厚志
    2008 年 77 巻 5 号 p. 515-520
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    Si結晶にひずみを加えることでバンド構造を変調し,移動度の向上を達成する「ひずみSi技術」は,ポストスケーリング時代の最重要技術の一つである.ひずみSiの成否を担う重要な技術が,MOSFETのチャネルに相当する,浅く,狭い領域のひずみの絶対値と分布を正確に測定するひずみ評価技術である.本稿では,新たに開発した疑似線状光源を有するUV-ラマン分光法による種々の評価結果について紹介する.パターニングしたSiN膜がSiに導入するひずみの一次元分布を200nm間隔で測定し,SiN膜がチャネル領域にひずみを導入するメカニズムを明らかにした.また,ダミーゲートの除去により,ひずみ導入が飛躍的に増大するゲートラストプロセスにおいて,実デバイスでゲート長が短くなるにつれて,ひずみ導入が増大するサイズ効果を確認した.

  • 磯田 正二, 星野 聡孝, 倉田 博基
    2008 年 77 巻 5 号 p. 521-524
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    有機分子からなるデバイスに関してさまざまな形で研究が進められ,21世紀のデバイスとして大きな期待が寄せられている.そのデバイス構築の基本の一つでもある有機分子ヘテロエピタキシー研究を,格子間相互作用と分子間相互作用の観点から概観し,最近の課題を整理する.格子整合性,分子間相互作用による安定化,分子形態の変化などの成果について述べる.特に,有機分子の柔軟性は,有機界面に構造的かつ機能的な多様性をもたらすことから,解析実験法においても新しい方法を援用することは必須であるので,最近の分析方法についても記述した.

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