Ⅲ(13族)―Ⅴ(15族)族化合物半導体の仲間であるGaAsやInPでは,同種基板を用いて薄膜成長が可能であるのに,Ⅲ族窒化物半導体はそれができないというハンディキャップを背負いながら,サファイアやシリコンなど異種基板上に薄膜成長させて,その能力を少しずつ発揮してきた.今後,省・創エネルギー要求がますます高まる中,潜在能力を最大限発揮するためにⅢ族窒化物半導体バルク基板にかかる期待は大きい.本報告では,基板用バルクGaN単結晶成長の現状,およびそれを用いた場合の青色LED,HFETおよび太陽光発電素子について紹介する.
窒化物半導体ヘテロ接合界面に誘起される2次元電子ガスをチャネルに用いるGaN系HEMT(high-electron-mobility transistor)は,その優れた材料特性を背景に,目覚ましい性能向上を続けている.本稿では,デバイスに用いるヘテロ接合半導体材料の構成やMOS (metal-oxide-semiconductor) 絶縁膜の多様性に触れつつ,最新の開発動向,競合する技術間の比較,および今後に期待される技術開発の展望について解説する.
窒化物半導体の気相成長技術について概説する.気相成長を理解するために,ハイドライド気相成長法の反応機構および熱力学解析結果を示した.さらに,Ⅲ族原料分子を一塩化物から三塩化物に代えた新しいHVPE法の熱力学解析結果を示し,従来,気相成長法では不可能であったAlNおよびInNが新しいHVPE法で可能なことを述べた.加えて,実用上重要なAlGaNおよびInGaN三元混晶の厚膜・高品質結晶成長の可能性について言及した.
絶縁膜/(Al)GaNのバンドラインナップと界面準位評価に関してこれまでの報告をまとめ,GaN系電子デバイスにおける絶縁膜界面制御の可能性を検討した.絶縁ゲート応用の点からみると,界面のバンド不連続量が重要な要因になる.室温の容量 -電圧(C-V)法による界面準位評価に関しては,禁制帯内の深いエネルギー位置にある準位が「眠った状態」であることに注意が必要である.また,AlGaN/GaNヘテロ構造表面に絶縁膜を形成した試料に対しては,絶縁膜/AlGaNの界面準位密度を評価する手法として光支援C-V法が有力であることを示した.
有機金属気相成長法を用いて成長したSi基板上AlGaN/GaN HEMTにおいて,多層膜構造を用いることによりGaN層の歪【ひずみ】が緩和され厚膜化が可能になった.その結果,総膜厚が約9μmのAlGaN/GaN HEMT構造が成長でき,デバイスの耐圧が改善された.また,耐圧の改善にはリアクタ内の残留GaとSi基板との反応に起因するエッチピットの発生を抑制する必要がある.本研究成果は,パワーデバイスとして家電製品や電気自動車などのインバータへ応用され,高効率半導体デバイスとして期待される.
ハイブリッドおよび電気自動車(HV/EV)は,今後ますますその比率が高まると予想されるが,省エネルギーの観点から効率向上が強く求められている.HV/EVでは多くの電力変換モジュールが使われ,ワイドギャップ半導体によるパワーデバイス性能の飛躍的向上は,HV/EVの効率向上に大きく寄与するものと期待される.その有力な候補となるGaNパワーデバイスは,まだ課題を残してはいるが,実用化に向け開発が急速に進んでいる.
最近のLED(Light Emitting Diode)照明に関する社会の関心は,急速に高まっている.わが国のLEDランプおよびLED照明器具とその応用範囲は急速に広がりつつある.
LEDという新技術を社会に定着させるため,さらなる研究開発,安全面での電気用品安全法での対応,測光などの世界的標準の確立などのニーズがあり,政府もLED照明を重視し,その普及に本腰を入れ,種々の施策がとられつつある.
小型レーザーディスプレイ用の光源として,緑色半導体レーザーの実用化が期待されている.我々はGaN系半導体レーザーの長波化の課題を解決するために,新規に半極性 {202‾1} 面を見出し,純緑色領域でのレーザー発振を実現した.本稿では {202‾1} 面発光層の優位性と,レーザー特性を紹介する.
III族窒化物半導体GaNの自立基板大量生産法の一つであるアモノサーマル法の進展を紹介する.東北大学が開発した,オートクレーブ内で酸性鉱化剤を気相合成するGPS法により残留酸素・Si密度が低減され,格子定数がGaN本来の値に近づいた.これにより,ほぼ無【む】歪【ひずみ】のGaNホモエピタキシャル成長が可能となり,表面・界面の平坦なAl0.2Ga0.8N/GaNヘテロ構造も成長できる基板となった.鉱化剤の検討により,人工水晶やZnOの水熱合成工程と同等の高速成長(150μm/日)がGa極性のc面においても達成された.本手法による自発核発生GaN結晶には転位も反りもほとんどなく,今後,それを種結晶とした大型化の推進によって低転位・低曲率GaNウェーハの生産が行えると期待される.
電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor : FET)でのプラズマ共鳴現象を用いたテラヘルツディテクタは,小型で室温動作可能なデバイスであり,セキュリティや材料分析などさまざまな分野への応用が可能な素子として注目されている.我々は,GaN系材料を用いて共鳴受信信号の増加を図るとともに,FETの電極をダイポールアンテナとして設計することで伝搬損失を抑制し,室温で高感度なテラヘルツ受信素子を実現した.
走査電子顕微鏡(SEM)に集束イオンビーム加工観察装置(FIB)を複合化することにより,SEMの情報量が飛躍的に拡大する.その最先端応用が試料内部の3次元構造解析である.これは,FIBによる微小部の加工と加工面のSEM観察を交互に繰り返して達成される.本稿では,3次元再構築の手法と応用例について紹介する.