応用物理
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Print ISSN : 0369-8009
86 巻, 2 号
『応用物理』 第86巻 第2号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
Science As Art
今月号の概要
解説
  • 多色多モード超解像
    小林 孝嘉
    2017 年 86 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    レーザーを用いた顕微鏡は,ほとんどが蛍光顕微鏡である.近年,光の回折限界による解像度の制限を打ち破る新しいレーザー蛍光顕微法が開発され,2014年にノーベル化学賞授賞の対象にもなった.しかしながら,蛍光顕微鏡には,蛍光性を有する対象のみに適用できるという強い制限がある.また,蛍光物質の光毒による劣化の問題も大きい.本稿では,このような制限のない新しい顕微法を含めた,筆者の研究グループで開発した顕微法について解説する.それらは,誘導放出顕微法,光熱顕微法,誘導放出・光熱2モード顕微法,差蛍光顕微法である.

最近の展望
研究紹介
  • 熊谷 義直, 村上 尚, 倉又 朗人, 東脇 正高
    2017 年 86 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    酸化ガリウム(Ga2O3)のホモエピタキシャル成長技術開発を行っている.一塩化ガリウム(GaCl)と酸素(O2)を原料ガスに,窒素(N2)をキャリヤガスに用いるハライド気相成長法(HVPE)を開発し,β-Ga2O3(001)基板上のホモエピタキシャル成長を検討した.成長温度1000°Cで基板と同等の結晶性を維持しつつ,20µm/hの高速成長が達成された.HVPE成長層は高純度かつ1013cm-3未満の極めて低い有効キャリヤ濃度を有することがわかった.この結果を基に,HVPE成長中に意図的なSiドーピングを行い,キャリヤ濃度1015〜1019cm-3の範囲でn型導電性の制御が可能となった.

  • 巽 宏平, 飯塚 智徳
    2017 年 86 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    半導体の実装技術,とりわけチップ導電接続技術については,近年デバイスの高速化,小型化,高密度化への要求から,技術革新が急速に進展している.パワーデバイスにおいても,高性能化,高耐熱化,大容量化への対応,特にSiC,GaNなどのワイドバンドギャップ半導体には新たな接続技術が求められている.ここでは,高耐熱,耐腐食性に優れたNi材料に着目した接続技術の研究開発について紹介する.Niは表面の酸化膜が安定であるため,固相接合は一般に困難である.接合材料としては,800°C以上の高温でのろう付け合金主成分として用いられてきたが,半導体などの導電接続技術として検討した例はほとんど見られない.Niは融点が1460°Cであるが,メッキプロセスは数十°Cでありながら,最適条件下で被着されれば,密着性,耐食性,拡散バリヤ性に優れている.連続ラインでのメッキ接続が可能となれば,高生産性,低コスト化が期待できる.SiCデバイスの接続に応用し,300°C以上の高温特性を測定した例も示す.

  • 北岡 卓也
    2017 年 86 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    セルロースは,主に樹木の骨格多糖類として地球上で最も大量に存在する天然高分子であり,持続的に再生利用可能なバイオマス資源として衆目が集まっている.木質資材・建築用材,紙パルプ・衣料繊維,食品・化粧品添加物など,身近な生活用途で長きにわたり利用されており,とてもなじみ深い素材である.近年,天然セルロースの特徴である伸び切り鎖結晶のナノ構造形態が,セルロースナノファイバーとして脚光を浴びており,新材料開発の機運が大いに高まっている.本稿では,この古くて新しい天然素材のセルロースに特徴的なナノ構造特性に着目したマテリアル機能の創発に関する我々の研究成果を紹介する.

  • 北村 雅季
    2017 年 86 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    フレキシブルエレクトロニクスへの応用が期待される有機トランジスタであるが,現在,どの程度の性能が得られているのであろうか.Pチャネルトランジスタについては,材料開発が活発で,電界効果移動度が約10cm2 V-1 s-1のトランジスタが複数のグループから報告されている.有機材料の作製プロセスに対する耐性の低さから,短チャネル化や閾(しきい)値電圧制御が難しいとされるが,それについても解決されつつある.本稿では,論理回路応用のために重要となる,短チャネルトランジスタの高移動度化と閾値電圧制御について紹介する.また,実際の論理回路の動特性を示し,今後の展望について述べる.

  • 今村 岳, 柴 弘太, 吉川 元起
    2017 年 86 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    「嗅覚センサ」は,科学技術における最高難度の課題の1つであり,その実現を目指して,何十年にもわたって世界中で研究開発が続けられてきた.これに対して我々は,長年の課題を克服した新たなナノメカニカルセンサ素子「MSS」を軸とし,感応膜やシグナル解析法など関連要素技術の総合的な研究開発を進めている.一方,スマートフォンに代表されるモバイル機器やデータ科学など,ハード/ソフト両面の関連技術も近年急速に発展しており,これらと統合することにより,人工嗅覚の実現がいよいよ射程圏内に入りつつある.本稿では,鍵を握る要素技術であるセンサ素子,感応膜,シグナル解析法について,その基本原理や特性,考え方などを概観し,現在推進中の産学官連携体制についても紹介する.

  • 南 豪, 南木 創, 時任 静士
    2017 年 86 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2017/02/10
    公開日: 2019/09/26
    ジャーナル フリー

    身体における生化学的状態の日常的観測や,環境中に含まれる汚染物質の監視など,我々の健康に密接に関連する化学種の「その場分析」に適した計測技術の開発・実現が求められており,さまざまなアプローチによる簡易分析用センサデバイスの開発が盛んに取り組まれている.筆者らはセンサデバイスのプラットフォームとして,機械的柔軟性や印刷プロセスの適用による低コスト化が可能な有機薄膜トランジスタに着目しており,当該デバイス構造を活用して水系媒質中に含まれる化学種の検出に取り組んできた.本稿では,分子認識能を賦与(ふよ)した有機薄膜トランジスタ型化学/バイオセンサの設計指針とさまざまな標的化学種の検出例を紹介する.

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