応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
89 巻 , 10 号
『応用物理』 第89巻 第10号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
Science As Art
今月号の概要
解説
  • 望月 祐志, 奥脇 弘次
    2020 年 89 巻 10 号 p. 566-572
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル 認証あり

    フラグメント分子軌道(FMO)法は,タンパク質やDNAなどの巨大分子系に適用可能な量子論的な計算手法の1つである.FMO計算からはフラグメント間の相互作用エネルギーが得られるため,対象系の解析ツールとしても利用できる.本稿ではまず,FMO法の概要について私たちが開発しているABINIT-MPプログラムに関連して述べ,ペプチドの固体表面への吸着モデルなどナノバイオテクノロジー分野での応用事例を示す.次に,散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションの有効相互作用パラメータを一連のFMO計算によって算定するマルチスケール的なFMO-DPD法について述べ,脂質系への適用例などを示す.

  • 荻野 拓, 越智 正之, 陰山 洋
    2020 年 89 巻 10 号 p. 573-579
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル 認証あり

    ペロブスカイト酸化物の電子構造を制御する手段として異種アニオンを利用することで,カチオン置換では決して実現できないさまざまな効果をもたらすことが可能である.例えば,O2-をH-で置換することで,カチオンの価数制御などの価数の違いの効果だけでなく,軌道の対称性の違いを利用した低次元構造の実現や,電気陰性度の違いによる結合状態の変化がもたらされる.トポケミカル反応と呼ばれる低温反応では,アニオンの挿入・置換・脱離が複雑に絡み合うことで,さまざまな構造・価数制御が可能である.本稿では,これらペロブスカイト酸化物のアニオン制御について,最近の理論・実験の進展を解説する.

研究紹介
  • 並行性と揺らぎを活用する計算システム
    青野 真士, 大古田 香織
    2020 年 89 巻 10 号 p. 580-584
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,単細胞アメーバ生物・粘菌が環境に適応し最適な形状に変形する振る舞いに学び,「巡回セールスマン問題」や「充足可能性問題」といった組合せ最適化問題の解を,アナログ/ディジタル電子回路を用いて探索するユニークな計算システムを紹介する.「アメーバ型アルゴリズム」を実装するこれらの組合せ最適化マシンは,回路を流れる電流ダイナミクスの並行性や,デバイスの揺らぎからもたらされる確率的動作を活用し,そこそこ質の高い合法解を素早く確実に得る手段を提供する.その計算原理はさまざまな物理デバイスにより実装できるため,さらなる大規模化と小型・低消費電力化が可能であり,クラウドサービスのみならず,新たなIoTやエッジ計算応用への展開を期待できる.

  • 千葉 大地
    2020 年 89 巻 10 号 p. 585-588
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル 認証あり

    スピントロニクス素子にメカニカルな機能を付与すると,新たな展開が見えてくる.フレキシブル基板上に形成したスピントロニクス素子は,ひずみを加えると抵抗が変化する.これにより,生体モーションの同定といったデモンストレーションも可能になってきている.また,センサとしての感度向上の道筋も見えてきており,圧倒的に高い感度をもつひずみゲージとしての発展だけでなく,これを集積化した高感度ウェアラブルセンサシートなどへの応用や,磁石の不揮発性を巧みに持ち合わせた新奇デバイスの実現も期待される.磁気記録や磁気センシングの高度化を旗印として掲げてきた従来のスピントロニクスの延長線上にない新たな未来を拓(ひら)くだけでなく,それ以外のさまざまな産業応用展開に資する技術としての発展をもたらす可能性がある.

  • 鈴木 孝明
    2020 年 89 巻 10 号 p. 589-593
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル 認証あり

    半導体製造技術とそれを基盤としたMEMS技術は,3次元化が進んでいる.筆者らが提案するマイクロ・ナノ加工技術「3次元リソグラフィ法」は,ほかの方法では作製が困難な特殊な3次元微細形状を加工する技術であり,従来の機械加工技術と微細加工技術の空白領域をねらった,大面積複雑微細構造作製のための加工技術である.3次元リソグラフィ法の概要と,その応用展開として,特徴的な構造を集積化したポリマーMEMSからなる,振動発電素子やバイオマイクロシステムについて紹介する.また最後に,打ち明け話として本研究の着想について振り返り,今後の研究につなげたい.

  • 山下 侑, 竹谷 純一, 渡邉 峻一郎
    2020 年 89 巻 10 号 p. 594-597
    発行日: 2020/10/10
    公開日: 2020/10/10
    ジャーナル 認証あり

    高分子半導体は,化学的にも機械的にも柔軟で,分子設計および集合体のチューナビリティに富み,室温付近の溶液プロセスで容易に薄膜形成が可能であることから,フレキシブル・プリンテッドエレクトロニクス材料として期待されている.多くの無機半導体と同様に,高分子半導体においても不純物ドーピングを用いてキャリヤ密度の制御が可能であるものの,周期的な結晶性をもたない高分子半導体において,不純物ドーピングは異種分子の混合を伴い,高キャリヤ密度を達成することは困難であった.本稿では,1次元的な高分子鎖のねじれや絡まりの少ない剛直な高分子骨格を有する結晶性高分子半導体に焦点を当てる.この数nmサイズの空間に機能性分子・イオンを格納・制御する“分子インプランテーション”を用いることで,単一分子では決して得られなかった新規的な電子機能性を開拓し,高分子において金属のような電子状態を実現するに至っている.特に,単純・単一な化学操作の「イオン交換」現象を用いて,半導体プラスチックの化学ドーピングを精密かつ高効率に制御することに成功し,緻密に制御されたホスト‐ゲスト構造中で電子は周期ポテンシャル下でコヒーレントなバンド伝導性を示し,典型的な金属が示す電子物性を満たしつつあることが明らかとなった.

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