応用物理
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80 巻, 4 号
『応用物理』 第80巻 第4号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
企画の意図
解説
  • 岩永 敏秀
    2011 年 80 巻 4 号 p. 271-276
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    LED単体の測光・測色では,JIS C8152,CIE127に準じた測定が求められる.①標準LEDとの比較測定を行う,②CIE平均化LED光度の条件を用いる,③規定された積分球を使用し,適切な補正を行うことなどで再現性のある測定を実現できる.LEDモジュールやLED照明器具などの測光,測色の場合,①異色測光誤差,②LEDの温度特性や周囲温度の管理,③LEDの指向性,④自己吸収などLEDの特性に対応した測定が必要となる.

  • 三上 明義
    2011 年 80 巻 4 号 p. 277-283
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    面光源である有機EL素子では,外部に放出される発光の他,薄膜内を導波する伝搬光,基板内に閉じ込められる伝搬光があり,更に励起分子の放射場と金属電極との相互作用で生じる表面プラズモン共鳴,電子散乱,電子励起などの非伝搬光により放射エネルギーが散逸している.これらの光学損失により,素子の外部量子効率は20〜30%の範囲に制限されており,光取り出し効率の改善が期待されている.本稿では,これら広範囲の光学現象を体系的に捉える解析および実験事例を紹介すると共に,高効率化に向けた開発指針と可能性について述べる.

  • 中西 洋一郎
    2011 年 80 巻 4 号 p. 284-289
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    人類は照明光源として,たき火,松明,蝋〔ろう〕燭〔そく〕,ランプなど「火」を使った明かりを使用し,19世紀後半には電気を使った照明を発明し,今日まで白熱電球や蛍光灯による照明に慣れ親しんできた.しかし,最近になって省エネルギーやエコロジといったことが叫ばれるようになって,高効率で且つ水銀を使用しない照明光源が求められるようになった.そこで進展著しい白色LEDおよび有機LEDが次世代照明光源としてにわかに注目されるようになり,精力的に開発が進められている.そこで,本稿では白色LED照明光源にとって不可欠である蛍光体について紹介する.

最近の展望
研究紹介
  • 夫 勇進, 城戸 淳二
    2011 年 80 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    我々は,複数ユニットの有機EL素子を電荷発生層を介して直列に積層したマルチフォトンエミッション素子構造を提案している.本構造では,1ユニット素子と同じ電流量でそれぞれの発光層からの発光が得られるため,ユニット数倍の電流効率を得ることができる.本構造を利用した超高効率緑色リン光有機EL素子および長寿命橙色蛍光有機EL素子について報告する.

  • 菰田 卓哉
    2011 年 80 巻 4 号 p. 300-303
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    白色有機EL照明技術の実用化が射程距離に入ってきた.さまざまな製造技術も検討され始め,一部サンプル出荷も始まった.最近では,寿命・効率とも大幅に改善され,さらに高演色性向上も同時に実現できるデバイスの開発が進んでいる.本稿では,スタートラインに来た有機EL照明技術の現状とその将来の方向性について解説する.

  • —高効率な三重項から一重項励起準位への逆エネルギー移動の実現へ—
    安達 千波矢, 佐藤 圭悟, 遠藤 礼隆, 甲斐 孝弘
    2011 年 80 巻 4 号 p. 304-308
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    もし,一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差を小さくすることができれば,通常は,その遷移確率が小さい三重項励起状態から一重項励起状態への逆エネルギー移動が高効率で生じ,熱活性化遅延蛍光(Thermally Stimulated Delayed Fluorescence : TADF)の発現に至る.適切な発光分子を設計すれば,高効率な逆エネルギー移動過程が実現でき,将来の有機LEDに大きな変革をもたらすと期待される.

  • 船戸 充, 川上 養一
    2011 年 80 巻 4 号 p. 309-313
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    蛍光体フリーの白色・多色発光ダイオード(Light-emitting diode : LED)を開発した.窒化物半導体の結晶再成長により形成した3次元微細構造上にInGaNを発光層としたLEDを作製すると,微細構造を構成するファセット結晶面により発光色が異なる.この異なる発光色を加色混和することにより,白色・多色発光を得ることに成功した.また,このLED方式では,パルス電流駆動により,外部からの発光色の調整が可能であることを実証した.

  • 中原 健, 川﨑 雅司
    2011 年 80 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    酸化亜鉛(ZnO)系ヘテロ接合を分子線エピタキシー法で成長し,紫外発光ダイオードを作製した.薄膜の高純度化・高品質化のため,ZnO基板の清浄化,基板ホルダ材料の選定,基板温度計測方法の確立などに注意を払った.窒素ドープ源としてアンモニアを,ZnO基板としてZn極性面を採用することで,ワイドギャップ(MgZn)Oのp型化に成功し,30mAの注入電流で70μWに達するバンド端近傍の紫外(380nm)発光を得た.

  • 平山 秀樹, 藤川 紗千恵, 塚田 悠介, 鎌田 憲彦
    2011 年 80 巻 4 号 p. 319-324
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    深紫外LED,LDは,殺菌・浄水,医療,照明,高密度光記録,環境破壊物質の高速分解処理など幅広い応用が考えられ,その実現が期待されている.本研究ではAlGaN系半導体を用いて222〜351nmの広い波長領域の深紫外LEDを実現し,特に殺菌用途波長において実用レベルの高出力を実現した.パルス状ガス供給法を用いた低貫通転位密度AlN結晶成長法を開発し,深紫外発光効率を飛躍的に向上させ,50〜80% 程度の高い内部量子効率を実現した.また,多重量子障壁の導入により電子注入効率を大幅に向上させ,CW出力30mWの高出力深紫外LEDを実現した.

  • 村瀬 至生
    2011 年 80 巻 4 号 p. 325-328
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    量子ドット(直径数ナノメートルの半導体粒子)は,発光波長が自由に変えられる,輝度飽和しにくい,スペクトル幅が狭い,吸光係数が大きいなど既存の蛍光体にない特長をもつ.このため,高演色性で高輝度の照明を実現できる可能性がある.一方で,表面積比が大きいために表面に欠陥ができると発光特性が劣化するので,量子ドットを適切に保護するマトリックスが不可欠である.我々はこのマトリックスとしてガラスに着目し,ゾル -ゲル法を駆使して従来になく丈夫で高輝度の蛍光体を作製した.バイオ用蛍光試薬としての応用が進んでいるが,照明用蛍光体としても注目される.

  • 佐藤 利文
    2011 年 80 巻 4 号 p. 329-332
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    分散型ELは単純な構造と安価な印刷プロセスで作製可能な発光素子であるが,輝度や発光色など解決すべき課題があることは周知である.有機色素分散型ELは,従来の分散型ELの蛍光体層に有機色素をドーピングした極めてシンプルな構造であるにも関わらず,高輝度化,高演色性を実現した素子である.そのドーピングされた有機色素がアシストドーパントの役割を担い,無機蛍光体の発光から有機色素の発光まで,損失の少ない光の受け渡しが行われていることが本素子の大きな特長である.本稿では,有機色素分散型ELの素子作製から評価まで,輝度,EL発光スペクトルを中心に報告する.

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