応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
89 巻, 5 号
『応用物理』 第89巻 第5号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
Science As Art
今月のトピックス
今月号の概要
解説
  • 佐藤 孝紀
    2020 年 89 巻 5 号 p. 253-259
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2020/05/10
    ジャーナル フリー

    電子は,放電プラズマの発生・維持および放電プラズマの応用において必要な種を生成する主役を担っており,その振る舞いは,電子輸送係数によって記述される.放電プラズマ中の電子の振る舞いを正確に知ることで,放電プラズマを応用するプロセスや機器の性能をシミュレートすることが可能となり,近年のコンピュータの計算速度向上と記憶容量増加およびシミュレーション技術の向上と相まって,放電プラズマのシミュレーションが盛んに行われている.このシミュレーションで得られる情報は,放電プラズマの自在な制御にフィードバックできるので,より高い精度のシミュレーションへの要求が高まり,その結果として,電子輸送係数,および,その算出に用いられる電子衝突断面積にも高い精度が求められている.ここでは,低エネルギー領域(1000eV以下)における電子衝突断面積セットを,電子スオーム法を用いて高精度で推定する手法について述べるとともに,この方法で推定した水蒸気およびTEOSガスの電子衝突断面積セットについて説明する.

研究紹介
  • 富田 健太郎
    2020 年 89 巻 5 号 p. 260-264
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2020/05/10
    ジャーナル フリー

    最近のレーザートムソン散乱(LTS)計測の事例として,半導体露光用極端紫外(EUV)光源用プラズマの構造解明研究を紹介する.本研究では計測用レーザーからの迷光を低減しつつ,電子温度の検出下限を従来システムから2桁程度向上させた.これにより協同散乱のイオン項を検出し,電子密度・温度,平均イオン価数の計測を可能とした.直径0.5mm以下のサイズである光源の電子密度・温度の2次元空間分布・時間進展を調べると,EUV発光効率がよい生成条件では,特徴的な中空様の電子密度構造をもつことがわかった.LTS計測を行えば,多価電離プラズマからのEUV光出力の高低が,電子密度・温度状態にまで立ち返って評価可能となることを示す.

  • 野口 宗隆
    2020 年 89 巻 5 号 p. 265-268
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2020/05/10
    ジャーナル フリー

    SiC-MOSFETの特性改善には反転層移動度の増加が有効であるが,その指針を得るには「何が反転層移動度を制限するのか?」を理解する必要がある.本研究ではホール効果測定を利用して反転層移動度を評価することでキャリヤ散乱機構を実験的にモデル化した.さらに得られた基礎的な理解に基づき,従来のSiCデバイス技術では適用されてこなかった不純物を適用することでSiC-MOSFETのさらなる特性改善が可能であることを見いだしたので紹介する.

  • 山谷 泰賀, 吉田 英治, 田島 英朗, 高橋 美和子
    2020 年 89 巻 5 号 p. 269-273
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2020/05/10
    ジャーナル フリー

    核医学診断法は「縦割り」状態にある.原理の違いからPETとSPECTに分かれているが,我々は,これが核医学の潜在能力を生かせていない一因であると考えた.そこで,「計測可能な放射線の全てを画像化に生かす」という新しいコンセプトを掲げ,WGIと名付けた.具体的には,他分野で発展してきたコンプトンカメラの方法をPETに組み合わせた.複数の検査が同時にできるだけでなく,これまでは敬遠されてきた高エネルギーガンマ線を出す陽電子放出核種にスポットライトを当て,新しいイメージング法が可能になると期待される.本稿では,WGI装置試作による原理実証について紹介する.

  • 森 貴洋
    2020 年 89 巻 5 号 p. 274-277
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2020/05/10
    ジャーナル フリー

    量子コンピュータを構成する量子計算回路の基本素子として,従来の集積技術を転用可能なシリコンスピン量子ビットに高い注目が集まっている.さまざまな量子ビット素子が提案される中,我々は急峻(きゅうしゅん)スイッチング素子への応用に向けて開発してきた等電子トラップ援用トンネルFETが量子ビットとして動作することを見いだし,10Kまでの量子ビット動作に成功した.本稿では背景となる最近のシリコン量子ビット素子の研究状況について述べ,本研究における実験結果を紹介する.

  • 下谷 秀和, 谷垣 勝己
    2020 年 89 巻 5 号 p. 278-281
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2020/05/10
    ジャーナル フリー

    電流注入で駆動される無機半導体レーザーは小型軽量で低価格であることや変調が容易であることから通信や測定,光ディスクの読み書きなどさまざまな機器に応用されているが,新たな波長のレーザーの開発は容易ではない.その活性層を有機半導体に置き換えると,材料の設計自由度の高さからさまざまな波長のレーザーの開発が可能になると期待される.我々のグループでは有機単結晶電界効果トランジスタ構造を基にした電流駆動有機半導体レーザーの研究を行っている.本稿では,最近実現されたレーザー発振に起因すると考えられる発光スペクトルの利得狭帯化について紹介する.

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