応用物理
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Print ISSN : 0369-8009
85 巻, 6 号
『応用物理』 第85巻 第6号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
Science As Art
今月号の概要
解説
  • 飯森 俊文, 太田 信廣
    2016 年 85 巻 6 号 p. 466-473
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    有機導体結晶を対象として,電気伝導特性への光照射効果および電場効果に関する研究が進められている.パルスレーザー光やパルス電場を作用させることで,相転移に基づくスイッチング,メモリ効果,光駆動サイリスタといった機能が得られ,有機超伝導体においては特異的な光励起ダイナミクスが観測される.またヨウ化銀結晶は,光照射によりイオン伝導度の数桁の変化を生じることも明らかになった.本稿では,光と電場の相乗効果による超伝導発現の可能性を視野に,光と電場による有機導体およびイオン伝導体の電気伝導度の制御に関する研究の現状と展望を解説する.

  • 胡 暁
    2016 年 85 巻 6 号 p. 474-479
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    鋭角経路や欠陥による散乱が抑制されるトポロジカル電磁波伝搬が注目されている.その実現には外部磁場の印加や特殊な材料が必要とされていたが,最近,我々は誘電体でできたフォトニック結晶におけるトポロジカル特性発現を解明した.フォトニック結晶の空間対称性から,電磁波に有効なスピン自由度が生まれ,時間反転対称なトポロジカル電磁状態が可能になっている.トポロジカルフォトニクスとエレクトロニクスの融合による革新的デバイスの開発が期待される.

最近の展望
  • 中川 勝
    2016 年 85 巻 6 号 p. 480-484
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    型押し成形方式のナノ造形技術であるナノインプリント技術を採用して,光学部品などの製造が広がりつつある中,今度は半導体関連企業が次世代リソグラフィ技術として採用する動きが出てきた.本稿では,リソグラフィ応用に向けた光硬化性液体を基板上に配置する各方法(インクジェット,スピン塗布,孔版印刷)の特徴を紹介してナノインプリントリソグラフィの現状を概説する.基板とレジスト樹脂との界面で機能する密着分子層や,レジスト樹脂とモールドとの界面で機能する離型促進分子層,成形と離型プロセス化を可視化する蛍光光硬化性液体の鍵となる材料を取り上げ,離型に関わる筆者らの学術研究を中心に述べる.モールド,樹脂,塗布,成形/離型,ドライエッチング,アライメント,平坦化/積層,欠陥検査の一連のナノデバイス製造工程で鍵を握る材料とプロセスにおける実用化への課題,さらには線幅サブ20nmのパターニングでの学術的な課題を抽出した.

研究紹介
  • 斉木 幸一朗, 寺澤 知潮
    2016 年 85 巻 6 号 p. 485-489
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    原料気体の圧力下にある高温の金属基板上で化学気相成長するグラフェンの形態変化の様子を,金属とグラフェンの熱放射の差を利用した光学顕微法によってリアルタイム観察することに成功した.温度,原料気体の全圧および成分比,不純物濃度などの成長条件の変化が,核密度,成長速度,結晶形態に与える影響を瞬時に検出することが可能な本手法は,高温,可燃性気体圧力下という極端条件下での結晶成長の解析に有効である.

  • フォトニック構造のテラヘルツ帯への新展開
    冨士田 誠之
    2016 年 85 巻 6 号 p. 490-495
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    光の自在な操作を可能にすると期待されるフォトニック構造の中でも,2次元の周期孔を半導体薄膜に形成したフォトニック結晶スラブは,単純な構造にもかかわらず,低損失で強い光の閉じ込めが可能なため,さまざまな応用に向けて有望である.本稿では,電波と光の境界領域の周波数を有するテラヘルツ帯における小型・集積デバイスの開発に向けたシリコンフォトニック結晶スラブによるテラヘルツ波の操作と,その応用に関する研究を紹介する.

  • 古川 一暁, 上野 祐子
    2016 年 85 巻 6 号 p. 496-500
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    グラフェンおよび酸化グラフェンの特徴の1つに,可視域全般の発光を高効率に消光する機能がある.私たちはこれを利用して,標的分子であるタンパク質を検出して蛍光を発する発光型バイオセンサを固体表面に構築してきた.本稿では,その原理を解説し,高効率化やオンチップデバイス化についての最近の研究成果を紹介する.

  • 雨宮 智宏, 荒井 滋久
    2016 年 85 巻 6 号 p. 501-506
    発行日: 2016/06/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    光学迷彩を実現するにあたっては,立体的な構造をもつ3次元メタマテリアルを作ることが必須となる.このような3次元メタマテリアルを簡易に作り上げる手法として,我々は「メタマテリアルを内包した有機薄膜フィルム(Metafilm)」を開発した.Metafilmの特長は,膜厚1µm以下の有機薄膜内にメタマテリアルを実装することで,所望の光学特性(誘電率・透磁率)をもったフィルムを実現できる点にある.本フィルムを重ね合わせることで,光学迷彩に必要な光学特性の3次元分布を,容易に作り出すことが可能となる.

    また,本稿の後半では,従来型の光学迷彩の枠組みを超える「非対称性」をもった迷彩を作り上げるための理論を述べる.本理論は,「空間の歪(ゆが)み」の代わりに「電磁場下における電子の動き」を介して光の軌道を考えることで,さまざまなタイプの非対称光学迷彩を汎用的に構成可能とする.

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