ダイヤモンドはその極限性能から,パワーデバイス性能指数がほかのワイドギャップ材料を大きく凌駕(りょうが)し,次々世代デバイスとして期待されている.これまで数mm角の小さい基板サイズや深い準位がネックになって,研究は敬遠されてきた.我々は単結晶をコピーする技術と,それら複数の結晶を接合することにより,モザイク状の単結晶(現在20×40mm2)を実現させ,2inchも視野に入ってきた.また,デバイスも自己発熱したものを冷却せずに,180〜250°Cの高温でそのまま用いることで,出力を下げずに高温,高速,低損失動作の可能性があることを,ショットキーダイオードで例示した.
シリコン(Si)パワーデバイスは,電力機器向けの半導体素子で,省エネ,創エネ,CO2削減などに有効なパワーエレクトロニクス製品に幅広く適用されてきている.昨今ではその物理的な限界から性能が飽和しつつあるが,新構造の適用(SJ-MOS)や新回路方式に最適なデバイスの開発(RB-IGBT),さらには駆動回路のIC化(HV-IC)などのさまざまな工夫により性能限界のブレークスルーを図ってきている.本稿では,シリコン(Si)パワーデバイスの概要を述べるとともに,最新デバイスであるSJ-MOSFETおよびRB-IGBT,その制御に必要不可欠なパワーICを取り上げ,紹介する.
高い電子移動度や正孔移動度を有するⅢ-Ⅴ族化合物半導体やGeは論理集積回路における次世代トランジスタ材料としてSiに置き換わるものと期待されており,実用化に向けた研究開発が急速に進展している.一方,このような異種半導体をSiプラットフォームに集積する技術の進展に伴い,優れた光物性をもつⅢ-Ⅴ族化合物半導体やGeを用いた高性能光素子を同じCMOSプロセス技術により一体集積することも可能となりつつある.本稿では,Siプラットフォーム上で光電子集積回路を実現するためのⅢ-Ⅴ/Geデバイス技術の最近の展望について紹介する.
フラッシュメモリに続く大容量不揮発メモリの実現を目指してpoly-Si MOSトランジスタ駆動の相変化メモリの研究を行っている.本研究では,チャネルポリSi上に形成した薄膜相変化材料を用いることで相変化メモリのリセット電流を低減し,シリコン基板上のトランジスタと比較してオン電流が小さいpoly-Si MOSトランジスタで相変化メモリを駆動できるようにした.積層ゲートに一括加工で形成したメモリホール内にメモリセルを形成する縦型構造を用いることで,製造コストを圧倒的に低減する見通しが得られた.リセット電流45µA,リセット時間30nsは,約1GB/sのデータ転送速度を実現可能な性能である.
最先端Large-Scale Integrated-circuit(LSI)では,チャネルひずみを故意に導入することで電気特性の改善を得るひずみ技術が大きな成果を収めている.また,パワーデバイス,イメージングデバイスなどでもひずみの制御は重要である.ひずみ評価に求められるのは,非破壊,簡便,高い空間分解能,高スループットなどで,ラマン分光法はこれらの要求を高い水準で満たしている.これまで我々は,UV励起光を用いた最表面ひずみの評価,ひずみ評価に特化した高ひずみ感度装置の開発などを行ってきた.本稿ではさらに,先端LSIデバイスのチャネルひずみ評価を目的としたラマン測定の高空間分解能化,複雑なひずみ場の評価,および微細領域からの信号増強の取り組みについて述べる.
バルク多結晶のマクロな性質は,多結晶を構成する結晶粒や結晶粒界,不純物や転位などのミクロな分布に依存する.これらの制御により,マクロな性質を改善し,単結晶並みの高品質なバルク多結晶が得られる可能性がある.本稿では,大容量インゴットの低コスト製造が可能な一方向凝固法をベースとして,太陽電池用超高品質シリコンバルク多結晶の製造技術開発を目指した結晶成長に関する研究について紹介する.
パワーデバイス用材料として現在盛んに研究開発が行われているSiCにおいては,基板結晶の高品質化が極めて重要である.溶液成長法はそれを実現する手法として注目を集めつつある.我々はSiC溶液成長過程において,結晶に含まれる貫通転位が基底面内の転位やフランク型欠陥へ頻繁に変換することを見いだし,さらにこの現象を利用して多くの貫通転位を結晶外部に放出させることで,高品質結晶が実現されることを示してきた.最近では,ほかのグループから結晶成長速度の向上や結晶口径の拡大に関する報告もなされている.本格的な高品質バルク結晶成長技術として確立されるまで,あと少しのところにきている.
エピタキシャル成長は,高純度・高完全結晶を与えること,デバイスが要求する微細構造の形成に適していること,融液からの成長が困難な結晶を別の材料を基板とし成長することを可能にすることなどの特徴をもつ.この技術は,1950年代後半から1970年代に開拓され,これにより多くの電気・電子・光デバイスの作製が可能になった.エピタキシャル成長のメカニズムを理解するうえで,成長を支配する基本的パラメータとしての過飽和比,過飽和度,表面拡散距離などについて説明した後,特異面,隣接面,荒れた面とは何かについて述べ,各々の面においてどのように成長が行われるかを考察した.