本稿では,資源リスクへの視点を明確にし,その解決の方向について述べる.資源リスクは物質利用にかかわる三大リスクの一つであり,持続可能性の三つの観点や,四つの資源制約,について解説する.資源リスクの解決のために四つの戦略がある.元素戦略プロジェクトと都市鉱山開発は日本が世界に先駆けて進めているが,その解決すべき課題と発展の方向についても言及する.
最近,環境保全と資源・エネルギーの節約の同時実現を目指して,超臨界・亜臨界流体を用いて,従来法では処理が困難で,大量に排出されている廃棄物を適正処理し,有効利用するための研究開発が活発に行われている.ここでは,(1)超臨界・亜臨界流体の溶媒特性を簡単に説明した後,実用化が間近な応用例として,(2)二段式亜臨界水酸化法による窒素含有バイオマス廃棄物の完全かつクリーン燃焼と熱エネルギーの回収技術,(3)亜臨界水によるバイオマス+プラスチック混合廃棄物の高カロリー粉末燃料化技術,(4)超臨界メタノールによる炭素繊維強化プラスチックのリサイクル技術を取り上げて説明する.
原子力ルネサンスを迎える立場から,この時期に期待される放射線研究として,放射線計測技術の開発,放射性核種の分布と挙動・線量評価,生体影響研究を取り上げ,個別課題として,バックグラウンド環境放射線のデータの継続的取得と変動要因の解明,原子力施設からの放出核種,NORM,ラドン,航空機乗務員や宇宙飛行士の被ばく影響などについて述べた.
近年,地球温暖化が起因と考えられる自然災害,特に水害の増大が懸念されている.水に関連した課題として,水域管理による生物多様性への影響,人口増加や生活様式の変化に伴う生活用水の増加,水道水の安全性の懸念からボトル水の需要増大,食料自給率とバーチャルウォーターの関係,バイオマスの生産増加に伴う農業用水の需要増加,水需給の地域的な偏りなどが挙げられる.造水に伴うエネルギー消費量の増加,ボトル容器の廃棄処分の問題などもあるように,水問題は多くのエネルギーや環境問題とも関連している.環境負荷低減には,水道水に関するイメージの改善や,中水の再利用,水熱の利用も積極的に利用・普及していくことが望まれる.
IPCCにより発行された「二酸化炭素の回収貯留に関する特別報告書」に沿って,CCSの概要を述べるとともに,気候変動対策としてのCCSの重要性に対する認識の高まりにつれ,加速的に展開している国内外の政策動向について紹介する.
プラスチックを対象とした個々のリサイクル方法の開発が進んでいるが,一般混合廃プラスチックや金属類と複合化されたものからプラスチックと金属類のそれぞれをリサイクル・回収することは困難である.しかし,プラスチックを化学原燃料に転換するフィードストックリサイクルと既存技術を融合(トランスファーテクノロジー)することにより,新たなリサイクル手法が確立できる.本内容では,油化困難なPET(ポリエチレンテレフタレート)を消石灰を用いて,ベンゼンを主成分とする油分に転換する方法と既存の無機原料製造プロセスとの融合,PVC(ポリ塩化ビニル)の脱離型脱塩化水素反応を利用した金属回収プロセス,また置換型脱塩素反応を利用したPVCへの新機能性付与によるアップグレードリサイクルなど,その可能性を紹介する.
省エネルギー性能をもつ窓ガラスは,民生部門におけるCO2 削減に大きな効果をもつと期待される部材の一つである.透明な状態と鏡の状態にスイッチングできる調光ミラー薄膜を用いることで,太陽光を効果的に遮〔しゃ〕蔽〔へい〕して冷房負荷を大きく低減できる窓ガラスが実現できる.マグネシウム・ニッケル合金薄膜を用いた調光ミラー材料を中心に,基本的な調光ミラー薄膜の性質について概説し,また,実際に調光ミラー窓ガラスを建物に実装して測定した省エネルギー性能を紹介する.
プラズマを利用した水再生技術について,その研究の歴史と特徴を概観し,特に水中プラズマ生成方式と難分解物質処理の研究状況およびその課題について述べる.また,気相と液相とが接する界面でプラズマを生成すると,難分解物質を高速かつ高効率で分解できることを示す.
温度を測定し,正しい情報を得ようとするとき,数多くの温度センサーから適格なものを選び,何のために測定するか,またその情報をどう利用するかが,ポイントになる.熱電対・抵抗体および放射温度計を使用するには,周囲状況によって選択する必要がある.