光技術と電子技術を融合する技術は,両技術が高度化するにつれて着実な進展をみせている.III-V族化合物半導体の発光素子は半導体レーザーを中心にして大きく進展し,Si基板上に微小な光回路を構築するための研究もSiフォトニクスとして進展している.一方,Si LSIは微細化だけでなく,機能を高めるために新たな材料を取り入れる動向にある.これらを将来統合することを背景にして,Si基板上に光素子・回路をハイブリッド集積する技術とSi LSIに発光素子をモノリシック集積する技術を中心にして,最近の研究開発状況を概観する.
地球温暖化は確実に進行し,かつ深刻になりつつある.こうした中,太陽電池を用いた太陽光発電システムは,深刻化する地球環境問題やエネルギー問題を解決する手段として,世界中から大きな期待が寄せられている.2100年には,世界のエネルギーの7割が太陽(光)発電で賄われるだろうと予想されている.こうした大きな期待や人類文明の維持発展への貢献のためには,太陽光発電に関するさらなる研究開発,特に,太陽電池の高効率化や低コスト化の努力が必要なことはいうまでもない.高効率太陽電池として,光電変換効率50%以上の実現が期待できるIII-V族化合物半導体を用いた集光型多接合太陽電池の研究開発動向を述べるとともに,将来展望について述べる.
現在,集積回路はスケール則の限界に達し,さらなる性能向上のためには光電子集積回路(OEIC)の実現が待たれる.Siは間接遷移型半導体であるため光デバイスの作製には不向きであり,OEICを作製するためにはGaAsなどの?-?族半導体をSiと組み合わせる必要がある.しかし,Si基板上にGaAsを成長した場合,多数の貫通転位が発生し,レーザーなどの光デバイスを劣化させる.OEIC実現のためには,転位の大幅な低減が必須である.本報告では,Si基板上に無転位のヘテロエピタキシャル成長を可能とするマイクロチャネルエピタキシーに関して,その概念ならびに研究の進展について説明する.
シリコンフォトニクスに向けた有望な発光材料の一つであるEr2SiO5 超格子結晶について,その成長過程および発光特性について述べる.Erを構成元素とすることにより高濃度のEr含有を可能とし,また均一な結晶場のためPL微細構造が観測される.Er2SiO5 超格子結晶は従来の希土類シリケイト(RE2O3-SiO2)相図に載らない特異な成長過程により形成される.そのためSi基板上に高配向Er2SiO5 超格子結晶薄膜が得られる.この成長過程を応用したシリコンフォトニクス用発光材料開発の新たな試みを紹介する.
Si基板上に共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode : RTD)など量子井戸構造を利用したデバイスを実現するため,CaF2/CdF2を中心にしたフッ化物ヘテロ系に注目し,そのヘテロエピタキシャル成長技術とRTDの試作を紹介する.この材料系で超薄膜ヘテロ構造を成長するには,CdF2とSiとが強い化学反応性をもっているため,これの制御が重要となる.CaF2 とCdF2,あるいはCaF2 とMgF2 の組み合わせによるフッ化物混晶の成長が,この課題の解決策を与え,デバイス特性においてもその有効性が示された.
サイズが小さく形状が制御された“マイクロプラズマ”のアレイ状集合体を,電磁波の分散関係を考慮して設計・配置することで,メタマテリアルとして機能させることができる.ここで,プラズマは,外部生成電力の調整で時間的に存在およびパラメーターが可変であり,特に比誘電率が負の媒質として働く点が特徴的である.具体例として,マイクロ波帯からテラヘルツ帯において生成できる,動的なフォトニックバンドギャップ材料および負の屈折率媒質の実現について説明する.
半導体ナノ粒子は,将来のナノスケール光・電子デバイスを構築するためのビルディングブロックとして高いポテンシャルを有している.新しい高効率な光デバイス実現のためには,ナノ粒子中の光励起状態を高度に制御する技術が求められている.ナノ粒子では粒子体積に対して表面積の割合が大きく,表面を介した電荷およびエネルギー移動などによる光励起状態の操作が可能であり,新しい光機能性の発現が期待できる.本稿では,半導体ナノ粒子・金属ナノヘテロ構造において,半導体ナノ粒子の光励起状態と局在表面プラズモンとの相互作用を通じて発現する特異な光学応答とそのメカニズムについて議論する.
有機半導体材料・デバイスについて,有機半導体の概念が生まれた1950年代から現在に至る研究開発ならびに応用技術展開の歴史的な過程を振り返りながら,有機半導体を用いるデバイスの基礎概念がいかにして構築されてきたかをまとめた.具体的な例として有機EL,有機薄膜太陽電池,有機薄膜トランジスタの研究開発を調べた.不純物がドープされていない真性半導体としてのワイドバンドギャップ半導体として有機半導体を正しく認識することがデバイス応用のキーポイントであったことを強調した.
放射光を利用することでさまざまな環境試料について革新的分析データが得られる.マイクロビームを用いたXRFイメージングとXAFSにより,Cd蓄積植物におけるCdの細胞レベルの分布とその化学状態が明らかになった.in situ XAFSと時分割DXAFSによりダイオキシンの生成プロセスが解明され,大気中の硫酸により黄砂の石灰が石膏化する過程がXAFSによりわかった.また,環境試料中の極微量ウランも波長分散XAFSにより状態分析が可能であった.さらに放射光複合X線分析により,ヒ素含有堆積性鉄鉱石におけるヒ素の蓄積機構が解明された.最後に,次世代のX線検出器,TES型マイクロカロリーメーターを使ったSEM-EDS分析が大気粉塵の1粒子分析に有効であることが紹介された.
大気環境保全のためには人的起源の大気汚染物質濃度のモニタリングを行い,実測値に基づき対策を講じる必要がある.本稿では,ガス採取を必要としない光学的手法による大気汚染物質濃度測定について述べる.