応用物理
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Print ISSN : 0369-8009
82 巻, 11 号
『応用物理』 第82巻 第11号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
今月のトピックス
巻頭言
企画の意図
総合報告
  • 吉野 淳二, 篠原 嘉一
    2013 年 82 巻 11 号 p. 918-927
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ゼーベック効果やペルチェ効果などの熱電現象は,温度検出や機器の精密温度制御に広く活用されている.しかし,熱電発電は,RI熱源を用いる深宇宙用の発電機などの特殊用途を除き,あまり広く利用されてこなかった.1950年代に熱電変換の基礎理論が確立され,活発な研究が行われたものの,その後,研究は下火となった.しかし,1990年代に導入された新しい概念と省エネルギーのため,膨大な排熱を利用しようという社会的な要請から,再び研究は活発になり,最近では,比較的大型の熱電発電器の実用も始まっている.本稿前半では,熱電発電の基礎,後半で熱電発電の開発の現状を紹介する.

解説
  • 内田 健一, 齊藤 英治
    2013 年 82 巻 11 号 p. 928-931
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    スピンゼーベック効果は強磁性体/常磁性体界面において発現する熱流-スピン流変換現象である.スピンゼーベック効果は金属や半導体のみならず磁性絶縁体においても生じるため,この現象と逆スピンホール効果(スピン流-電流変換効果)を結合させることで,従来技術では不可能だった「絶縁体を用いた熱電変換」を実現できる.本稿では,磁性絶縁体/金属接合におけるスピンゼーベック効果の実証実験の一例を紹介し,スピン流に基づく新しい熱電変換技術の可能性について議論する.

最近の展望
  • 竹内 敬治
    2013 年 82 巻 11 号 p. 932-935
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    エネルギー回収型発電技術のうち,小型電子機器の自立電源として利用されることを想定して開発されている技術がエネルギーハーベスティング(環境発電)である.発電量はµW〜Wのオーダであり,再生可能エネルギーとしての価値はないが,モノのインターネットを実現するためのキー・テクノロジーとして注目が高まりつつある.多様な環境発電技術の研究開発が,年々盛んになっている.自立電源として実用に供するためには,高効率の電源回路や蓄電デバイス,低消費電力のセンサやマイコン,無線チップなどの周辺技術と組み合わせる必要がある.従来は欧米中心に政策支援や事業化が進んでいたが,近年は日本での取り組みも増えている.

  • 河本 邦仁
    2013 年 82 巻 11 号 p. 936-939
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    過去15年の間に開発されてきた高ZT材料のほとんどが,希少元素や毒性元素で構成されているため実用化が阻まれている.一方,問題のない元素で構成された材料の性能はいまだ低すぎて実用化できない.この状況を打破するためには,問題のない材料の性能を新しいナノ構造エンジニアリング戦略によって飛躍的に高めていかなければならない.本稿では,ナノ構造エンジニアリングを通して性能向上が可能になってきたSrTiO3およびTiS2系超格子材料の開発現況を紹介するとともに,最近考案したハイブリッド太陽電池を,熱電技術の応用展開の一例として紹介する.

研究紹介
  • 飯田 努
    2013 年 82 巻 11 号 p. 940-945
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    熱を電気に直接変換することで,世の中の排熱を電気エネルギーとして再資源化し,化石燃料の使用削減,すなわち二酸化炭素(CO2)排出抑制を目指す取り組みが世界的に活発化している.全世界的に主要なエネルギー源として用いられている石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料は,最終的にはおよそ70%が未利用のまま捨てられている.未利用で排出されている「排熱」を回収して使い勝手のよい電気エネルギーに変換する「熱電発電技術」は,エネルギー・地球環境問題に大きく寄与できる可能性を秘めている.一方で,熱電発電を用いた排熱回収システムにより,世の中に大量に排出されている排熱から大きな電力を得るためには,「金属の電気伝導」と「絶縁体の熱伝導」の2つの要素を有する材料開発が必要となる.他方,近年では熱電変換材料が具備すべき基本的な条件として,毒性がなく,かつ非稀少系な元素から構成されていることが重要視されている.本稿では,中温度域熱電変換材料として開発されているマグネシウムシリサイド(Mg2Si)熱電変換材料の実用化開発について紹介する.

  • 湯上 浩雄, 清水 信
    2013 年 82 巻 11 号 p. 946-949
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    熱光起電力(Thermophotovoltaic: TPV)発電システムはさまざまな熱源からの熱輻(ふく)射(しゃ)を光電変換素子によって電力に変換することができるシステムである.このシステムでは熱放射スペクトルを制御し,PVセルとの波長整合性を向上させることで効率の飛躍的な向上が期待できる.高効率なTPV発電システム実現のためには,1000°C程度の高温で熱放射スペクトル制御が可能である「高温フォトニクス材料」の大面積化技術,およびTPVシステムの発電に関する研究の蓄積が重要である.本稿では,Ni基超合金の自己組織化を用いた高温フォトニクス材料の大面積化技術,および高温フォトニクス材料を用いた燃焼型TPVシステムに関する研究成果について紹介する.

  • 川原 圭博
    2013 年 82 巻 11 号 p. 950-953
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    通信や放送に用いられる電波や電子レンジなどから漏れ出る電磁波は,整流回路を用いることで直流電流に変換することが可能である.こうしたエネルギーはこれまでは微弱で使い道に乏しかった.しかし,ここ数年,整流回路の効率向上と電子機器の消費電力の低下により,微弱な電力であっても電子回路の動作に必要とされる電力と回収可能な電力のバランスが取れるようになってきた.本稿では,センサネットワークを無電源で運用するための手段としての電磁波からのエネルギーハーベスティング技術について紹介する.

  • 中村 雅一
    2013 年 82 巻 11 号 p. 954-959
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    エネルギー密度が低い条件下で熱電発電を行うにあたり,有機材料には大面積でフレキシブルな素子を作製しやすいという利点がある.多くの無機熱電材料より1〜2桁小さい熱伝導率を生かすことで,薄型素子の設計が容易であるという利点もある.本稿では,微少量試料や高抵抗試料の評価が可能な独自の装置によって,広範な有機あるいは有機/無機複合材料の熱電特性を評価してきた結果を他グループの結果も交えて概観するとともに,これまでになじみのないメカニズムによるゼーベック効果が現れた例を紹介する.

ホッとひといき
研究の現場から
基礎講座
  • 医用診断用2次元画像検出器
    佐藤 敏幸
    2013 年 82 巻 11 号 p. 974-977
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    X線医用診断は,比較的簡単に非侵襲で人体内部の情報を得ることができるため,広く普及している診断方法である.近年このX線診断装置に大型の2次元デジタル検出器が搭載されるようになり,デジタル検出器の特長を生かした新たな診断手法も提案されるようになっている.本稿では,この検出器の原理や新しい診断手法を解説するとともに,被曝(ひばく)線量の低減のための,検出器の新たな取り組みも紹介する.

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