応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
83 巻, 1 号
『応用物理』 第83巻 第1号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
今月のトピックス
巻頭言
  • 山崎直子宇宙飛行士に聞く
    取材執筆:藤木 信穂
    2014 年 83 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    地球に降り立った瞬間,心地よい風がふわっと吹いてきて,草木のすがすがしい香りが漂ってきた—.

    2010年4月,15日間の宇宙滞在を終えてスペースシャトル「ディスカバリー号」で帰還した宇宙飛行士・山崎直子氏は当時の感動をこう振り返る.爽やかな香りが,地球の息吹をいっそう強く感じさせたのだろう.人間の五感の中でも,嗅覚は本能に近い直感的な感覚であるとされ,香りはときに懐かしい感情や記憶を呼び覚ます.宇宙ではどんな香りがするのだろうか.「香り」をテーマに山崎氏に話を伺った.

企画の意図
解説
  • 中本 高道
    2014 年 83 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    嗅覚センサでは,特性の異なる複数センサの出力パターンをパターン認識することにより,匂い種類の識別が行われる.本稿では,嗅覚センサで使用されるセンサの種類やパターン認識の方法を最初に説明する.次に,濃度変化,温度,湿度などの外乱に強いロバストなセンシング手法として相対比較方式,周波数解析を用いた方法を述べる.さらに,温度可変濃縮管による高次センシングと水蒸気除去および弾性表面波デバイスを用いた濃縮素子について紹介する.

  • 坂野 仁
    2014 年 83 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    無限情報といわれる嗅覚情報は,匂いシグナルをデジタル画面に展開することによって識別されている.この匂い分子の受容体との結合情報の2次元位置情報への変換は,嗅神経の軸索が,発現する嗅覚受容体の種類を念頭に自らが投射すべき場所を探し当てることによって保障されている.最近の我々のグループの研究により,嗅神経の前後軸に沿った軸索投射が,Gタンパク質共役型受容体である嗅覚受容体が,リガンドのない状況下で自律的に揺らぐ際に生じるノイズ活性によって,制御されていることが明らかとなった.

  • 下内 章人, 近藤 孝晴
    2014 年 83 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    生体内で生成される代謝成分の一部は呼気中に放出される.呼気成分は生体内代謝の有力な情報源となりうる.実際に数種の病気には古来の嗅診が役立つが,人間の嗅覚には限界があり,「がん探知犬」には遠く及びそうにもない.だが,「がん探知犬」の存在は呼気診断が現実的に可能であることを強く示唆しており,実際に肺がんをはじめとしたいくつかの疾患を対象としたメタボローム解析が進行中である.手がかりが見つかり始めているが,呼気採取や高感度分析に関わる課題は山積している.さらなる分析技術の開発とそれを応用した臨床知見を積み重ねることにより,多くの疾患の呼気診断が可能になる時代の到来がそれほど遠くないものと考えている.

最近の展望
  • 三林 浩二
    2014 年 83 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    匂いの情報化を目的に,生体・生物の代謝酵素の触媒能を利用した生化学式ガスセンサ「バイオスニファ」を考案し,トリメチルアミン(悪臭成分)やメチルメルカプタン(口臭の主要成分)用のセンサなどを開発した.また光学計測を組み合せることで,「匂い情報を光情報に変換」することを可能とした.例えばUV-LEDを励起光源に,そして光電子増倍管を受光素子とした蛍光バイオ計測にて,ホルムアルデヒド(環境汚染物質)の高感度モニタリング(750 ppt〜)を実現した.またエタノールガスを,酵素反応を介してルミノール発光に誘導し,高感度CCDカメラで捉えることで,エタノールガスの可視化に成功し,飲酒後の呼気や果実の熟成度合いの匂いイメージングを可能とした.

研究紹介
  • 神崎 亮平, 光野 秀文
    2014 年 83 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    匂いセンサに求められる幅広いニーズに応えるため,革新的な検出原理に基づくセンサ素子の開発が進められている.近年,生体の匂い受容の分子メカニズムの解明が進み,昆虫のもつ高性能な匂いの検出が嗅覚受容体によって達成されていることが明らかにされてきた.本稿では筆者らが開発してきた,昆虫の嗅覚受容体を利用した2種類の匂いセンサ構築技術を紹介する.1つは嗅覚受容体および蛍光タンパク質を遺伝子工学的に組み込んだ昆虫培養細胞で,匂いを蛍光強度変化として長期間可視化できる「センサ細胞」,もう1つは遺伝子組み換え技術によってカイコガ生体の匂い源探索行動を,標的の匂い発信源に定位できるように改変した「センサ昆虫」である.

  • 佐藤 孝明, 松川 睦, 古殿 雄一
    2014 年 83 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    嗅覚では,刺激の検出を行う感覚センサ,すなわち受容体の多様性が色覚の百倍以上ある.これは,匂い分子の構造は多様だが神経伝達物質ほど強い分子間相互作用をもたず,1種の受容体だけが応答する特異的結合の濃度範囲が狭く,刺激特定のための要素情報の抽出には複数種の受容体信号の加算が必要なためと推測される.嗅覚中枢には,高感度で,より特異的な受容体の信号を利用して,重複の多い受容体センサの信号群から特徴的要素情報を自動的に強調する階層的情報符号化の仕組みがあると推定された.この仮説に関係する最近の研究を紹介する.

