コヒーレントラマン散乱(CRS)や第2高調波発生などの各種非線形光学効果を用いた顕微イメージング手法は,透明な生細胞や生体組織の分子情報・構造情報を非染色,非標識にて取得することができるというユニークな特徴をもつ.これらの非線形光学効果を複数の波長成分をもつレーザー光源で発生できると,例えばCRSを用いた全ての基音の振動分光イメージングなども可能である.本稿では,サブナノ秒スーパーコンティニューム光を用いて我々が開発した,マルチモーダル非線形光学イメージング法について紹介し,それを用いた生細胞,生体組織のラベルフリーマルチカラーイメージングについて解説する.
地球環境に優しい車,事故を起こさない車,快適な車の実現を目指して,カーエレクトロニクスは目覚ましい進化を遂げており,今後さらに多様な技術の組み合わせで,広く深く発展を続けていくであろう.これには半導体技術の進化が不可欠であり,デバイス,回路,実装技術を中心に,ますます高機能,小型,高精度,低コスト,高信頼性が求められる.本稿では,車載半導体の現状および将来の展望について,「環境」「安心・安全」分野を中心に紹介する.
本稿では,あらゆる物質中にどんな条件下でも存在する揺らぎを検出する顕微鏡の原理を説明し,応用例を示す.また,金属表面に熱励起されたエバネッセント波の観察,電流を流した金属細線中,および半導体の微細素子のホットエレクトロンの可視化と,それを基にした非局所的な伝導についても記す.
グラフェンをはじめとする一群の2次元物質(原子層)が脚光を浴びている.中でも近年大きく注目されているのが,遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)であり,基礎から応用にわたってさまざまな話題を提供している.本稿では,化学気相成長(CVD)法,および分子線エピタキシャル法(MBE)を用いた高品質試料の作製,特に層状物質である六方晶窒化ホウ素(hBN)上へ積層成長させたTMDを対象に最近の研究成果を紹介する.
本研究では,固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード電極触媒に対し,作動条件下での電子状態および局所配位構造変化をIn situ時間分解XAFS法により追跡し,電極触媒の反応機構や劣化過程を構造速度論的なアプローチから明らかにした.Pt/CとPt3M/C(M: Co, Ni)カソード電極触媒について,Pt LIII端XANES,EXAFSの時間分解解析から,セル電圧変化に伴う酸化/還元反応における構造パラメータの変化を抽出し,その変化速度を比較することで,CoやNiの合金化に伴うカソード表面の反応機構,構造速度論の違いや,加速劣化試験(ADT)に伴うカソード触媒の構造変化,各反応過程が触媒劣化に与える影響を検討した.
非平衡プラズマで生成される種々の活性種は低温で化学反応を生起するため,一種の触媒作用を有すると考えられる.とりわけ,非平衡プラズマを触媒微粒子に作用させると,低温における表面反応促進,活性化エネルギーを低下させる効果など画期的な現象が数多く報告されており,ナノカーボンの成長制御やアルカンの低温活性化など急速に適用範囲を広げている.本稿では,非平衡プラズマのエネルギー・環境分野における新しい応用展開,およびそれを支援する学術基盤の確立を目的に,触媒化学分野で重要な反応の1つである安定分子(CH4, CO2)の低温・高速転換に焦点を絞り,非平衡プラズマによって誘起される触媒作用とその機構について最近の成果とともに研究の概要を紹介する.
有機エレクトロルミネセンス(EL)は紆余曲折を経ながらも,実用面で種々の展開が進みつつある.本稿では,基礎研究面における最近の進展のうち,有機EL発光材料として特に注目を浴びている熱活性化型遅延蛍光(TADF)材料,また,その塗布系素子への展開を,計算機を用いたスクリーニングによる材料探索の観点も含めて紹介する.また,優れた発光材料を見いだしても,素子化すると十分な特性が得られないこともある.このような素子内での効率低下に関しては,素子内で何が起こっているのかを明らかにすることが重要であろう.このような観点から,我々は,計算機の中で素子を作製・駆動することにより,デバイス駆動に伴って起こる種々の基礎的現象を捉えることも目指している.まだ単層膜内での電荷輸送しか追えていないが,現在の展開を紹介したい.
「バイオ実験」は対象範囲が非常に広いので,本稿では特に生体分子の1つである脂質を用いた人工細胞膜の形成実験について簡単に説明します.人工的な生体膜である脂質2重膜は生物学分野では生体分子の反応場の1つとして長年研究されてきました.今回は従来の方法に比べてより簡便な脂質2重膜の形成法を紹介し,2重膜の評価方法としての電気計測などについて触れます.