レアメタル,レアアース元素のリサイクルについて現状を概括的に解説した.レアメタル,レアアース元素のリサイクルは,社会システム,固体分離技術,化学精製技術から支えられており,直接純粋科学から貢献ができるのは,化学精製技術の基本原理であることを認識することから始めなくてならない.
技術的には,特に固体選別技術が重要であり,その部分の本質的な学理を追求する必要がある.現状の紹介として国で行っているリサイクルプロジェクトの成果ならびにハイブリッドカーのモータの解体例を示した.いずれも大変泥臭い技術であるが,リサイクル技術はここから始まることを理解することが重要である.
将来の真の循環型社会を形成するために,いかにレアメタル,レアアース元素のサプライチェーンを確立するのかが,我が国の産業構造のあり方を検討するうえでも重要である.
バイオマスは再生可能エネルギーの中で唯一の炭化水素資源であるため,石油や石炭などの化石資源代替エネルギーとして注目されている.特に,輸送用燃料の中で,自動車燃料代替になるバイオエタノールやバイオディーゼル燃料の製造技術の開発が重要になっている.また,バイオマスのガス化による合成ガスや水素製造技術も,将来の再生可能水素社会の構築に向けて注目されている.
産業技術総合研究所・バイオマス研究センターでは,主として食料と競合しない木質バイオマスなどのリグノセルロースを原料とし,第二世代のバイオエタノールをつくる研究,およびガス化・ガスクリーニングによって製造された合成ガスからのフィッシャー -トロプシュ(F-T)触媒反応によるディーゼル燃料をつくる研究(BTL : バイオマス・トゥ・リキッド),ならびにこれらのバイオマス転換プロセスのシステム評価技術の開発研究を行っている.このような研究に基づいて,持続可能なバイオマスリファイナリー併産システムを発展させ,将来の低炭素社会を構築すべきであろう.
あらゆる電気・電子機器において高効率の電力変換が求められている.SiCパワーデバイスは,Siに比べて高耐圧,低損失,高速スイッチングという特徴を有しており,これを用いれば高効率で小型の電力変換器を実現することができる.近年,SiC結晶成長およびデバイス作製技術が急速に進展し,ショットキー障壁ダイオードとパワー MOSFETの実用化が始まっている.本稿では,パワーデバイス応用におけるSiC半導体の特徴と材料開発の現状,およびSiCパワーデバイス研究開発の進展と課題について紹介する.
ライフサイクル評価は,さまざまな製品やサービスの環境面での性能を定量的な評価に有効な手法である.ここでは,太陽光発電システムのライフサイクル評価事例を紹介するとともに,太陽光発電システムのライフサイクル評価に関するガイドライン,ならびに太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する今後の課題について記す.
Thermophotovoltaic (TPV) systems offer a unique, solid-state approach to converting heat into electricity based on thermal radiation. TPV is particularly suitable for certain classes of problems that are difficult for standard engines, such as long, remote missions where repairs are difficult, and portable generation where space and weight are at a premium. While standard thermophotovoltaics are limited in their conversion efficiency, photonic crystals can improve performance by an order of magnitude for a number of systems. Finally, two exemplary systems are discussed : TPV μreactors for portable power generation in a mm-scale form factor, and solar TPV for long-term off-grid power generation from sunlight. In both cases, photonic crystals can enable an order of magnitude enhancement in performance, implying potential performance exceeding that of many other well-known technologies, such as single-junction photovoltaics.
将来のエネルギーのあり方について,見直しが迫られている中で,自然エネルギーの利用拡大と並んで,分散型エネルギー体系の構築や化石エネルギー資源の高効率利用も重要である.本稿においては,そのための切札として期待される,燃料電池を核にした水素エネルギー技術について,最近の動向を概説するとともに,材料・デバイス技術として,応用物理分野との接点や学術的な関連について述べる.
農業・畜産分野での精密管理のためオンサイトモニタリングの要望が高まっている.我々は,さまざまな外乱も計測可能なマルチモーダルセンサによってオンサイトモニタリングを実現しようと考えている.マルチモーダルセンサは5mm角の小さなSiチップの中にpH,電気伝導度,温度のセンサを一体化した構造となっている.このセンサは土壌や胃の中の水溶液を対象物とし,この水溶液が導電性のため各センサ信号間でクロストークが発生してしまうが,センサ駆動方法,出力信号処理の改善により同時・リアルタイム計測に成功した.また,無線機器と一体化させ牛の胃の中の電気伝導度と温度の変化のワイヤレス・リアルタイム計測に成功することができた.
光触媒は,太陽光エネルギー変換及び次世代環境浄化材料として注目されているが,実用への最大の課題は高感度な可視光応答型光触媒材料の開発である.特に温暖化問題の解決の切り札として期待されている「人工光合成」技術の実現には,可視光領域での高い量子収率を有する材料の開発が必要不可欠である.本研究では無機材料でありながら,植物の光合成の量子収率に匹敵する酸化力を有する材料Ag3PO4 を見いだした.その高活性の起源を解明することにより,今後の物質探索に関して新しい視点を拓くと共に,環境・エネルギー分野への応用研究に新たな発展をもたらすことを期待する.
我が国の風力発電設備における雷害のなかでは,ブレード(羽根)の被害が深刻である.特に日本海沿岸で発生する冬季雷は,上向きに放電が進展するので,風車への落雷が極端に増えることと,大きな電荷量の雷が多いことから,極めて危険である.電力中央研究所では塩原実験場の高電圧発生装置により,風車ブレードの破損,焼損のメカニズムやレセプタの保護効果を明らかにする目的で放電実験を行った.風車側から雷電流の一部が外部につながる線に流れ出す逆流雷による電源線や通信線の避雷器やサージ防護デバイス(SPD)の破損が多いことも,風力発電設備の冬季雷被害の特徴である.
ヒョウタンゴケの原糸体細胞の成長パターンを調査し,潤沢な培養条件では指数増殖期が認められたことから,本種が裸地環境へいち早く適応し繁茂できる生存戦略をもつ種類である可能性について意見を述べた.本種の乾燥粉末を利用した金属回収方法は,一般にカーボンニュートラルなプロセスとして分類される.私たちはさまざまな環境制御要因条件で原糸体細胞を生産し,鉛吸着材としての品質評価を実施した.400L規模に大型化した装置で生産した原糸体細胞においても,鉛吸着材としての十分な性能があることが確かめられた.したがって,私たちは,原糸体細胞を鉛回収するための新素材として位置づけ,産業利用できることを提案した.
波として存在する結晶内電子を記述する波数空間について述べた.ブロッホの定理を導き,波数空間の周期性とブリルアンゾーンに続いてブロッホ状態の波束を導入して,ブロッホ電子の速度,加速度,有効質量などを導いた.