応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
80 巻, 1 号
『応用物理』 第80巻 第1号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
企画の意図
総合報告
  • 新田 浩史
    2011 年 80 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    第3期科学技術基本計画では,科学技術の目指すべき目標の一つとして,「安全が誇りとなる国 − 世界一安全な国・日本を実現」を掲げており,政府一体となって安全・安心科学技術に取り組んでいる.文部科学省では,現在,安全・安心科学技術に関する二つの研究開発プログラムを実施し,主として爆発物,化学剤,生物剤の検知など,分野横断的なアプローチの下,社会への実装を重視し,対策を行う関係省庁との連携を重視した研究開発を行っている.現在,検討が進んでいる第4期科学技術基本計画では,基礎研究の重視に加え,課題解決型の研究開発アプローチが重視されており,安全・安心科学技術についても,その重要性はますます高まるだろう.

解説
  • 門 勇一
    2011 年 80 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    テラヘルツ波の特長を災害現場における有毒ガスセンシングや生命体捜索用イメージングに活用し,被災者救援や二次災害防止などに役立て,被害を最小限にすることに貢献できると考えられる.テラヘルツ帯の遠隔分光センシングシステムとイメージャの試作結果とシステムを構成する重要な要素技術を紹介し,今後の研究課題や展望ついて述べる.

  • 堀内 茂木
    2011 年 80 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    緊急地震速報のための自動解析システムが開発され,地震検出後2〜3秒間で,99% の地震の震源パラメータが,ほぼ正確に決定できるようになった.気象庁はこのシステムを導入し,2007年10月より,テレビやラジオによる緊急地震速報の実運用を開始した.課題は,震度の推定精度が低く,震源から30km以内で間に合わないことである.震度マグニチュードを導入し,家庭用地震計を普及させることにより,主な課題は解決できると思われる.東海,東南海,南海地震などの大地震発生の場合,大部分の地域で,大きな揺れが到着する30〜50秒前に緊急地震速報が配信されるはずである.緊急地震速報は,大地震の災害軽減に極めて有効である.

  • 石山 敦士, 野田 耕司
    2011 年 80 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    重粒子線(炭素線)がん治療は,わが国が世界に先駆けて導入・発展させてきた治療法・技術であり,外科手術が困難ながんや高齢者の治療に多くの実績をあげてきた.この優れた治療法を地域医療や海外に広く普及させていくためには,その主要部分である重粒子加速器の小型化・高効率化・低コスト化が不可欠となる.本報告では,高い普及率が期待できる次世代がん治療用加速器として開発が進められている「高温超伝導サイクロトロン」について,重粒子線がん治療の現状とともに概説する.

  • 松本 勉
    2011 年 80 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    バイオメトリクスは指紋,虹〔こう〕彩〔さい〕,静脈など一人ひとりに固有の特徴を用いて機械が人間を確認する技術であり,生体認証と呼ばれることもある.バイオメトリクスは便利な個人認証技術として身近な存在となってきた.また,紙やプラスチックカードや半導体チップなどの人工物においても,細かく見れば一つひとつに「個性」ともいうべき固有パターンが存在する.これを個体や個体の種類の認証に用いようとする技術を人工物メトリクスという.本稿では,これらの技術の仕組みと利用上およびセキュリティ評価上の要点を示す.

  • 柴﨑 一郎
    2011 年 80 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    われわれの身の回りにあるビデオ,パソコン,携帯電話,デジタルカメラ,エアコン,洗濯機,自動車などには,InSbやInAs,GaAsなどの薄膜や超薄膜を用いたホール素子が磁気センサとして多数使われている.中でも電子移動度が最も大きいInSbの単結晶や薄膜は,ホール素子へ応用するために古くから研究され,現在,一番活躍している.真空蒸着技術のような,最も簡単,かつ,初歩的と思われる多結晶の薄膜作製技術や分子線エピタキシ技術で作製されたホール素子が,われわれの生活に深く浸透し,電子・情報分野のみならず省エネルギー分野から電力制御など安全・安心分野にまでかかわっていることを述べる.

最近の展望
  • 後藤 英司
    2011 年 80 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    植物工場は実用植物を工場的に生産する施設であり,わが国では葉菜類を中心に商業利用されている.植物工場では栽培室内の日長,光強度,光波長,温湿度およびCO2 ガス濃度を植物生育の最適条件になるように制御する.屋外の気象変化の影響を受けないため,高品質の作物を周年,工場的に生産することができる.近年,植物工場の光源にLEDを利用する研究開発が進み,実用規模の施設を用いた試験も始まっている.本稿では,LEDの植物育成における特徴と植物工場への展開について解説する.

研究紹介
  • 徐 超男
    2011 年 80 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    世界で初めて開発した「応力発光体」は,機械的な刺激に応答して繰り返し発光可能な材料である.粉末状の応力発光体は,それぞれのセラミック微粒子が力学的刺激により発光するセンサの役割を果たす.微粒子を含有した塗料を対象物に塗布すると,応力が集中した箇所の微粒子が発光する.最近,筆者らは外側から直接見ることのできない構造物の欠陥とその危険レベルを,応力発光体の発光強度分布を利用して可視化する計測技術を開発している.測定した発光強度から構造物に発生したひずみの状態や欠陥レベル,亀裂やひび割れの発生・進展を可視化できる.本文では構造体の欠陥検査の重要性と現状説明を交えて最近の研究進展を紹介する.

  • 都甲 潔
    2011 年 80 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    爆薬などの低分子化合物を超高感度で検出するにおいセンサを開発した.爆薬(抗原)を認識する抗体との抗原抗体反応を利用し,表面プラズモン共鳴(SPR)法で抗原濃度を定量した.検出部の金薄膜表面には,末端に抗原類似物質を結合させた自己組織化単分子膜(SAM)を形成し,センサチップの長期繰り返し使用を可能とすると同時に数十pptという高感度を実現した.小型SPRセンサを作製し,実証試験を行い,爆薬の簡易迅速計測に成功した.

  • ―3軸加速度センサによるSupport Vector Machineを利用した行動認識―
    梅澤 伊織, 長谷川 孔明, 中内 靖
    2011 年 80 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2011/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    本稿では,近年多発しているとともに社会的問題となっている児童の連れ去りや暴行・猥〔わい〕褻〔せつ〕被害などの諸問題について,児童の登下校時の安心・安全を見守る新たな防犯システムとして開発した,クライムレコーダシステムを紹介する.本システムは,児童の登下校時の様子を常時モニタリングすることにより保護者による監視が可能となっている.また,万が一,児童に何らかの危害が及んだ際には,センサによって自動検知し,保護者に即時に通知することができる.本稿では,特に3軸加速度情報を元にSupport Vector Machineを利用することにより,直立,歩く,走る,腕を引かれる,抱きつかれるといった状況を認識することのできるシステムの実装ならびに検証について紹介する.

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