再生医療を実現する方法の1つとして,細胞シート工学と呼ばれる生体を模倣した組織を作り出す技術が注目されている.この技術は高分子材料を利用して培養基材に特殊な機能を付与する工学的なアプローチから始まっている.温度によって物性が変化する温度応答性培養基材を使えば,通常用いられるタンパク質分解酵素を使用せず,温度を変化させて細胞をシート状組織として回収できる.その結果,これまでの組織工学において研究されてきた人工材料(スキャホールド)を必要としない画期的な技術として再生医療分野において発展し,この技術をベースとする再生医療は現在いくつかの疾患に対してヒト臨床研究が行われている.本稿ではその基礎となる温度応答性基材の特徴と代表的な再生医療への展開について,また現状の課題に対する新たな取り組みも含めて解説する.
原子間力顕微鏡(AFM)は固体材料表面の構造のナノスケール分解能での可視化のみならず,精密な力学測定が可能であることから,ソフトマテリアルの機械特性の評価,さらには分子間相互作用の計測にも応用されてきた.特に,AFMによるナノ力学計測によってタンパク質,DNAなどの生体分子の分子認識プロセス,リガンド‐受容体の結合状態の変化,分子構造変化の解析は生物学からバイオセンシング工学に至るまで多くの関心を集めている.最近では,測定技術の発展により,リアルタイムでの相互作用・構造変化の観測が可能となり,生体分子のダイナミクス,化学反応に関してより詳細な描像の報告が増えている.本稿では,今までの原子間力顕微鏡を用いた生体分子の特異的結合の1分子計測に関する研究を俯瞰(ふかん)し,特に静的な観察から動的なプロセスの観察,という測定ターゲットの変遷について,我々の研究成果も紹介しつつ最新の研究動向について解説する.
5G/B5G陸上移動通信システムでは,極めて多様化したシステム要求を満たすために,高スループット,高モビリティ,低遅延,大容量,多数接続,省電力などの多様化する高度化要素が求められています.本稿では,多様化した5G/B5Gサービス実現に資する,プライベートマイクロセル構造を前提としたシステム展開について,情報通信研究機構(NICT)の取り組みを説明します.