超伝導の発見から100年余,超伝導材料の実用から約50年,そして高温超伝導の発見からちょうど30年の今日,超伝導の応用は極低温容器に閉ざされた孤立した世界から,長大な送電ケーブルに踏み出し,遠い将来の網に育つ準備を始めました.超伝導の最大の特徴であり専門外の方にもわかりやすい電気抵抗ゼロの性質をストレートに生かした超伝導送電について,本稿ではその最新動向を生々しく,さらに夢の超伝導飛行機に関する話題も含めて紹介いただきます.
銅酸化物高温超伝導材料のエレクトロニクス応用について,超伝導エレクトロニクス全体の中での位置づけや,本材料特有の物理的性質に起因するデバイス開発の難しさと,これを克服した薄膜作製技術およびジョセフソン接合作製技術など基盤技術の開発,応用開発の歴史と現状について述べる.さまざまなデバイスや機器の開発がなされてきた中で,とりわけ,液体窒素冷却で動作する超伝導量子干渉素子(SQUID)磁気センサは金属異物検査装置や野外使用の金属資源電磁探査装置に,帯域外遮断特性に優れたマイクロ波帯バンドパスフィルタは気象レーダ用送信機,電波望遠鏡用受信機などで実用化されるとともに,今後さらなる適用分野の拡大が期待される.
光の波長よりも小さな金属微粒子やその分散構造の光応答は,近接場光の発生を考慮すればLCR等価回路と考えることができる.その考えに基づけば,金属微粒子をランダムに配置した構造でもメタマテリアルやメタサーフェスとして機能することを予測することが可能である.我々は,銀ナノ平板微粒子をランダムに分散した銀ナノ石畳(NASIP)構造によって透明度が高く日射遮熱効率がよいメタサーフェスを開発した.本稿では,NASIPを題材としてランダム配列メタマテリアルの動作原理について説明し,さらに将来の可能性について述べる.
通常の光学顕微鏡の限界である回折限界を超えて,より高い空間分解能を得る努力は多様化してきている.本稿では,光の特異な伝搬モードをもつメタマテリアルを材料として作製したハイパーレンズアレイを用いて光学超解像を得る方法について紹介する.この方法は蛍光タンパク質による染色技術やレーザー光による非線形光学過程,イメージ復元のためのアルゴリズム処理を必要とせず,直接的な超解像法として通常の光学顕微鏡を自然に拡張するという特徴がある.
気候変動や社会構造の変化などさまざまな要因により,農業は変革を余儀なくされている.成長速度の速い情報通信と比較的時定数の大きな農業という,一見ミスマッチな組み合わせに,人々の大きな期待が寄せられている.圃場(ほじよう)や作物に関するセンサ情報をクラウドに集約し定量的に分析することで,これまで篤農家の勘と経験に基づいて行われてきた栽培技術の定量化,生産性向上が可能になる.また,集約した農地の一括管理による大規模化や,高性能な位置情報を用いた農機具の自動操縦による省力化などが期待できる.本稿では,そうした農業情報センシングを低コストで実現するための諸技術を紹介する.
生活習慣の改善や疾病のスクリーニングを目的とした,長期間の生体信号計測可能な生体センサ技術が注目されている.本稿では不揮発性素子を用いたノーマリオフ技術,および高信頼心拍センシング手法を用いた超低消費電力心電・心拍センサSoCについて紹介する.
立方晶窒化ホウ素(c-BN)は6.25eVのバンドギャップエネルギーを有する半導体であり,耐環境デバイスなどへの応用が期待されている.しかし,c-BN薄膜のエピタキシャル成長は難しく,これまでほとんど報告されていなかった.近年,我々はイオンビームアシストMBE法により,c-BN(001)および(111)薄膜をダイヤモンド基板上にヘテロエピタキシャル成長できることを示した.本稿では,その成長手法の特徴とBN薄膜成長時のイオン照射の効果について紹介し,c-BN研究の今後の展望について述べる.
ダイヤモンド半導体は特異な物性を有し,それを用いた新たな価値を創生する応用が期待できる.本稿の前半では,次世代スマートグリッド用のトランジスタとして開発しているダイヤモンド接合型電界効果トランジスタのコア技術を紹介し,パワーデバイスとしての可能性と課題を論じる.また後半では,ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センタを用いたセンサの特徴と応用を俯瞰(ふかん)するとともに,NVセンタアンサンブルによる高感度化技術を紹介する.
材料やデバイスの評価を行う際には,頻繁に元素分析の機会が現れます.一口に元素分析といっても,評価目的や試料の状態に応じて使い分ける必要がありますが,本稿では代表的な元素分析について,その特徴と注意点について紹介します.