MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)による小形のセンサは,システムの入力デバイスとして重要な働きをしている.ピエゾ抵抗型や容量型の圧力センサ,SAWデバイスによるワイヤレス圧力センサ,ロボット用触覚センサネットワーク,加速度センサや角速度センサ(ジャイロスコープ),光スキャナを用いた距離画像センサ,赤外線イメージャ,FTIRやガスクロマトグラフの成分センサ,流体用のフローセンサ,医療用の極細光ファイバ血圧センサや体内埋め込み圧力センサについて述べる.
情報通信技術(ICT)の進展に伴い,世界最先端のブロードバンドを自在に利用できる環境が整いつつある.ICTのこれからの方向性は「社会基盤としてのICT」と「エクスペリエンスとしてのICT」の二つである.特に,ICTを使うことで,環境,都市,農業,医療,労働などのそれぞれの産業における新たな展開を考え,産業構造,経済構造,社会構造の大きな変革につなげていくことが必要である. ICTがこのように新たな展開をみせる中で,時系列データであるストリームデータを集めることの重要性を示すとともに,ユビキタスセンサネットワークへの強い期待と課題とを示す.
ロボットの要素として,ソフトウェアやコンピュータは高性能なものが使えるようになったが,センサはロボットに十分には搭載されていないといってもよい.ロボットに搭載されるセンサに求められるものを,機能,寸法,質量,価格などの観点から紹介する.
バーチャルリアリティ(VR)は,人間の行動や意図を検出し,感覚フィードバックを行うことにより,目の前の物理世界とは異なる世界を体験する,もしくは物理世界に対して情報技術による加工を行う技術である.これは,広い意味では人間にとっての物理世界と情報世界をどのようにして接続するかという技術であり,センシング技術とは表裏一体の関係にある.本稿では,現在のVR分野においてどのようなセンサ技術が利用されているかについて紹介し,今後の動向について展望する.
昨今,エレクトロニクスと医学・生物学の融合領域として著しい発展をみせるバイオセンサに関する研究の現状と将来展望について解説する.さまざまなナノ構造を利用して新たな生体検出の原理を創出する試みや,生体分子を標識なしに電気的に検出しうることで近年注目されているバイオトランジスタの取り組みについてその現状と将来の動向を展望する.
光ポンピング法により生成したアルカリ金属原子のスピン偏極を用いて磁場を計測する光ポンピング原子磁気センサと,その生体医工学分野への応用研究を紹介する.光ポンピング原子磁気センサは,特にスピン偏極の緩和レートが小さくなる状態においてSQUIDをはるかに凌〔しの〕ぐ超高感度(〜10aT/Hz1/2)が理論的に予測され,かつ冷却装置を必要としないため,光ポンピング原子磁気センサを利用した生体磁気計測や超低磁場MRI装置は,小型化や低コスト化が可能であり,医用イメージングのイノベーションや脳科学の進展などに大きく貢献すると期待される.
現代の高速・大容量通信を担う基幹デバイスである光ファイバは,その開発当初から通信用途にとどまらず,センサとして活用する研究開発も盛んに行われてきた.本報では,都市に立ち並ぶビルや,津々浦々に広がる道路,鉄道などの社会基盤を建設する建築・土木分野(建設分野)における光ファイバセンサの研究開発,および適用事例を紹介し,あわせてこれらの有用性および課題を検討する.
筆者らは,ナノテクノロジーやフォトニクスなどの最新テクノロジーに着目したナノバイオセンシングに関する研究とその実用化を進めており,ここでは,多様な金ナノ構造とそこから発現されるナノ光学特性(局在表面プラズモン共鳴,干渉効果)や,電気化学を利用したバイオセンサの最先端研究の事例について紹介する.
テラヘルツ(THz)電磁波のセンシング技術は,無機・有機材料,生体系,宇宙・地球環境など自然界の多岐にわたる分野で強力な計測ツールとなることが期待されている.ところがTHz周波数帯は,エレクトロニクスを駆使した電子制御の高周波限界であり,オプティクスやフォトニクスを駆使した光制御の低(光子)エネルギー限界でもある.そのためTHz帯は,幅広い電磁波帯の中で発展が取り残された領域になっており,THz電磁波の高機能な計測には新奇な物理機構やデバイス構造が要求される.本稿では,カーボンナノチューブや半導体量子構造を用いた新しいTHz検出・イメージング技術について紹介する.
嗅覚ディスプレイとは人に嗅覚刺激を提示する装置である.筆者らは高速開閉電磁弁方式を用いて,多成分の要素臭を任意の比率でリアルタイム調合できる嗅覚ディスプレイを開発した.そして,この嗅覚ディスプレイを用いてコンテンツ制作を行った.制作者の意図が体験者に伝わる工夫を施したうえで香る映画を制作し,適切な場面に適切な香りをつければ印象に残る場面をある程度制御できることがわかった.また,インタラクティブ性を取り入れた香る料理ゲームのように誰でも楽しめるコンテンツを開発し,国内外の多くの展示会で実演した結果,少しずつ嗅覚ディスプレイが社会に認知されるようになってきた.
無限周期ポテンシャルを前提にブロッホの定理を用いて導かれる波数空間におけるバンド構造と,有限周期ポテンシャルに対する実空間におけるバンド構造との対応を,エネルギー準位の分裂および透過係数のポテンシャル数依存性の観点から具体例も用いて解説する.また,電場が存在するときの実空間でのバンド構造の記述の仕方に対する疑問点についても触れる.