応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
91 巻, 10 号
『応用物理』 第91巻 第10号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
今月号の概要
解説
  • 中野 貴之
    2022 年 91 巻 10 号 p. 599-605
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    窒化ガリウム(GaN)に代表されるIII族窒化物半導体は,広いバンドギャップなどの優れた材料特性を持つことから短波長発光素子やパワーデバイスへの応用など,さまざまな検討が行われている.我々は,このようなIII族窒化物半導体を用いた新しい可能性としてBGaNを用いた中性子半導体検出器を提案している.ホウ素(B)原子が大きな中性子捕獲断面積を持つことから,半導体中で中性子捕獲が可能であり中性子イメージングセンサとして利用が期待できる材料である.本稿では,このような新奇中性子検出デバイスの着想と動作原理,研究進捗(しんちょく)を紹介する.特にBGaN結晶成長技術において気相反応を抑制した厚膜成長技術の開発内容と,厚膜BGaNダイオードにより達成した中性子捕獲信号の検出について紹介する.

  • 川上 養一
    2022 年 91 巻 10 号 p. 606-612
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    任意の演色性を可能とする光源の開発は次世代照明だけではなく,光空間無線通信(Li-Fi)応用としても注目されているが,その実現のためには,任意の発光スペクトルを合成するとともに,各発光波長のオンオフを高速に変調するための学理探求や技術開発が重要な課題となっている.筆者の研究室では,窒化物半導体を用いた半導体3次元構造による発光波長の合成,分極制御・プラズモニクス効果などによる高効率発光に着目し,任意の波長の光を高い輻射(ふくしゃ)再結合確率で発光させる発光シンセサイザの開発を目指し研究を行っている.本稿では,研究成果を紹介するとともに,現状の課題や今後の展望について解説する.

  • 長谷川 達生, 井上 悟
    2022 年 91 巻 10 号 p. 613-618
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    電界効果トランジスタの構成に適した層状結晶性に優れた一連の有機半導体の開発を機に,塗布により作製したデバイスの高度化が大きく進展してきた.本稿ではまず,これら有機半導体が示す層状結晶性の様相とその分子論的起源について解説する.次に溶液中で分子が層状に自己秩序化する性質を巧みに促し活用する新たな製膜プロセスによって,極薄で高均質な半導体結晶層の構築が可能なことを明らかにする.特に高撥水(はっすい)絶縁層上への半導体層形成による高清浄な半導体界面の構築により,低電圧・高急峻・高安定な実用的デバイス性能が得られるようになった.これらプリンテッドエレクトロニクスの基礎研究の現状を解説する.

最近の展望
  • 岡 博史
    2022 年 91 巻 10 号 p. 619-623
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    将来の大規模な量子コンピュータに向けて,量子ビットの制御機能を集積回路化する技術が期待されている.量子ビット制御用の集積回路は数ケルビン以下の極低温下での動作が前提となるため,Cryogenic-CMOS(Cryo-CMOS)と呼ばれる.Cryo-CMOSの実現には極低温動作を再現する回路モデルが必要となるが,その開発は端緒についたばかりである.また,MOSFETの極低温下での動作特性は十分に理解されておらず,デバイス物理の理解を進める必要もある.量子コンピュータの実用化に向けた動きが進むとともにCryo-CMOS技術の重要性は高まっており,国内外で研究が活発化している.本稿では量子コンピュータにおけるCryo-CMOS技術の役割と研究開発状況を解説し,最近の研究成果を含めてCryo-CMOSデバイスの特徴と今後の展望を紹介する.

研究紹介
  • 溝尻 瑞枝
    2022 年 91 巻 10 号 p. 624-628
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    各種材料の金属微細構造の直接描画法は,マイクロデバイスのオンデマンド製造技術として応用が期待されている.我々はこれまでにAu,AgだけでなくCuやNiなどCommon Metalやその酸化物の微細造形を実現するため,フェムト秒レーザーパルスが誘起する光熱還元を利用した2D/3D微細造形法の創成に取り組んできた.CuOやNiO,それら混合ナノ粒子を還元剤と混合して調製した金属酸化物ナノ粒子インクを原料とし,線形光吸収を用いてCu,Niやそれら合金,酸化物をレーザー描画条件により還元度を制御することにより選択的に描画形成した.更に,非線形光吸収を利用した描画では,Cu2Oナノ粒子インク膜内部へフェムト秒レーザーパルスを集光照射し,インク膜内部への熱還元による金属パターニングに取り組んでいる.本稿では,それぞれの描画特性や形成パターンの機能性評価とともに,マイクロ温度センサなどの試作結果について紹介する.

  • 深層学習による物理モデリング・シミュレーション
    松原 崇, 陳 鈺涵, 谷口 隆晴
    2022 年 91 巻 10 号 p. 629-633
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー

    近年,ニューラルネットワークなどの機械学習手法を物理現象のモデリング・シミュレーションに応用する研究が注目されている.このような研究は,支配方程式が未知の現象をモデル化する以外にも,物理シミュレーションを高速化・高精度化できる可能性があり,期待されている.本稿では,そのような研究のうち,代表的な研究であるハミルトニアンニューラルネットワークと,それを改良したニューラルシンプレクティック形式,DGNetについて説明する.

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