応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
81 巻, 11 号
『応用物理』 第81巻 第11号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
巻頭言
企画の意図
解説
  • 中西 知
    2012 年 81 巻 11 号 p. 892-897
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    医用X線Computed Tomography (CT)は,高分解能・広範囲撮影が可能であること,および非侵襲性・簡便性の観点から,スクリーニング・精密検査の両方において医療の場で活躍をみせている.またArea Detector CT(ADCT)の登場により,従来の形態情報の他に,動態情報や機能情報などの4D情報(3D+時間)を加えた新たな診断領域として期待されている.一方,X線を用いることから,被ばくは避けられない問題である.ここでは,CT原理・装置構成を中心に,かつ被ばく低減に関する取り組みを紹介したい.

  • 飯田 秀博
    2012 年 81 巻 11 号 p. 898-904
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ポジトロン断層法(PET)および単一光子断層法(SPECT)を使った画像診断では,生物学的および生化学的な機能を低侵襲に観察することができる.がんや循環器疾患,脳変性疾患をはじめ多くの医療に貢献し,さらに新規治療法の開発になくてはならない技術になりつつある.最も重要な特長は,標識化合物の体内動態を高感度でかつ定量的に計測できることである.病態評価だけではなく治療効果の予測や,治療法の有効性評価に利用される.撮像技術だけでなく機能画像の定量化に不可欠な基盤技術の標準化が現在の課題である.

  • 山本 徹
    2012 年 81 巻 11 号 p. 905-911
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    非電離放射線(電磁波)を用いるMRIは,放射線医学分野の画像診断技術であるが,被曝の影響がないという大きな特長を有し,現在もなお,その適用範囲の拡大が期待されている.それに応えるべく,基本画質が向上し,さまざまな生体情報を反映する新しい画像が登場し続け,MRIはさらなる進化の可能性を秘めている.本解説では,MRイメージングの仕組みについてNMR現象から直感的に説明し,撮像原理で用いられるフーリエ変換に言及しつつ,MRI撮像法の核心的概念であるk 空間について概説する.さらに,MRI技術の多様性を将来展望も含め述べる.

  • 尾木 靖夫
    2012 年 81 巻 11 号 p. 912-917
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    高齢化社会の到来により,がんによる死亡率が増大している.放射線治療は,手術や化学療法とともに近代におけるがん治療の三つの柱の一つであり,もともと低侵襲という点に特長を有していたが,医療現場・企業などの絶え間ない努力により,近年ではより患者に負担が少なく治療効果も部位によっては手術と肩を並べる治療法が次々と開発された.これにより,体力の劣る高齢ながん患者が増えていく中で,放射線治療の重要性が年々増している.本稿では放射線治療の歴史,急速に発展する高精度治療技法と残された課題について解説し,その課題に対し新規開発した高精度画像誘導型放射線治療装置MHI vero4DRTの概要について紹介する.

  • 高田 義久
    2012 年 81 巻 11 号 p. 918-923
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    陽子線は人体に入射するとそのエネルギーに応じた深度にブラッグピークと呼ばれる独特の線量ピークを形成する.それを悪性腫瘍に集中させ増殖を止める一方で,照射に伴う周辺重要臓器の障害を減らすことができ,質の高い治癒が可能になる.実際,これまで累計8万人以上の患者が陽子線治療を受け,良好な結果を得ている.陽子線は,特に腫瘍周辺に重要臓器が近接している場合や,正常臓器の線量レベルに対する厳しい制限がある小児がんの治療などに威力を発揮する.近年,陽子線の特長が注目され,陽子線照射施設が急増している.ここでは,その歴史を簡単に振り返り,その物理工学的側面に焦点を当てて,照射技術とその発展について述べる.

  • 金井 達明
    2012 年 81 巻 11 号 p. 924-929
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    高エネルギー炭素線を使った放射線治療は,日本とドイツで行われ高い治療成績が得られている.このことから,日本,ヨーロッパ,アジアの各地域で後に続く重粒子線がん治療施設の建設が進められ予定されている.炭素線のような高LET放射線を治療に利用していくためには,さまざまな物理・生物学的な知識が必要である.高い臨床成績に結びつく物理・生物学の学術的解明はいまだ未熟であるといっていい.どのように治療を行っているかの一端を紹介する.

  • 櫻井 良憲
    2012 年 81 巻 11 号 p. 930-935
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ホウ素中性子捕捉療法とは,中性子吸収断面積の大きい核種であるホウ素10と低エネルギー中性子との反応により発生する重荷電粒子により,がん細胞を選択的に破壊する療法である.原理的に細胞レベルでの治療が可能であり,高いQOLが期待できる.従来の悪性脳腫瘍および悪性皮膚黒色腫に加えて,近年では,頭【とう】頸【けい】部【ぶ】腫瘍,肝腫瘍,胸膜中皮腫などにも適応拡大が進められている.本稿では,まず,BNCTの歴史的背景について記述する.次に,理論的背景として,BNCTの原理と特徴について解説する.続いて,京都大学原子炉実験所で進められてきた基礎研究および臨床研究を踏まえて,技術的背景について解説する.最後に,現状と将来展望について記述する.

  • 山田 崇裕
    2012 年 81 巻 11 号 p. 936-942
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    放射線は,医療,工業,農業など,さまざまな分野で広く産業利用されている.放射線測定は,放射線利用における品質確保や放射線防護の観点で欠かせない技術であるが,一方で放射線といっても放射性核種から放出されるもの,加速器によるものなど,種類やエネルギーもさまざまである.したがって,放射線測定にあたっては,その目的とどの種の放射線のどういう性質を測定するかによって,適した検出器またはそれらの組み合わせを選択しなければならない.福島第一原子力発電所の事故の影響を受け,放射線測定は図らずも身近なものとなった.このような事故後における状況下では,必ずしも最適な測定器を入手し測定できる状況にあるとも限らず,備えある測定器や入手可能な測定器でどうすればどこまでのことができるかも重要になる.本報では基本的な放射線測定原理について概説し,放射線防護にかかわる測定を中心に,目的に応じてどのような測定器が用いられているか解説する.

  • 赤羽 恵一
    2012 年 81 巻 11 号 p. 943-947
    発行日: 2012/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故により,深刻な社会的被害がもたらされた.国民の関心の高まりに伴い,風評被害や放射線診療拒否などの弊害も出ている中,放射線の線量・リスク・防護体系を理解しておくことは重要である.医療放射線による被ばくや福島の問題も交えて概要を述べる.

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