データセンタやスーパーコンピュータにおけるデータ処理の高速化・大容量化の要求に伴い,光電子集積回路(OEIC),光電融合集積回路への期待が高まっている.その実用化という目的に向け,電子回路との親和性が高いシリコン(Si)プラットフォーム光集積回路へ集積可能な半導体レーザーを中心とする光源作製技術について概説する.さらに,いくつかの代表的な光源実装技術についてその現状を述べたあと,筆者らが主に取り組んでいる異種材料接合技術,その技術を利用したハイブリッドレーザー光源構造および特性の例を紹介しながら,それぞれの技術の現状を説明し,将来展開について触れていく.
光ピンセット技術は,生きた細胞,工業用微粒子,液滴,気泡などを非接触,非破壊で正確に空間操作する技術である.光ビームの正確な位置操作や多様な対象物への適用性を考慮すると,最も有望な技術の1つとして液晶空間光変調器を用いたホログラフィック光ピンセット(HOTs)技術が注目されている.HOTs技術では,ビームスポットの発生と操作は計算機ホログラムを空間光変調器(SLM)に連続入力することで実現している.このため,ホログラムの計算時間がボトルネックになっていた.我々は,物体を配列させるための静止している配列用マルチビームスポットと,物体を捕捉・移動させるための運搬用ビームスポットを同時に発生させるために時分割多重化を導入した.さらに,位相シフト法を利用することによって,ビームスポットの移動についてのボトルネックを解決した.本稿では,ディスプレイ上で行うマウスのドラッグ&ドロップ操作によって,顕微領域のマイクロ物体を自在に捕捉,移動,および配列させることを実現するオンデマンドHOTsシステムについて解説する.
CT,MRI,超音波,PET,内視鏡,顕微鏡など,各種の診断装置(モダリティ)が医療分野で実用化されている.それらは多くの場合,独立に用いられているが,複合的に用いることで診断能の向上が期待できる.また,同一の原理に基づき,汎用機に比べて高分解能で計測する特殊装置も考えられるが,スケールの異なる装置間での信号の類似性・非類似性の情報は汎用機からミクロな物性を予測する際に利用できる.我々は,複数モダリティを統合的に利用する研究や,スケールの異なる装置間の信号の分析などを行ってきたが,現在はこれらをマルチモーダル計測医工学と呼称し,学内のプロジェクトとして幅広く展開している.本稿では,この取り組みとして進めている研究開発のうち,特に超音波,MRI,病理画像を中心に据えて,その研究内容を紹介する.
マルチチャネル分光器は,コンパクトかつリアルタイムに計測が可能な分光器械であるため,ライフサイエンス分野から天文学の分野に至る広い分野で盛んに活用されている.さらに最近では,IoTをはじめとした使用環境の多様化からの厳しい仕様制限に対応するため,分光器としての従来の基本性能に加えて,コストを含む装置完成度への要請も多種多様となってきている.これらの状況を踏まえて,本稿では,マルチチャネル分光器の性能改善の最近の新しい試みについて,ヴァーニア技術(副尺技術)に関連した考え方を利用した筆者らの研究を中心に概説する.
AlとNiのような軽金属と遷移金属を数十nmの厚みで交互に積層堆積させた金属多層膜は,外部刺激により合金化して発熱する.発熱性能は金属の組み合わせや原子比などで制御でき,酸素を要せず微小刺激で発熱するため,省エネルギーかつゼロエミッションな熱源として利用できる.ここでは,筆者らが開発した自己伝播発熱多層膜を使った瞬間はんだ接合技術を紹介する.
パルスレーザー堆積法によって金属ナノピラーがSrTiO3薄膜内部に自己組織的に成長する新奇ナノ構造の作製手法を開発し,水分解光電極の高効率化に応用した.IrドープSrTiO3薄膜中に無数の金属Irナノピラーを含むコンポジット薄膜を作製することによって,円柱状に広がるショットキー接合が導入される.このナノ接合が薄膜内部で発生する光励起キャリヤの電荷分離効率を大幅に促進し,光電極の特性を大きく改善することができた.ナノピラー構造の自発的な形成は,薄膜成長中に相分離を誘発させることでさまざまな材料系に適用できるものであり,新しい機能性デバイス開発への応用が期待される.
共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)は,物理や生物など幅広い分野において高分解能での発光観察に利用されています.本稿では,初めて光学定盤の上に光学素子を設置してCLSMを組み上げたい,という方を対象として,CLSMの装置構成と原理,素子の役割と選定を紹介します.使用する光学素子や光学系の調整方法など,CLSMの組み方は人それぞれ異なるという面がありますが,最低限必要な素子などを解説していますので,1つの例として参考にしていただければ幸いです.