  • 喜多 純一
    2014 年 83 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    開発したにおい識別装置システムについて,捕集管の利用などそのハードウエアでの工夫と,においの強さと質を絶対値として出力するソフトウエア開発における工夫を,応用例とともに説明する.また,その結果をさらに分析型官能評価値と相関の高いものとするために,においが嗅げる最低濃度である検知いき値と,AのにおいにBのにおいを徐々に加えたときにAのにおいが変化するBの最小添加量(弁別いき値)について,希釈混合装置を利用して簡易に測定できる方法も紹介する.この値をにおい識別装置で利用することにより,より官能との相関が高まる.最後にこの簡易官能評価装置を用いマスキングの評価を行った例も紹介する.

  • がんの温熱/化学療法
    荏原 充宏
    2014 年 83 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    がんの中で,上皮性の悪性腫瘍の1つである扁平上皮がんは,食道がんの90%以上,子宮頚部がんの80%以上,肺がんの30%以上を占めている.治療方法としては,がんの進行度によって手術,放射線療法,化学療法が3本柱となっているが,近年,がん細胞が正常な細胞と比べて熱に弱いことを利用した温熱療法が注目されている.そこで本研究では,患部に直接貼布可能な温熱ナノファイバメッシュを開発した.このメッシュは,体外から交流磁場を加えることで発熱すると同時に,抗がん剤を放出するため,温熱療法と化学療法を同時に行うことができる.

コラム
  • 林 良博
    2014 年 83 巻 1 号 p. 56-57
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    生まれてから死ぬまで,いつも私たちとともにいる「ニオイ」.知っているようで,わからないことだらけの「ニオイ」.ここでは,身近で不思議な「ニオイ」に関する3つのトピックスについて,エキスパートの先生方に解説していただきます.まず,「犬の鼻はなぜ超高性能なのか」という素朴な疑問について,元日本獣医解剖学会会長であり,現国立科学博物館館長の林良博氏に解説していただきます.次に,誰もが他人事ではない「加齢臭」については,原因物質の発見者であり,加齢臭の名付け親でもある,(株)資生堂リサーチセンターの土師信一郎氏に,その正体と対処法を伝授していただきます.さらに,「香りが人間の心と体に与える影響」について,日本最大の香料メーカーである高砂香料工業(株)の高柳深雪氏に,生理心理的効果の検証実験をご紹介いただきます.

    [吉川元起・本誌編集委員]

  • その正体と対策
    土師 信一郎
    2014 年 83 巻 1 号 p. 58-59
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    生まれてから死ぬまで,いつも私たちとともにいる「ニオイ」.知っているようで,わからないことだらけの「ニオイ」.ここでは,身近で不思議な「ニオイ」に関する3つのトピックスについて,エキスパートの先生方に解説していただきます.まず,「犬の鼻はなぜ超高性能なのか」という素朴な疑問について,元日本獣医解剖学会会長であり,現国立科学博物館館長の林良博氏に解説していただきます.次に,誰もが他人事ではない「加齢臭」については,原因物質の発見者であり,加齢臭の名付け親でもある,(株)資生堂リサーチセンターの土師信一郎氏に,その正体と対処法を伝授していただきます.さらに,「香りが人間の心と体に与える影響」について,日本最大の香料メーカーである高砂香料工業(株)の高柳深雪氏に,生理心理的効果の検証実験をご紹介いただきます.

    [吉川元起・本誌編集委員]

  • 高柳 深雪
    2014 年 83 巻 1 号 p. 60-61
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    生まれてから死ぬまで,いつも私たちとともにいる「ニオイ」.知っているようで,わからないことだらけの「ニオイ」.ここでは,身近で不思議な「ニオイ」に関する3つのトピックスについて,エキスパートの先生方に解説していただきます.まず,「犬の鼻はなぜ超高性能なのか」という素朴な疑問について,元日本獣医解剖学会会長であり,現国立科学博物館館長の林良博氏に解説していただきます.次に,誰もが他人事ではない「加齢臭」については,原因物質の発見者であり,加齢臭の名付け親でもある,(株)資生堂リサーチセンターの土師信一郎氏に,その正体と対処法を伝授していただきます.さらに,「香りが人間の心と体に与える影響」について,日本最大の香料メーカーである高砂香料工業(株)の高柳深雪氏に,生理心理的効果の検証実験をご紹介いただきます.

    [吉川元起・本誌編集委員]

基礎講座
  • レーザー走査型顕微鏡
    藤田 克昌
    2014 年 83 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2014/01/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    多種多様なレーザー光源の登場は,さまざまな光学現象の観察を可能とし,光物性研究に大きな進展をもたらした.同じ理由で,光と物質との相互作用を通して観察を行う光学顕微鏡にも大きな進展をもたらした.試料の形状の観察はもちろんのこと,試料の内部を非破壊で,かつ内部に含まれる物質分析を行いながら顕微観察できる.これらのレーザー走査型顕微鏡技術について,その基本原理,結像特性,および応用例を示す.

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