応用物理
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Print ISSN : 0369-8009
82 巻, 1 号
『応用物理』 第82巻 第1号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
企画の意図
解説
  • 佐宗 章弘
    2013 年 82 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    光のパワーを用いることによって,飛行機やロケットの性能を飛躍的に向上することができる可能性がある.特に高繰り返しパルスレーザーを用いれば,低損失で遠隔的にパワー伝送を行うことができ,ユニークな航空宇宙技術となりうる.レーザーアブレーションによる推力発生,レーザー加熱バブルと衝撃波の干渉で起こるバロクリニック効果による渦の発生など,基礎となる物理現象の定量的な解明とその利用を踏まえて,今後,技術革新につながる展開が期待される.

  • 伊藤 崇之, 洗井 淳
    2013 年 82 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    3次元映像は,高い臨場感を与えうる映像として期待されている.そのためさまざまな方式の3次元映像システムが研究されているが,なかでも2眼立体映像は,映画やテレビ放送の一部で既に実用化が始まっている.一方で,視聴に伴う視覚疲労や見づらさの課題を指摘する声もあり,ヒューマンファクタに関する研究も各所で行われている.本稿では,このような観点から3次元映像システムの現状と課題について述べるとともに,将来の究極の3次元映像システムを目指した研究を紹介する.

  • 覚醒する光波の潜在能力
    小澤 祐市, 佐藤 俊一
    2013 年 82 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    レーザーの誕生から50年以上経過した現在でも,理論および実験の両面において,取り扱われる光ビームの多くは,均一な偏光分布をもつ直線偏光ビーム(スカラビーム)である.しかし,電磁波の1つである光波は電場と磁場からなり,ベクトルとしての性質は重要な役割を果たす.電磁場がベクトルで表されるベクトルビーム研究の最近の進展によって,光波のさまざまな未知の特性が明らかにされつつある.本稿では,ベクトルビーム研究という刺激によって長い眠りから覚めつつある,光波の潜在能力を紹介する.

最近の展望
  • 大谷 幸利
    2013 年 82 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    光を駆動手段として用いる特徴は,「非接触で指向性良くエネルギーを供給できる」,「電気,磁気的なノイズの影響を受けない,また,これらのノイズを発生しないため外界に影響を与えない」,「エネルギーの供給と同時に情報の伝達も可能」が挙げられる.ここでは,光エネルギーを直接利用するものと,機械エネルギーに変換して利用する方法との2つに分類できる.具体的には,光放射,光起電力,フォトサーマル,光熱磁気,および光マランゴニおよび光化学変化について述べる.本解説は,従来の光駆動マシンを概観しながら,次世代のナノ・マイクロマシン技術として期待される光駆動材料とフォトサーマル技術に焦点を当てて紹介する.

  • 半導体/金属錯体複合触媒を用いた水・CO2・太陽光による有機物の直接合成
    森川 健志
    2013 年 82 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    半導体光触媒の有する水の強い酸化力と,金属錯体のもつ優れたCO2還元能力の各機能を共役させた新概念のハイブリッド型光触媒を構築した.その結果,H2OとCO2のみを原料に,太陽光エネルギーを用いて有機物であるギ酸を,外部からの電圧印加なしで直接合成する人工光合成型反応を実現した.ギ酸合成の太陽光変換効率は0.04%であり,植物の光合成の数分の1レベルにまで到達した.

  • 落合 友四郎
    2013 年 82 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    最近のメタマテリアルをはじめとする物質科学の発展により,いわゆるハリーポッターの透明マントの実現可能性が高まっている.透明マントを実現するには,うまく異なる屈折率をもつ物質を配置して,光を隠したい物の周りに迂(う)回(かい)させる必要がある.本稿では,透明マントの設計方法,透明マントの変種であるカーペットクローキング,それらの実現可能性について述べる.

研究紹介
  • 3次元空間コヒーレンス場の生成と制御
    武田 光夫
    2013 年 82 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    統計的に揺らぐ光波動場の3次元コヒーレンス関数を自由に生成・制御することのできるコヒーレンスホログラフィと呼ばれる風変わりな (unconventional) 新ホログラフィ技術の原理と実験を紹介する.

  • 光人工降雨,光人工雲は可能か?
    吉原 經太郎
    2013 年 82 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    紫外光を湿潤空気に照射することによって水滴または水のエアロゾルを生成させることができる.水銀灯(185nm),ArFレーザー(193nm)およびKrFレーザー(248nm)によって生じる水粒子を,光散乱と微分型移動度分析器で実験室において観測した.反応は酸素の光解離によって開始し,さらなる後続反応によって凝結核(または凝集核)となる過酸化水素が生じ,これが凝結核となることを提案した。また,最近欧州で行われた高出力フェムト秒レーザーによる異なった機構の水滴生成について解説した.これらの研究は初期的段階にあり,気象学や環境科学との連携が必要な新しい分野である.

  • 斎藤 慎一
    2013 年 82 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    シリコン・フォトニクスによる光電子融合を推進するには,シリコン・プロセスで形成可能なモノリシック光源が実現できることが望ましい.既存のシリコン・プロセスを用いて作製したシリコンおよびゲルマニウム量子井戸を用いた発光素子を紹介する.

  • 吉田 勝
    2013 年 82 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    光を利用するプロセスは,半導体チップ作成時のフォトリソグラフィーをはじめ,既に数多くの応用がなされ,産業上極めて重要な位置を占めている.我々の研究グループでは,合成化学的な見地から新しい光機能材料の創製を検討し,最近興味深い成果を得つつある.本稿では,その代表例について詳細を紹介するとともに,今後の展開についても言及する.

  • 細川 陽一郎
    2013 年 82 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2013/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    高強度の近赤外フェムト秒レーザーを顕微鏡により集光し,細胞培養液に照射したとき,集光点で微小な爆発が引き起こされる.この爆発に伴う力を細胞に作用させることで,光ピンセットよりもはるかに強力な力を必要とする細胞操作を,1細胞レベルの空間スケールで実現できる.筆者らは,顕微鏡下で引き起こされるフェムト秒レーザーアブレーションや,微小爆発によって試料に加わる機械的な外力を利用した多くの実践的なバイオ応用技術を開発してきている.フェムト秒レーザーアブレーションを利用し,生体試料を熱変性させずに加工したり,生体試料の機能を部分的に阻害したり,発生段階にある動物胚に遺伝子やmRNAなどのバイオ分子を導入したりすることに成功している.また,フェムト秒レーザーを標的細胞近傍の培養液に集光照射し,発生した衝撃波と応力波を作用させ,細胞を壊すことなく細胞間の接着を乖(かい)離(り)させることができる.さらには,この力を原子間力顕微鏡により定量評価することにも成功し,細胞の接着力評価に利用している.本稿では筆者らが行ってきている多くのバイオ分野へのフェムト秒レーザー細胞プロセス技術について紹介する.

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