応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
84 巻, 11 号
『応用物理』 第84巻 第11号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
Science As Art
今月のトピックス
国際光年記念企画
今月号の概要
解説
  • 局所環境での光と物質を用いた知的機能構造
    成瀬 誠
    2015 年 84 巻 11 号 p. 970-975
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ナノフォトニクスを含めた先端技術の高度化に伴い,情報通信システムやデバイスには,単なる演算や通信機能を超え,「インテリジェンス」が期待されるようになった.しかし,現在の電子・光デバイスは従来の2値論理を基礎とした構造を踏襲しており,パラダイム転換を可能にする新たなアーキテクチャが待望されている.本稿では,光エネルギー移動,光の階層性,近接場光の運動量の多様性といった,局所環境での光と物質の相互作用に着目し,質的に新規な情報機能実現を指向した最近のいくつかの取り組みを解説する.

  • 中川 聰子
    2015 年 84 巻 11 号 p. 976-983
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    シリコンパワーデバイス用途の磁場印加チョクラルスキー引き上げシリコン(MCZ-Si)単結晶は,1014 atoms/cm3以下と極微量に炭素濃度を低減することで,浮遊帯溶融法により育成したシリコン(FZ-Si)単結晶よりも,高ライフタイム化が実現した.MCZ-Si単結晶におけるライフタイム低下要因は,酸素析出物である.我々は,酸素析出物の不均一核形成に寄与する炭素を1014 atoms/cm3レベル以下にすることで酸素析出の不均一核形成を大幅に抑制した.その結果,通常の酸素濃度レベルのMCZ-Si単結晶でも,FZ-Si単結晶を超えるライフタイムを実現した.この技術は,開発したフォトルミネセンス法による低炭素濃度測定技術に支えられており,これまで見ることができなかった1014 atoms/cm3レベル以下の微量な炭素濃度の制御が鍵を握っている.

  • フォルソン ジョセフ, 小塚 裕介, 塚﨑 敦, 川﨑 雅司
    2015 年 84 巻 11 号 p. 984-990
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    酸化亜鉛(ZnO)はワイドギャップ半導体の1つとして,透明導電膜や紫外発光素子へ向けた研究が精力的に行われてきた.半導体的な性質を引き出すために,清浄かつ高品質な界面形成技術の開発を進める中で,極めて高い移動度を示す2次元電子の形成という別の側面で大きく研究が発展した.最近では,ZnO膜中に混入する不純物の劇的な低下により,試料界面の清浄度を評価する指標としての2次元電子の電子散乱頻度は,長い間最も清浄な半導体界面と考えられているヒ化ガリウムに匹敵するレベルに達した.本稿では,ZnO膜の高品質化とそれに伴って観測された興味深い量子輸送現象を紹介し,ZnO2次元系を舞台とする,量子ホール効果の新しい物理と量子情報素子への将来展望を紹介する.

最近の展望
  • 櫛屋 勝巳
    2015 年 84 巻 11 号 p. 991-996
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    固定価格買取制度により短期間で大量に導入が進んだ「太陽光発電」であるが,2015年を迎え,先進国では安定した市場拡大を模索している.その結果,世界で最も利益率の高い国内市場も変化の速度を増し,屋根市場へのシフトが本格化した.この市場はシステム基幹部品の太陽電池モジュールに高効率化を要求するため,「高効率化」競争が始まっている.現状,商業生産されている薄膜太陽電池技術(CdTe,CIS系,薄膜Si)はいずれも,ウェーハベースの単結晶Siと性能面で競合できていない.しかしながら,それができれば,製造コストの優位性から,現状1桁の市場占有率を大きく伸ばすことが可能となる.本稿では,薄膜太陽電池技術3種の現状を概説し,単結晶Si太陽電池技術に対する競争力の視点から今後の展望を議論する.

  • 坂倉 政明
    2015 年 84 巻 11 号 p. 997-1001
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    超短パルスレーザーによる透明固体内部の加工では,熱応力や応力波により光励起領域周辺に応力分布が形成し,最終的な構造変化に影響する.したがって,光励起後の応力分布のダイナミクスを明らかにすることは,構造変化のメカニズムの理解や制御方法を見いだすために重要である.本稿では,これまでに時間分解観測によって明らかになったさまざまな透明固体内部のフェムト秒レーザー加工時における応力ダイナミクスと,構造変化の制御を目指した多点同時レーザー照射による過渡応力分布の変調および単結晶内部の亀裂形成への影響について,最近見いだした研究成果を紹介する.

研究紹介
  • 竹井 邦晴
    2015 年 84 巻 11 号 p. 1002-1007
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    近年,次世代ウェアラブルデバイスとして,絆創膏(ばんそうこう)のように装着感なく快適に健康状態のリアルタイム計測を行うウェアラブル・フレキシブルデバイスの研究が国内外で盛んに行われている.本研究では,ウェアラブル・フレキシブル健康管理デバイスの実現を目指し,衛生的かつ低価格を実現する使い捨てのセンサシート,またプロセスが複雑なフレキシブル回路などの再利用シートで構成されるフレキシブルデバイスシートを提案し開発を行っている.本稿では,本研究の実現へ向けた取り組みについて簡単に紹介する.特に本研究では,無機ナノ材料の印刷技術を開発することで,高性能かつ多機能なフレキシブルデバイスの実現を目指している.

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